ブランドとは何か?意味から成功事例まで徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「ブランドって何?」
「ブランド作りは具体的に何から始めればいいの?」
「ブランドの成功事例が知りたい!」
「ブランド」という言葉は、業種業界問わず、これからの時代のキーワードです。
ブランドに対する理解があるのかどうかで、事業の結果や継続性は大きく変わります。
ブランドの重要性は、1990年以降に声高に叫ばれるようになり、1991年にはブランド論という研究分野が確立し、今では多くの書籍でもブランドについて語られるようになりました。
ただし、「ブランドとは何か」という単純な疑問に対する答えについては、難解な定義が多く、理解しにくいのです。
例えば、アメリカの経営学者のフィリップコトラーは、
個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。
とブランドを定義しましたが、具体的に何を意味するのかは掴みにくいでしょう。
今回の記事では、そんなブランドについてお伝えしていきたいと思います。
この記事を読んでいただければ、ブランドに関する基礎的な知識や成功事例だけでなく、具体的にどう実践していけばいいのかまでが分かるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
1.ブランドとは
まずは、ブランドとは何かについて解説していきます。
1-1.ブランドの語源
ブランド(brand)は、古ノルド語の「焼印をつける」という意味の「brandr」が語源となっています。
この焼印は、放牧している家畜が自分の所有物であるのか、他人の所有物であるのかを識別するために付けられました。
なので、ブランドには「識別する」という役割が根本的に備わっています。
1-2.ブランドの意味
では、現代では「ブランド」とはどういう意味なのか?
アメリカの経営学者のフィリップ・コトラーはブランドをこう定義します。
個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。
少し複雑なので解説すると、この文章の要点は
- 識別する
- 差別化する
ことがブランドの成立要件だということです。
例えば、ここにAppleとWindowsのロゴがあるとします。
AppleもWindowsのことを全く知らない人でも、PCにそれぞれのロゴの記載があれば、
別のメーカーが作っているPCだな
とブランドを識別することができます。
ただし、ロゴという一つの記号だけでは、それぞれのPCのどちらを購入するのかという決断まではできません。
各ブランドのPCの
- 機能・性能
- コンセプト
- ストーリー
- デザイン
- キャラクター
- 価格
といった特徴がわからないからです。
つまり、ロゴだけでは差別化ができないわけですね。
差別化するためには、上記の特徴を
- ホームページ
- WEB広告
- POP
- チラシ
- ポスター
- CM
- 接客
などの宣伝活動を通じて、言葉とビジュアルと共に消費者に伝えていく必要があります。
そして、宣伝活動を通じて、消費者は、それぞれのブランドの違いを認識し、イメージを形成します。
そして、形成したブランドのイメージはそれぞれ異なるものなので、より自分に合う方を選んで、購入するという決断ができるんですね。
ただし、注意しておきたいのは、このブランドのイメージというのは、ブランドを作る側が完璧にコントロールできるわけではないということです。
例えば、Appleの宣伝広告を見た時に「デザインがオシャレ」と感じるかどうかは、その人の価値観によります。
Appleのようにシンプルで、洗練されたデザインが好きな人もいれば、苦手な人もいます。
また、過去にApple製品を購入してみて、たまたま故障が多かった人は
Appleは故障が多くて、買わない方がいい
という印象を抱いている人もいるでしょう。
とにかく重要なのは、ブランドとは他と識別された記号とそれに紐づくイメージの総称のことだということです。
他と識別された記号というのは、フィリップコトラーの定義でいうところの
- 名称
- 言葉
- シンボル
- デザイン
といった目に見える情報のことです。
この目に見える情報が、その人の価値観や経験と紐づいて、目に見えないブランドのイメージを形成します。
この総合体がブランドだということです。
1-3.ブランドの5つの階層
では、続いてはブランドの階層についてお話していきたいと思います。
「ブランド」と一口に言っても、その対象は様々です。
直接的に、企業を指す場合もあれば、製品を指す場合もあります。
ブランドは大きく分けて
- グループ・ブランド
- コーポレート・ブランド
- 事業ブランド
- 製品ブランド
- パーソナル・ブランド
という5つの階層に分かれます。
まず、最初のグループ・ブランドとは、グループ企業全体のブランドのことです。
例えば、ファーストリテイリング・グループは、子会社にユニクロやGUなど、様々な企業を抱えています。
関係性でいうと、ファーストリテイリングがグループ・ブランドで、株式会社ユニクロがコーポレート・ブランドです。
次の事業ブランドとは、企業の中で展開されている事業のことです。
例えば、マイクロソフトという企業では「OFFICE」という事業ブランドが展開されています。
また、次の製品ブランドというのは、事業ブランドの中に展開されている製品単位のブランドのことです。
例えば、「OFFICE」というブランドの中には
- Word
- Excel
- PowerPoint
- Outlook
など、様々な製品がありますが、これが製品ブランドにあたります。
そして、最後のパーソナルブランドですが、これは企業の代表の人物にフォーカスを当てたブランドのことです。
ユニクロであれば、柳井正さんがパーソナル・ブランドにあたります。
画像出典:https://www.wwdjapan.com/
1-4.ブランド力とは
次に気をつけておきたいのは、ブランドには「ブランド力」という概念があるということです。
ブランド力は大きく分けて
- 認知度
- 知覚品質
- ブランド・ロイヤルティ
の3つによって構成されています。
1-4-1.ブランド力の構成要素「認知度」
認知度とは、そのブランドの存在をどれだけ多くの人に知られているかという指標です。
例えば、10人にしか知られていないブランドよりも、100人に知られているブランドの方が、市場では有利なのは理解できると思います。
というのも、そもそもブランドの存在すら認知されていなければ、商品・サービスを購入する時に、消費者の選択肢にすら入らないからです。
10人にしか知られていないブランドは、10人からしか選ばれる可能性がないのです。
なので、認知度が高いブランドは、ブランド力が高いと言えます。
1-4-2.ブランド力の構成要素「知覚品質」
続いては「知覚品質」について。
知覚品質とは、消費者が、そのブランドに対して抱いているイメージの品質のことです。
このイメージの品質は宣伝活動を通じて
- 機能・性能
- コンセプト
- ストーリー
- デザイン
- 価格
などを伝えることによって形成されます。
これは実際の品質ではなく、あくまでも消費者の頭の中にあるブランドのイメージの品質のことです。
当然ですが、この抱かれているイメージの品質が高い方が、消費者に選ばれる可能性は高まります。
例えば、1975年にアメリカで、ペプシコ社が「Pepsi Challenge(ペプシ・チャレンジ)」というキャンペーンを実施しました。
ペプシはコカ・コーラと比べて後発のメーカーなので、徹底的にコーラの味を追求し、開発したコーラを目隠しで、消費者に伸び比べてもらうという実験です。
目隠しをして飲んだ人の多くは
ペプシのコーラの方が美味しい!
と回答しましたが、目隠しを外して飲んでもらったところ
コカコーラの方が美味しい!
と答えました。
この場合で言うと、実験に参加した人にとっては、当時、無名だったペプシよりもコカコーラの方が知覚品質が高かったのです。
実際の味の評価だけで言うと、ペプシの方に軍配が上がるのかもしれませんが、店の商品棚に並べたら、コカコーラの方が売れます。
これが知覚品質です。
知覚品質が高いブランドは、ブランド力が強いのです。
1-4-3.ブランド力の構成要素「ブランド・ロイヤルティ」
次に「ブランド・ロイヤルティ」について。
ブランド・ロイヤルティとは、一言で言うならば、顧客の忠誠度のことです。
顧客の忠誠度が高ければ
- リピート
- 口コミ
が起こりやすくなります。
これは非常に重要な指標で、ブランド・ロイヤルティが低ければ、事業は非常に厳しい状況に追い込まれます。
例えば、1ヶ月間、宣伝広告を頑張って、販売しているカメラが新しく100台売れました。
この100台は、店を黒字で経営していくための最低ラインだとします。
ですが、顧客の忠誠度が低く、その後、誰もリピートも口コミも起こしてくれません。
そうすると、このお店は、来月も多額の広告宣伝費を使って、100台を新規で集めてくる必要があります。
つまり、ブランド・ロイヤルティが低ければ、新規集客のコストがかかり続けるということです。
顧客の忠誠度が高い店だと、既存顧客が、月に40台は購入してくれるかもしれません。
そうすると、新規集客にかけるコストは、月に60台で済むのです。
なので、ブランド・ロイヤルティの高さも、ブランド力の高さに繋がります。
とにかく、ブランド力は
- 認知度
- 知覚品質
- ブランド・ロイヤルティ
の3つの総合力によって決まるということです。
1-5.ブランド力を高めるメリット
次に、ブランド力を高めるメリットについて。
ブランド力が高いほど、
- 企業
- 顧客
は様々なメリットを享受することができます。
1-6-1.企業にとってのメリット
まずは、サービス提供者の企業側のメリットについてお話していきたいと思います。
市場で差別化ができ、比較検討されずに選ばれる
まず、ブランド力が高まっていくと、その市場において唯一無二の価値を持つようになります。
例えば、盛高鍛治刃物という包丁メーカーがあります。
盛高鍛治刃物は
最後まで包丁を使って欲しい
という願いから生まれたこだわりがある包丁を作っています。
三徳包丁は、最高峰の鋼「青紙スーパー」を使用しています。
青紙スーパーは、とてもデリケートな鋼で温度調節を少しでも間違えると、ボロボロになるので、熟練した職人技が必要で、これを使用した包丁は、市場に出回ることはほとんどありません。
包丁の柄は水気に強い天然木材「紫檀」を使用し、柄の内側には錆びないようにステンレスを使用しているため、15年間毎日使用しても、腐ることはありません。
これほど優れた包丁は市場にないため、盛高鍛治刃物の包丁は1年先まで予約待ちです。
盛高鍛治刃物の包丁の価値に気づいた人は
包丁を買うなら、盛高鍛治刃物
という思考になるため、他の競合のメーカーと比較検討することなく選びます。
プレミアム価格でも選ばれ、利益率が高くなる
また、ブランド力が高まり、市場で差別化ができるようになると、相場より高いプレミアム価格でも選ばれるようになります。
人がブランドを選ぶ理由は
- 価格
- 機能
- 品質
- 素材
- コンセプト
- デザイン
と様々ですが、ブランド力が高まっていくと「価格」で選ばれることはなくなります。
盛高鍛治刃物の包丁は、1丁が1万円〜2万円台で、相場よりも2~3倍高い値段がついていますが、それでも1年先まで予約待ちです。
当然ですが、価格が高額になると、その分、利益率も高まります。
リピートと口コミが増え、売上が安定
また、ブランド力が高まると、顧客の忠誠度も上がるので、
このブランドを選べば、間違いない
という認識になり、リピート率が向上し、売上が安定していきます。
また、口コミも自然発生的に広がっていくので、新規顧客を集めるために、多額の広告宣伝費を払う必要もなくなります。
新商品が売れやすくなる
また、ブランド力が高まっていくと
このブランドが出す商品なら間違いない
という認識を持つ固定ファンができていくので、新商品も売れやすくなります。
例えば、盛高鍛治刃物の三徳包丁を購入して非常に満足して、ブランドのファンになった人が
盛高鍛治刃物が新しく刺身包丁の販売を開始した
という情報を聞きつけ、刺身包丁を探している場合には、非常に購入率は高くなります。
アライアンス機会の増大
また、ブランド力が高まると、他の企業とコラボレーションの機会が増大していきます。
市場の中で唯一無二の価値をもち、忠誠度が高いファンもたくさん抱えているのであれば、当然です。
ブランド力が高ければ高いほど、有名な企業からオファーされる可能性は高くなり、自分たちが出すオファーも通りやすくなります。
他社とのコラボレーションは、自社だけでは生み出せない価値を創造することにも繋がるので、更なるブランド力の向上が見込めます。
仕入れコストの削減
また、ブランド力が高まると、商品を出せば、顧客が購入することが約束されているようなものなので、流通における交渉力が高まります。
なので、仕入れの際には非常に有利な条件で仕入れることができ、コストが削減できます。
資金調達コストの削減
また、ブランド力が高まると、売上が安定して上がるようになるので、社会的な信用がつくようになります。
そうすると、銀行や投資家などからの資金調達も比較的容易になります。
以上が、企業にとってのブランドを確立するメリットになります。
1-6-2.顧客にとってのメリット
次に顧客にとってのメリットですが、「商品を選ぶコストが下がる」ということです。
ブランド力が高まると、顧客は
このブランドを選べば間違いない
という状態になっているので、いちいち他の競合商品と比較検討したりしません。
なので、通常、商品を購入する際に発生する
- 時間的なコスト
- 金銭的なコスト
が下がります。
2.ブランディングとは
ブランディングは
- 認知度
- 知覚品質
- ブランド・ロイヤルティ
というブランド力を高める手法のことを意味します。
ブランド力を高めるには
- 記号の設計
- 記号の統一
- 認知の拡大
という3つのステップを実施します。
このステップについては、以下のブログ記事でも解説しているので、詳細を知りたい方は併せてご覧ください。
2-1.記号の設計
まず、最初の記号の設計について。
このステップではまず最初に
- どういうイメージを持ってもらうブランドにするのか
- ブランドを記号としてどう表現し、統一するのか
を決めます。
ブランドとは冒頭でもお伝えした通り
- 目に見える「記号」
- 目に見えない「イメージ」
の集合体です。
まずは、ブランドを認知した時に発生する「イメージ」を決める必要があります。
ブランドの方向性と考えていただけると分かりやすいかもしれません。
例えば、包丁一つとっても
- とにかく安くて、便利な包丁
- どんな場面でも使える万能包丁
- 長く使い込める包丁
など、方向性は様々です。
なぜ、この方向性を決める必要があるのかというと、今の時代は、どんな業種業界でも、競合プレイヤーがたくさんいるからです。
包丁もインターネットで検索すれば、無数に出てくるでしょう。
そんな中で、
何の特徴もない。普通の包丁
と消費者に思われてしまえば、選ばれなくなるのは明白です。
消費者にそう思われないようにするためには、
どんな○○なのか?
を明確に提示する必要があるのです。
このブランドイメージの提示があるからこそ、消費者はイメージを形成することができます。
これを決めるのが「記号の設計」です。
例えば、鳥取県に「万年筆博士」という万年筆の製造・販売・修理を行うブランドがあります。
画像出典:https://www.onestory-media.jp/
「万年筆博士」の万年筆の価格は最低でも1本5万円で、平均単価は16万円です。
一般的に万年筆の価格は1本1万円から5万円なので、相場よりもかなり高額な部類に入るのですが、2020年2月時点で、現在15ヶ月の予約待ちです。
なぜ、これだけ高額なのにも関わらず、人気なのかというと、記号の設計が明確だからです。
万年筆博士が作る万年筆を一言で表現するのであれば
世界に一つしかないフルオーダーメイドの万年筆
です。
「書き癖診断カルテ」を作成し、書きやすさや握りやすさを顧客から聞き出し、それを基に独自の天然素材を使って、熟練した技術を持つ職人が手作りで作り上げるという万年筆です。
このクオリティの高さは海外からも評価され、今では顧客の約半分が海外の人だそうです。
なた、国内でも人気で、直木賞、芥川賞受賞作家や、映画監督なども、書き心地の良さを理由に購入するそうです。
大手メーカーが作る既製品の万年筆とは、明確に違うことが理解できると思います。
こういう設計を作ることが非常に重要です。
だから、まずは箇条書きでも良いので、どういうイメージを持たせたいのかをキーワードを書き出しましょう。
例えば、万年筆博士であれば
- フルオーダーメイド
- 世界に一つ
- 顧客一人一人の個性に合わせる
- あなただけの万年筆
- 価格もワンランク上
- 個人の要望に徹底的に応える
- オリジナリティがある
- 天然素材にこだわる
というものが考えられるかもしれません。
そして、この出てきたイメージを最終的には一言でまとめて
世界に一つしかないフルオーダーメイドの万年筆
というような言葉で表現しましょう。
2-2.記号の統一
ブランドの方向性が決まったら、後はそのイメージが伝わるように
- ブランド名
- ロゴ
- 価格
- 商品内容
- 素材
- 商品パッケージ
- WEBサイト
- 店舗デザイン
- 接客フロー
など、目に見える形を整えていくというステップになります。
ブランドのイメージというのは、ただ概念として構築するだけでは、消費者には伝わりません。
目に見える記号を見て、イメージを想起するので、この部分を統一していく必要があります。
例えば、
世界に一つしかないフルオーダーメイドの万年筆
というブランドイメージを消費者に抱いてもらいたいなら、それを目に見える形に反映しなくてはいけません。
「万年筆博士」というブランド名は、万年筆に関して、どこよりも詳しく、探究しているというイメージを与えます。
また、ワンランク上の万年筆なので、ロゴはポップなものではなく、高級感があるものを作成するのが良いでしょう。
価格は、市場で販売されている平均的な万年筆よりも高めに設定するべきです。
高額にすることによって「高いだけの理由がある」と思わせることができます。
万年筆に使用する素材は普通では扱わないような特別なものも使用します。
製造過程も、大量生産方式では決して真似できない熟練した職人の技が必要な工程を入れ、顧客一人一人の書き癖を考慮したフルオーダーメイド式で作ります。
もちろん、扱う商品ラインナップは「万年筆」だけに特化させます。
万年筆以外のペン製品を扱えば、ブランドイメージと乖離してしまうからです。
また、万年筆は受注生産制なので、お客さんとのメインの接点は店舗ではなく、WEBサイトになります。
WEBサイトの印象は、とても重要で、自作で、手作り感あふれたチープな印象を与えるデザインではダメで、この高額な万年筆に見合う高級感のあるデザインを採用します。
サイトに掲載する万年筆の写真は「物撮り」のプロカメラマンが、万年筆の魅力が一番映え、価値が高い印象を与えるような背景レイアウトを考えた上で、撮影されたものを使用します。
ブランドイメージを起点にして、目に見える形を整えていけば、与えたいブランドイメージを形成させることができます。
ポイントは、ブランドイメージに
- 何が相応しいのか?
- 何が相応しくないのか?
をを考えてみることです。
例えば、デザインのことを考えてみて、万年筆博士の場合であれば「高級感」というキーワードは外すことができないと思います。
一方で、
- ポップ
- ナチュラル
- 可愛い
は相応しくないテイストになります。
この2つを軸で考えると、思い描いたブランドイメージを形成できるようになります。
2-3.認知の拡大
記号の設計と統一が終われば、後は認知してもらうだけで、ブランドのファンを作っていくことができます。
認知の拡大というステップでは
- ブログ
- SNS
- インターネット広告
- プレスリリース
- TV CM
- チラシ
- DM
など、オンラインとオフラインのプロモーション活動を通じて、ブランドの存在を認知してもらうということを実行します。
重要なのは、各メディアの特徴を捉え、そのブランドにとって最適な手段を選ぶということです。
まず重要なのは、ターゲット層が見ているメディアを選ぶことです。
例えば、これから大学受験を控える高校生にアプローチしたい場合、Facebookを使うというのは、あまり適切ではないです。
というのも、その層は、Facebookをあまり利用していないので、そこでどれだけ頑張って発信しても、認知度は大きく広がらないからです。
それであれば
- Youtube
- TikTok
などのメディアの方が最適です。
また、各メディアの特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、どのメディアを使うべきかは
- 使える時間
- 使えるお金
- 使える人材
- コンテンツ形式の得意・不得意
- スキル
などによっても、異なるでしょう。
自社のリソースも踏まえた上で、まずはメディアを1つ選びましょう。
最初から様々なメディアに手を出す必要はありません。
まずは
このやり方を続けていけば、結果が出る
という成功パターンを見つけるまで、1つのメディアを育てることが大事です。
様々なメディアであらゆるプレイヤーが発信する時代になったからこそ、求められるのは「質」だからです。
扱うメディアの数が増えれば増えるほど、エネルギーも時間も分散し、中途半端な質のメディアしかできません。
2-4.インナーブランディング
また、ブランド作りを考える上で、非常に重要になるのがインナーブランディングという観点です。
インナーブランディングは、従業員向けに実施するブランディングのことです。
ブランドを構成するのは、その組織に所属する従業員です。
どれだけトップがブランドの方向性を示し、商品・サービスを改良し、メディアを駆使して、認知度を広げたとしても、従業員が
- 会社が目指す方向性がわからない
- この会社にいても将来が見えない
- 自分の仕事に何の意味があるのかわからない
- お金・生活のため以外に働きがいを見出せない
- 社内の人間関係がギスギスしていて居心地が悪い
などの不平・不満をこぼしていたら、ブランド力を維持していくことは非常に困難になります。
そういう組織では、従業員は、顧客のことを真剣に考えるよりも、自分の保身や昇進や給与のことだけを考えます。
当然ですが、ブランドをより良くしていく提案などは生まれにくく、仕事は形骸化します。
インナーブランディングを実施すれば、従業員は、ブランドの目的を理解し、モチベーション高く、仕事に従事するようになります。
このインナーブランディングについては以下の記事で詳細に解説しているので、興味がある人はぜひご覧ください。
3.ブランドの成功事例
では、最後にブランドの成功事例について紹介していきたいと思います。
3-1.ふらここ
では、まず最初に紹介するのは「ふらここ」です。
ふらここは、東京都の日本橋で日本人形の製造・販売業をしている企業になります。
画像出典:https://shanimu.com/
日本人形は間違いなく日本の伝統産業ではあるのですが、需要が減少し続けている斜陽産業です。
日本には500社ほどの節句人形のメーカーや販売会社がありますが、その半数が前年度対比で業績を落としており、年を追うごとに廃業・倒産していってます。
昔に比べて、節句を祝うというような習慣も日本人の中で薄れてきているという傾向も影響していると思います。
そんな逆風の中、「ふらここ」は快進撃を続けています。
業界初のカタログ、インターネット通販のみの無店舗の販売スタイルで、特注品と定番商品を併せて200人の予約客が1年待ちの状態。
平均単価はひな人形で13万円、五月人形で9万5000円で、同業他社と比べて少し高めですが、値引きせずに完売させている、まさにブランド化している企業です
伝統産業を担う会社の多くは、時代の経過とともに倒産・廃業していってます
日本人形の業界というのは、多くの会社が価格競争に巻き込まれています。
なぜなら「昔ながらのやり方」が価格競争を生む構造になっているからです。
日本人形の業界では、景気低迷の影響で、できるだけ日本人形の製造コストを抑えたいという会社が、製造と販売を切り分けました。
顔、胴体、小道具は職人が分業して作成し、毎年開かれる新作展示会で、販売業者がそれぞれのパーツを安くで買い付け、組み合わせて人形として販売するのです。
基本的に、職人の人形作りは、伝統的な作り方があり、それを守り続けているので、どのパーツを買って、組み合わせても、大体、同じような人形になります。
当然この作り方だと、消費者からすると、どの店でも同じような人形を購入することにになるので、どうせなら安い方となります。
製造と販売が分離しているので、作り手にお客様の声は届きません。
だから、職人も
昔ながらのやり方で何が悪い。これまで培ってきたことを伝承していく事が伝統作業を担う者の務めだ
という人が大半なので、安売りが業界の中で蔓延しているのです。
ふらここの原英洋社長は、こうした従来のお店とは、全く逆の戦略を取りました。
画像出典:https://shanimu.com/
原さんは、祖父が人間国宝の人形師「原米州」、母もその技術を受け継ぐ「原孝州」という人形師の家庭で生まれました。
大学卒業後、父親の他界をきっかけに、人形師を継いだ母親を支えるために、家業の五色株式会社に入りました
会社に入ってみると、先ほど説明したような業界の矛盾と相対することになります。
このままでは家業のみならず、業界も衰退するという危機感はありましたが、社内には御多分にもれず「伝統を守る」という綺麗事を盾に「変わること」を拒否する抵抗勢力がたくさんいました。
社内で新しいことをすることにあまりにも逆風は強かったため、新しく会社を興すことを決意し、ふらここを創業します。
ふらここでは、︎若い母親が好むような人形製作を比較的若い職人に依頼しました。
顔は細面で上品な「うりざね顔」ではなく、ふっくら丸く可愛らしい「赤ちゃん顔」にしました。
というのも、祖父母が孫への贈り物として購入するとしても、節句人形の選択の決定権を持っているのは若い母親だからです。
実際に親の会社にいた時は
おじいさんとおばあさんから贈られたひな人形が気に入らないからキャンセルしたい
というような問い合わせがあったそうです
だから、ターゲットを若い母親に変えたのです。
人形のサイズは、若い世帯が住むマンションなどの狭い部屋でも場所を取らない「手の平サイズ」。
色合いはパステルカラーやナチュラルな淡い色調で、洋風の部屋にも馴染むように。
ただし、製造は伝統技法を守る。
顔は真っ白な上質のハマグリの殻を細かく砕いた胡粉仕上げ。
目はガラス製、頭髪は絹糸、胴体は桐の粉を固め乾かし、筋彫り下部分に衣装の生地を押し込んでいく木目込み製法。
衣装は代表的な産地である京都の工房で特別に仕立てられた織物で制作します。
質は高く、現代のライフスタイルにマッチした日本人形を製作したのです。
2008年に、東京の日本橋で創業した年に、ひな人形200セット、五月人形100セットを完売。
2016年には売り出し初日の11月1日だけで397件の注文があり、ホームページがパンク寸前に。
今は創業当初の10倍が売れています。
適正価格で販売し、1年先まで定価販売の商品の注文が入るため、職人にも安定的に仕事を発注することができるので、結果として伝統産業を守ることにも繋がっています。
伝統を守ることと革新は逆に捉えられることが多いのですが、変えるべきところは変えないと、伝統なんて守りようがありません。
革新を図ることは、本当の意味で伝統を守ることになるのです。
変えるべきところは変え、守るべきところは守る
というのは、多くの老舗企業でも採用されている「不易流行」の精神です。
変えるべきところを変えず、守るべきところを守らない企業というのは、どれだけ歴史があっても潰れていきます。
これまでの勝ちパターンに依存することになり、新たな勝ちパターンを生み出す発想力や商品開発力もなくなり、時代が変わってしまえば、終わるからです。
利益が出ているからと言って、今、経営が上手くいっているからといって、歩みを止めてしまったらブランドは終わりなのです。
何を変えて、何を守るべきなのか?
それはブランドとしての理想をどこに据えるのかによって決まります。
自社のブランドは、
- どんな人に
- どんな商品・サービスを提供して
- お客さんにどうなってもらいたいのか?
を考えることが大切です。
これを常に、事業の判断の中心軸に据えて、売上よりも大切にし、守っていくことで、ブランドというのは維持・継続していくことができます。
3-2.Makuake
では、次に紹介するのは、通販サイト「Makuake(マクアケ)」です。
通販サイトといえば、Amazon、楽天市場、ヤフーショッピングが国内の市場を独占しており、後発の通販サイトが付け入る隙はないように感じます。
そんな中、Makuake(マクアケ)は、これまでの通販サイトとは全く違ったコンセプトを提示し、年商250億円にまで伸ばし、今もなお急成長を続けています。
画像出典:https://www.makuake.com/
創業者の中山 亮太郎さんは、サイバーエージェントに入社し、ベトナムに赴任した時に、日本製品は姿を消し、安い中国の製品ばかりが売られていることに驚きました。
画像出典:https://www.makuake.co.jp/
最初は、日本製品は価格が高いから売れていないのかと思いましたが、ベトナムでは、月給の3倍もする10万円以上のiPhoneを購入する若者の姿もあります。
これは価格の問題ではなく、日本が価格に見合うだけの魅力的な製品を作ることができないということです。
ですが、iPhoneの部品の多くは日本で作られています。
なぜ、iPhoneのようなヒット製品が日本から生まれないのか?
という疑問を持つようになります。
行き着いたのは
日本では確実に売れるものしか商品化されないから
でした。
どれだけ革新的なアイディアを思いついたとしても、
- 前例がないから
- 証拠がないから
- 保証がないから
というような理由で、社内で頓挫してしまう風土が、日本全国に根付いているからです。
ですが、このままでは、日本は衰退の一途を辿ることになります。
そんな危機意識とともに生まれたのが、Makuake(マクアケ)です。
Makuake(マクアケ)のコンセプトは
世界をつなぎ、アタラシイをつくる
です。
Makuake(マクアケ)は、クラウドファンディングの原理を利用して、「応援購入」という仕組みを生み出しました。
仕組みはシンプルで、予約購入みたいなイメージです。
まずは、「こんな商品を世の中に出したい」というアイディアがある出品者が、マクアケに商品の購入者を募ります。
そして、その募集ページを見て、商品を欲しいと思った購入者が、サイト内で決済をします。
各商品には、目標の購入人数が設定されており、その目標人数に達した場合は、商品を製造して、購入者に送ります。
仮に、その目標人数に達しなかった場合は、商品を製造せずに、返金して対応することもできます。
つまり、この通販サイトを「テスト販売」として利用することができるのです。
もし反応が悪かった場合は、リスクなく、商品のアイディア自体を改良することもできますし、反応が良ければ、そのまま売上に直結するという訳です。
挑戦的で新しい商品は、いきなり本格的に販売するのはリスクが大きいかもしれませんが、Makuake(マクアケ)を利用することで、「売れるかどうか」の確証を掴むことができるのです。
この仕組みができたことによって、Makuake(マクアケ)には、まだ世の中には本格的に販売されていない、珍しい商品が並ぶようになりました。
大手の通販サイトにはない、ユニークで、挑戦的な商品ばかりが並ぶようになりました。
これもMakuake(マクアケ)が大手の通販サイトにはない付加価値になっています。
3-3.アメーラ
では、次に紹介するのは「アメーラ」です。
アメーラは、静岡市にあるサンファーマーズという会社が保有するトマトのブランドです。
画像出典:https://www.amela.jp/
「アメーラ」は高糖度で、酸味・コク・トマトの風味がバランスよく整ったトマトです。
とても高品質なトマトで、平均のトマトの相場価格よりも、2~3倍ほどするのですが、とてもよく売れています。
アメーラを販売するバイヤー曰く、今の2倍以上の出荷量でも十分売れるそうです。
生産量は12年で12倍に、平均単価は1.25倍になっていることからも、まさにブランディングに成功している企業でしょう。
一般的に、高糖度トマトは生産が非常に難しく、希少価値の高いものでした。
というのも、高糖度にするため、水分量をギリギリまで抑え、甘味・酸味・旨味を凝縮するためです。
水分量を抑えるため、一株で収穫できるトマトの数は少なくなります。
つまり、品質を上げようとこだわると、生産量が落ちるんですね。
育成技術も非常に高度なものが求められるので、求められているのはわかっているけど、高糖度トマトの安定供給など、夢のまた夢と思われていました。
サンファーマーズは、
今までにない美味しいトマトを創って、全国に届けたい
という思いで、2005年に事業をスタートさせました。
もちろん、それだけ生産が難しいトマトを作ろうとするのですから、最初は赤字です。
また、一つの農家だけでは、安定供給など、夢のまた夢なので、複数の農家と協力します。
そして、3年間かけて、高い生産技術を追求し、高品質で生産量を確保しながら、毎日3000ケース安定的に出荷できる体制を作りました。
ポイントは1年中だということです
どんな野菜もそうですが、基本的にシーズンがあります。
たいていのトマト農家はシーズンのみの1~6月に販売を集中させます。
ですが、アメーラの場合、1年中販売ができるので、7~12月はアメーラの独壇場になります。
品質のこれだけ良い高糖度トマトを年間通じて、販売できるのはサンファーマーズだけです。
また、品質を保証する努力も素晴らしいものがあります
出荷場では高性能の糖度センサーが付いた選果機が年間1500万個のトマトを検査し、糖度表示と糖度検証を行います。
基準に達しないものは絶対に出荷しません。
市場担当者とホットラインで繋がっており、何か商品に不備があるなどのクレームがある場合も、即座に連絡し、対応できる体制をとっています。
現在はほぼクレームはゼロだそうです。
この姿勢もとても大切ですね。
どれだけ価値の高さを謳っていても、それに見合ってないものを提供してしまえば、お客さんの信用を失ってしまいます。
ブランドは信用が全てです。
価値の高さを謳い、商品の実態が伴っているからこそ、ブランドとしての約束が果たされることになり、長く利用してもらえるのです。
4.ブランド構築に取り組もうと思っている全ての方へ
今回の記事ではブランドについての基礎知識、方法、成功事例をご紹介してきました。
ブランドに対する理解は、どんな業種業界でも必要で、この記事が何かの参考になっていると幸いです。
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