インナーブランディングとは?重要性や方法を豊富な事例から徹底解説

ブランディングの専門家・中江 翔吾

「インナーブランディングって何?」
「インナーブランディングは具体的にどう実践すればいいの?」
「インナーブランディングの成功事例が知りたい!」
ブランディングについて学んでいくと「インナーブランディング」という言葉に出会うと思います。
これは会社組織内、つまり従業員に向けて実施するブランディングのことです。
一般的にブランディングというのは、市場・消費者に向けて行う手法のことを意味していました。
つまり
- ブランドコンセプトの構築
- 商品設計
- ブランド体験の設計
- ブランディングデザイン
- プロモーション
などを実施し、ブランドの価値を高め、伝え、広めるという方法ですね。
この手法は、アウターブランディングとも呼ばれます。
確かに、これを実施することで、商品の価値も、認知度も、顧客満足度も高めることができるので、業績を拡大することは可能です。
ですが、会社組織の場合、このアウターブランディングだけでは不十分なのです。
というのも、ブランドを形作るのは、その組織に属する従業員一人一人の行動です。
従業員がブランドの価値体系を理解し、ブランドにふさわしい振る舞いができなければ、ブランドを確立することは難しいのです。
どれだけ立派なブランドコンセプトを作ったとしても、それが体現できていなければ、意味がありません。
実際に業績は右肩上がりで拡大していったものの、倒産した会社というのはたくさんあります。
その理由はシンプルで
- 会社が目指す方向性がわからない
- この会社にいても将来が見えない
- 自分の仕事が何に繋がっているか分からない
- お金・生活のため以外に働きがいを見出せない
- 社内の人間関係がギスギスしていて居心地が悪い
など、組織内の従業員が不満を抱えていて、いきなり辞めるなど、内部崩壊を起こすからです。
顧客満足度を支えるのは従業員です。
従業員が、真にブランドの価値体系を理解し、働きがいを見出し、
この会社で働けることが私の誇りであり、幸せ
という状態を作り出す必要があります。

今回の記事では、そんなインナーブランディングについてお伝えしていきたいと思います。
この記事を読んでいただければ、インナーブランディングに関する体系的な知識や成功事例だけでなく、具体的にどう実践していけばいいのかまでが分かるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!

ブランディングの専門家。一流のデザイナーからグラフィックデザインを学び、フリーランスのデザイナーとして独立。その後、ネットを活用し、安定した集客モデルと、ブランドを構築し、仕事の依頼が常に2~3ヶ月待ちに。現在はデザインとマーケティングの力を使って、個人・企業の規模を問わずに、ブランド構築のサポートを提供している。

1.インナーブランディングとは
まずは、「インナーブランディングとは何か」について解説していきます。
1-1.インナーブランディングの意味
ブランディングの目的は
- 認知度:どれだけ多くの人にブランドの名前が知られているか
- 知覚品質:伝わってる価値の度合い
- ロイヤルティ:顧客の忠誠度
という3つの総合力である「ブランド力」を高めることです。
このブランド力が高いと、ブランドの名前が全国的に有名で認知され、ブランドが持つ本当の価値が伝わり、一度、商品・サービスを購入した人がファンになるというサイクルを生み出せるので、
- 集客
- 売上
- 価格競争
- 採用
といった事業に関するありとあらゆる悩みから解放される状態になります。
これがいわゆるブランドが確立されている状態であり、ブランディングが目指すべき場所なのですが、この状態を実現していくための方法として
- アウターブランディング
- インナーブランディング
という2つの手法があります。
この二つの手法の違いは、ブランディングを実施する対象の違いです。
アウターブランディングの場合は、消費者を対象に実施するブランディングのことです。
アウターブランディングを一言でまとめるなら、ブランドの価値を創造し、高め、伝え、広めるということを実施します。
詳細は「ブランディングとは?正しい意味と実行4ステップを完全解説」という記事で解説したので、簡単にだけ触れておきます。
アウターブランディングは
- 記号の設計
- 記号の統一
- 認知の拡大
という3つのステップを実施します。
まず、記号の設計では、ブランドを認知した人が、そのブランドに対して抱くイメージを設計するということをやります。
今の時代は、どんな業種業界であれ、選択肢過剰の時代です。
インターネットがあるので、消費者は、何かひとつ商品・サービスの選択を行うにしても、無数のブランドから選ぶことができます。
無数のブランドの中から自社のブランドを選んでもらうためには、はっきりとした違いを持つことが非常に大切です。
例えば、カメラという商品一つとっても、消費者から
カメラということは分かるけど、他のカメラのブランドと何が違うのか分からない
というようなイメージしか抱かせることができていなければ、選ばれることはありません。
消費者から違いを認識されなければ、値段という明確に違いがわかる数字で比較されるようになり、価格競争に巻き込まれていきます。
この記号の設計というステップでは
自社のブランドはどういうブランドなのか?他社とは何が違うのか?
を明確に定義するということをします。
言い換えるなら、ブランドを認知してもらった際に、抱くイメージをコントロールするということをやります。
この記号の設計をすることで、消費者から他のブランドとの違い(=価値)を認識してもらえるようになります。
次に設計した記号を事業に関わるあらゆる局面に落とし込むという作業を実施します。
これが記号の統一です。
設計したブランドのイメージは、実際に
- ロゴ
- 商品・サービス
- 販促物
といった目に見える形に落とし込む作業が必要になります。
目に見える形にブランドのイメージを落とし込むことで初めて、消費者にブランドが伝えたい印象を伝えることができます。
そして、伝えたいブランドイメージを目に見える形に落とし込むことで、そのブランドの価値が伝わり、一度、商品・サービスを購入すれば、リピートも口コミも起こしてくれるような状態を作り出すことができます。
ここまで来れば、あとは消費者に対して、ブランドの認知を拡大すればするほど、ファンが増えていくという状態を作り出すことができます。
これが認知の拡大であり、アウターブランディングの最終ステップになります。
この3つのステップを全て見ていただければわかるのですが、基本的には、実施する対象が消費者という外部であるということです。
これがアウターブランディングと呼ばれる所以です。
一方で、インナーブランディングとは、そのブランドに所属する従業員に対して実施するブランディングのことです。
インナーブランディングは、対象が社外ではなく、社内になります。
経営者が、どれだけ立派なブランドの方針を作ったとしても、その方針が現場で実際に消費者と接するスタッフが体現できていなければ意味がありません。
従業員の一挙手一投足がブランドを形作るのです。
ブランドを確立するためには、従業員に対して、
- どんなブランドなのか?他社とは何が違うのか?
- 何をポリシーとして大切にしているのか?
- 誰を対象にしているブランドなのか?
- 顧客にどうなってもらうことを理想としているのか?
- 何を目的にこの事業をしているのか?
というようなブランドの価値体系を浸透させる必要があります。
例えば、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、リピート率は驚異の90%超えと言われていますが、これはスタッフにブランドの価値体系の浸透ができており、ブランドにふさわしい振る舞いを一人一人ができているからです。
ウォールト・ディズニーはディズニーランドに対する想いをこう語っています。
私はディズニーランドが、幸福を感じてもらえる場所、大人も子供も、ともに生命の驚異や冒険を体験し、楽しい思い出を作ってもらえるような場所であってほしいと願っています。(引用元:http://www.olc.co.jp/)
つまり、あらゆる世代が一緒に楽しめるようなファミリーエンターテイメントを実現したいということですね。
これが根本的な思想です。
そして、この思想を実現させるための「SCSE」というスタッフの行動基準もあります。
- S:Safety(安全)
- C:Courtesy(礼儀正しさ)
- S:Show(ショー)
- E:Efficiency(効率)
スタッフは何か行動する際に「S>C>S>E」という優先順位で行動を取るようにします。
最初の「S」は「Safety(安全)」です。
お客様にとって安全で、安らぎを感じる空間を作ることがまず第一優先です。
次の「C」は「Courtesy(礼儀正しさ)」です。
この礼儀正しさは、言葉遣いなどの振る舞いが丁寧であることを表すのではなく、相手の立場に立った親しみやすいおもてなしをすることを意味します。
ディズニーランドには様々な老若男女、国籍問わず、様々な人がお客様として来園しますが、全てのゲストがVIPであり、心を込めておもてなしをします。
次の「S」はShow(ショー)です。
ディスニーランドでは園内を一つの「ショー」だという風に見立て、設計されています。
なので、そこで働くスタッフもショーの一部であり、演者の一人なのです。
例えば、ディズニーランドでは、一部のスタッフが、園内の清掃をする際に、ただ普通に清掃するだけでなく、それを見る人が楽しめるようにするパフォーマンスがあったりします。
これもこの行動基準によって成立したパフォーマンスなのです。
そして、最後の「E」は「Efficiency(効率)」です。
安全や礼儀正しさ、ショーという意識はまず、大前提として優先です。
それを無視した効率ではなく、上記の3つを実現するために、チームワークを発揮することで効率を高めていくことを意識するということですね。
この行動基準などのディズニーランドのブランドの価値体系があり、それが隅々のスタッフにまで浸透しているからこそ、高い顧客満足度を実現し、結果として90%以上のリピート率を達成しているのです。
1-2.インナーブランディングの重要性
断言しますが、アウターブランディングを実践すれば売上は伸ばせますが、一定のラインどこかで頭打ちします。
例えば、キントーンなどのグループウェアソフトを開発する「サイボウズ」という会社があります。
画像出典:https://docodoor.co.jp/
サイボウズは現在、年商130億円を超え、東証一部にも上場している日本を代表するグループウェアソフトを開発する会社です。
サイボウズは1997年に青野慶久さんが「世界一のグループソフトウェア会社を作る」というビジョンの元に創業されました。
画像出典:https://jinjibu.jp/
恐らく、サイボウズは、日本におけるグループソフトウェア開発会社の先駆け的な存在だったと思います。
商品の質も高く、業績はどんどん拡大し、なんと10年目の2006年には、東証一部上場を果たし、業績は年商30億円に到達します。
ですが、実は、華々しい業績の裏側では、悲惨なことが起きていました。
超ブラック企業だったのです。
基本的に、社員は、朝7時に来て、帰るのは夜11時です。
できる限り仕事をするのが当たり前
というのが社内の風土でした。
だから、夕方5時に始めた会議が、深夜の3時になっても終わらないこともよくあったそうです。
そして、青野社長は無慈悲な成果主義を採用しました。
社員をランクづけして、最低評価の人には、
次も同じ評価だったらやめてもらいますよ
と平気で告げていたそうです。
青野社長は
世界のトップを走るIT企業を相手にするなら、それが当たり前だろ
と思っていたようです。
これまで順調に業績は右肩上がりで伸びていたのですが、売上が30億円を超え出してから、頭打ちになります。
その時、青野社長は単純に
グループソフトウェアだけでは売上を伸ばすのは無理だ。市場規模の限界
という判断をして、本業とは関係のない9社に対してM&A(買収)を実行します。
この買収は単純に業績を拡大するためです。
ですが、このM&Aは失敗に終わり、業績はさらに悪化し、株価は暴落します。
なぜ、上手くいかないんだろう?
原因は分からないまま、次に優秀な社員がどんどん辞めていくという事態が起こり始めました。
離職率はなんと28%を超えていました。これは日本の平均の離職率の2倍の数値です。
もうちょっと給料を出してやるから
と引き留め工作をしても無駄でした。
どうやら何か根本的に自分の経営の仕方が間違っているんじゃないか
ということに気づき、青野社長はこれまでの自分のやり方を改めます。
まずは、全社員と30分の雑談を始め、
- この会社に対して思っていること
- 仕事に対して思っていること
などを聞き出しました。
そうすると、
親の介護があるから週2日は在宅勤務にして欲しい
子どもが小さいのでフルタイム勤務は厳しい
というような働き方についての要望や意見がとても寄せられるようになりました。
そこで初めて、青野社長は、社員のみんなと自分の考え方の違いに気付いたそうです。
そしてそこから、皆が働きやすいように、働きがいを感じられるように制度改革を始めていきました。
まさにインナーブランディングを実行していったというわけですね。
今では
- サイボウズで働いてよかった
- サイボウズで働くことに誇りを持てる
という感動体験を生み出す活動だけをしている感動課という部署まで設置しているそうです。
結果として、サイボウズはGPTWが主宰する「働きがいのある会社ランキング2位」を獲得する企業に生まれ変わり、業績も30億円から130億円にまで拡大しました。
M&Aに失敗した本業とは関係のない会社は全て売り払ったので、グループソフトウェアだけでそこまで伸ばしたのです。
離職率も4%まで下がっています。
この事例を知れば、アウターブランディングだけではブランディングは片手落ちであり、インナーブランディングも重要だということがわかると思います。
1-3.インナーブランディングの4つのメリット
では、続いてはインナーブランディングのメリットをご紹介していきます。
1-3-1.組織としての生産性が上がる
インナーブランディングの最初のメリットは「組織としての生産性が上がる」というものです。
インナーブランディングを実行すると
- 使命
- ビジョン
- 行動基準
という3つのブランドの価値体系が従業員全体にインストールされます。
このブランドの価値体系が従業員全員に共有されていると
どの選択を取るのがブランドとして正しいのか?
が一目瞭然になるので、判断に困ることや、判断で揉めることもなくなります。
例えば、ディズニーランドの園内の清掃について
- とにかく効率的にスピーディーにやるべきか?
- 清掃もショーの一部だと考え、来場者を楽しませるようにやるべきか?
という2つの選択肢があったとしても、「SCSE」という行動基準に照らし合わせれば答えはすぐに出ます。
間違いなく「清掃もショーの一部だと考え、来場者を楽しませるようにやるべき」です。
これはディズニーランドに所属する全従業員が賛同する意見だと思います。
効率的にとにかくスピーディーに清掃することだけを意識してたら、エンターテイメントではないですよね。
また、ブランドの価値体系があることで、従業員全体に行動の一貫性が出ます。
ブランドの価値体系こそが「正解」なので
- Aさんはとにかく効率的にスピーディーにやっている
- Bさんは非効率でも隅々まで丁寧に掃除している
- Cさんは掃除せずにパフォーマンスばかりやっている
みたいに全員がバラバラの行動をとることはあり得ません。
全ての従業員はブランドの使命やビジョンがわかっており、「SCSE」の行動基準に則って動くので、行動が統一されるのです。
この統一こそがブランドの世界観を守ります。
また、マイクロマネジメントも不要になってきます。
いちいち、全てに対して、細かな指示を出さなくても、その行動基準に照らし合わせれば、自ずと、上司の判断を伺わなくても、外れた行動はしなくなるからです。
従業員は自発的に、団結して、ブランドの価値を高める行動をしてくれるようになるので、生産性が上がるというわけです。
1-3-2.顧客満足度が上がり、リピートや口コミが増える
当然ですが、ブランドの価値体系が共有され、組織としてブランドの価値を高める行動を全従業員ができるようになれば、顧客満足度は高まります。
ディズニーランドは全従業員のブランドの価値体系を共有しているからこそ、リピート率90%以上という驚異的な顧客満足度を達成できているのです。
顧客満足度が高まれば
- リピート
- 口コミ
が広がっていくので、売上も自然と安定するようになります。
1-3-3.従業員の定着率がアップする
また、従業員の定着率もアップします。
インナーブランディングを実行すると、従業員は「働きがい」を見出すようになります。
なぜ、その会社で働いているのか?
世の中の95%以上の従業員は「お金のため・生活のため」でしょう。
普通、社会に出るまでも、出てからもそれ以外に働く意味を教わらないからです。
ですが、従業員がその目的で働いているようでは、定着率は上がりません。
というのもその働き方は常に「条件」と「労働力」との等価交換だからです。
この会社は、毎朝7時出社で、帰れるのはいつも終電。仕事の内容もキツイけど、高い給料をもらえてるからいいか
くらいの意識で働いている人とかはまさにそうですね。
こういう従業員って、自分に提示される給与や福利厚生や休みといった「条件」にしか興味がありません。
もし今の自分の会社以外で、より待遇の良い条件を出してくれる会社が出てきたら、そっちに簡単に移ってしまいます。
だから、大切なのは「お金のため・生活のため」以外の働く意味を見出してあげることです。
ブランドの価値体系を共有すると
自分の会社の使命って、こういう人をこんな風に幸せにすることなのか。自分の仕事にはこんな意味があるのか。
と気付けるようになります。
自分の一挙手一投足が、誰かの幸せに繋がっていることを実感できるようになるんです。
そうなると、人はお金や福利厚生や労働時間云々ではなく、ただその仕事をしていることが誇りで幸せに感じるようになります。
僕は毎日、コンサルタントとして、デザイナーとして16時間以上は仕事しています。
休みなんてほぼありません。世間一般からすると、超ブラックだと思います。笑
でも、毎日が楽しくて楽しくて、仕方ないんですよ。
それは自分の仕事の
- 役割
- 使命
- ビジョン
を認識しており、
自分の仕事がこんな人の幸せに繋がっている
という「働きがい」を感じることができているからです。
仕事をしている時間が本当に幸せになるのです。
どれだけ待遇を良くしても、従業員の定着率は上がりません。
重要なのはブランドの価値体系を共有し、自分の仕事に働きがいを感じてもらうことなのです。
1-3-4.採用に困らなくなる
従業員がそれだけ幸せで、自分の仕事に誇りが持てるようになれば、自然と
この会社で働きたい!
という人は全国から集まってきます。
これは「ブランディングの成功事例【15選】から学ぶブランド戦略の極意」という記事でも紹介しましたが、義肢装具メーカーの中村ブレイスもそうですね。
画像出典:https://kindaipicks.com/
中村ブレイスの従業員の方は、自分が作る義肢装具が、体が不自由になった人の役に立っていることを誇りに思っています。
休日にも仕事がしたくて、こっそり出勤してくる人もいるそうです。
とにかく働きたくて、早く義肢装具を届けたくて、仕方がないのです。
これは従業員の方が、働きがいを感じている証拠です。
中村ブレイスがあるのは、島根県の石見銀山の麓です。
日本で最も過疎化が進んでいる地域で、人口も400人ほどしかいない町にも関わらず、日本中の若者が
就職したい
と希望が殺到しているのです。
特に今の時代はインターネットがあるので、リアルな口コミは広がりやすい環境にあります。
どれだけ秘密保持契約を盾にとって、従業員に会社の悪い口コミをさせないようにしても、噂はすぐに広まってしまいます。
逆に言えば、従業員が幸せで、満足していれば、そういう良い口コミも広がりやすいので、採用にも困らなくなるんですね。
2.インナーブランディングの実施方法
では、続いてはインナーブランディングの実施方法について解説していきたいと思います。
2-1.社内の現状把握
まず、実施するのは社内の現状把握です。
把握したいのは
- 働きがい
- 働きやすさ
- 現状への不満
- 価値体系の浸透度
の4つです。
これをまずは従業員に
- アンケート
- 個別ヒアリング
- グループ面談
などの手段を使って、聞き出していくことです。
実施する際のポイントとしては「本音」を引き出すことです。
「本音」が聞き出せなければ、どんな施策をこれから打っても、役に立ちません。
だから、今回実施するヒアリングやアンケートに関しては、人事評価などには一切影響しないことをトップから従業員に約束してください。
また
もっと社員のみんなが働きがいを感じることができて、この会社で働いていて良かったなと思えるような環境を本気で作っていきたいと思っているから、アンケートやヒアリングに協力して欲しい
ということも伝えるべきです。
何を目的にヒアリングされているか分からないと、相手の本音も引き出しようがないので。
まずは、従業員満足度アンケートから実施するのはおすすめです。
このアンケートは記述式ではなく選択制名で、基本は「1〜5点」の選択制です。
匿名にし、メールアドレスなども取得しないようにし、誰が入力したか分からないようにするのもポイントです。
匿名だと本音を書きやすくなるので。
以下は、実際に僕は企業のコンサルティングを行う際に使用しているアンケート項目です。
企業によっては項目を変えることもありますが、基本的にはこれを使っています。
- 今の会社で働いていることに満足していますか?
- 現在の仕事にやりがいを感じていますか?
- 自分の業務が社会や顧客の役に立っていることが実感できていますか?
- 今の仕事をすることで個人の成長が実現できると感じていますか?
- 業務量は適切だと感じていますか?
- 5年後も、今の会社で働き続けているイメージがわいていますか?
- 今の会社で働いていることを、誇りをもって家族や友人に話をしていますか?
- 現在の職場をどの程度、親しい友人や家族にすすめたいと思いますか?
- 職場の人間関係は良好ですか?
- 職場では達成すべき目標が明確でメンバーで共有されていますか?
- 必要に応じて適切な業務の連携ができていますか?
- 職場には、安心して相談しあえる風土がありますか?
- 業務を行う上で必要な情報がタイムリーに共有されていますか?
- 上司はあなたに対して方針を提示し、業務の指示・指導を適切に行っていますか?
- あなたは上司と業務上に必要な連携がとれていますか?
- 上司はあなたに対して、成長につながる指摘やフィードバックをしてくれていますか?
- 上司のコミュニケーション量は適切ですか?
- 上司は、期初に設定した目標に照らして公平な評価をしていますか?
- あなたの会社では、適切な基準にそって公平な評価がされていますか?
- 会社のミッション・ビジョン・強み・価値観・行動基準を説明できますか?
- 会社のミッション・ビジョン・強み・価値観・行動基準に共感し、その達成に協力したいと思いますか?
- 自分が何らかのハラスメントにあっていますか?
- 社内で何らかのハラスメントにあっている社員はいますか?
これを実施するだけでも、社内組織の構造的な問題が浮かび上がってきます。
そして、従業員満足度アンケート調査を行ったら、次に、個別ヒアリングに入ります。
これも査定には影響しないことを伝え、とにかく話しやすい環境で
- 会社に入ったきっかけ
- 今の仕事に対して思うこと
- 今の会社に対して思うこと
- 将来についてどう考えているか
- 人間関係やコミュニケーションについて
など、本音を引き出しましょう。
これまで築き上げてきた関係性によっては、経営陣に対して萎縮してしまっている従業員も多くいるかもしれません。
トップダウン・独断先行型の経営をしてきた会社は、その傾向にあります。
もし、本音を聞き出せそうになければ、話しやすそうな社員に代わりにヒアリングを行なってもらったり、外部のコンサルタントを雇ってヒアリングを実行するのも一つの手です。
これで
- 働きがい
- 働きやすさ
- 現状への不満
- 価値体系の浸透度
は把握できるようになると思います。
2-2.経営方針の決定
では、次に実行するのが、経営方針の決定です。
今、把握した現状を踏まえて、この会社をどう変えていくのかという方針を定めるということですね。
具体的には
- 経営理念
- ビジョン
- 経営方針
- 行動指針
の4つを定めていきます。
2-2-1.経営理念の作成
まずは、経営理念を作成していきましょう。
経営理念とは
この会社をどんな会社にしたいのか?
という経営の核となる想いのことです。
少し事例を紹介していきます
1.キリン
「飲みもの」を進化させることで、「みんなの日常」をあたらしくしていく。
2.Facebook
誰もが情報を共有できる、オープンでつながりのある世界を実現する
3.鳥貴族
焼鳥で世の中を明るくする
4.アサツー ディ・ケイ
「伝える」の先へ行く。
5.エン・ジャパン
「人間成長」の実現 より多くの人が、働くことを自らの成長ステージと捉え、心技一体のプロとして、心物両面で豊かになる社会をつくる。
この経営理念を見るだけでも、これらの会社が社会において、どんな会社を目指すのかが理解できると思います。
事業の全ては、この経営理念に基づいて、組み立てられます。
自分は世の中にどんな会社を作りたいのか?
を根本的に問い直してみて、文章を書いてみましょう。
コツとしては、まずは、経営理念の事例をたくさんみてください。
「経営理念ドットコム」というサイトには1600社の経営理念が載っていますし、面白法人カヤックさんの「いい経営理念の定義と、他社の経営理念」という記事にも豊富な経営理念の事例が掲載されています。
まずは、この経営理念の事例を見て、直感でいいので
こういう経営理念はいいな。自社に合っていそうだな
というものをまずは5つピックアップしましょう。
その経営理念の事例をベースに、文言などを自社に置き換えながら作成してみてください。
- 自社にはどんな使命があるのか?
- どんなお客さんをどんな風に幸せにしたいのか?
- そのために自社はどうあるべきなのか?
- 自社だからこそできることは何なのか?
- どんな会社こそが理想だと思うのか?
など、自分の考えを書き出すことも大切です。
そこで出てきた文言をベースに、経営理念を作ってみてください。
2-2-2.ビジョンの作成
そして、次は、その経営理念を実現していくためのビジョンを作成していきましょう。
まずは、5年後に
会社がどういう状態になっていたいのか?
を具体的に書いてみましょう。
書く際には
- 業績
- 商品
- 顧客像・数
- 集客状況
- 従業員像・数
- 採用状況
- 働く環境
- 職場の雰囲気
- 業界内のポジション
- 表彰やランキング
などの観点から書くと、具体的になるでしょう。
これは従業員と経営者が同じ方向を見る上で必要になります。
経営理念は抽象的ですが、ビジョンを具体的に言語化しておくことで、リアルに今目指しているブランドの方向性を従業員と共有することができます。
合わせて、それを実現するためには、どういう戦略とアクションプランが必要なのかも書き出しておくと、従業員に説明しやすくなると思います。
2-2-3.経営方針の作成
そして、次に、そのビジョンを実現していくために、会社全体としての経営方針を定めていきます。
具体的には
- 顧客に対して
- 商品に対して
- 社員に対して
- 地域に対して
- 社会に対して
- 取引先に対して
「どうあるべきなのか?」という姿勢を6~12項目ほど作成していきます。
例えば、商品に対しての経営方針であれば、
売上を上げるためではなく、人を幸せにする・世の中を良くするために商品を創造します
というようなものですね。
これを各項目1~2項目ほど作っていってください。
会社経営をしていくにあたっては、様々な決断が求められますが、全てはこの経営方針に立ち返って、決定していきます。
この商品を開発するべきかどうか?
この問いに対する答えは、会社の方針によって変わります。
絶対的な正解なんてありません。
ですが、この経営方針が定まっていると、その会社にとっての「正解」が明確に分かるようになります。
経営方針に沿っているものであれば「正解」で、沿わないものは「不正解」です。
これが社内全体の共通認識になれば、意思決定・統一のスピードがとても早くなり、組織としての生産性が上がります。
また、経営理念に基づいている経営方針なので、生産力が上がっても、ブランドの価値を毀損するようなことにはなり得ません。
2-2-4.行動指針の作成
そして、最後に、全従業員が共通して守るべき、行動指針についても明確にします。
これは先ほどディズニーランドの事例で示した「SCSE」というような行動指針だと思ってください。
つまり、経営理念・ビジョン・経営方針を実現するために、社員に望む行動はどういうものかを定めるのです。
例えば
常にチームワークを意識する。全ての業務を他人事ではなく、自分事に。
というようなものですね。
これも5~10項目ほど作成しましょう。
明確に言語化することが大切です。
言語化しないものは人と共有することは不可能だからです。
また、全従業員はこの行動指針に基づいて行動します。
ブランドの価値観に基づいて作成するようにしましょう。
2-3.評価制度の確立
では、続いては評価制度の確立です。
評価制度はインナーブランディングを実施する上でとても大切です。
ブランドの価値体系に根差して行動し、成果を上げた従業員は適切に評価しなくてはなりません。
努力しているのに、そのことが全く評価されないような制度は放置していると、人がどんどん辞めていきます。
また、ブランドの価値体系に根差した行動し、成果を上げる従業員を評価する制度を整えておくと、この評価制度自体が、ブランドの価値体系を従業員に浸透させるための教育装置になります。
2-3-1.役職と仕事レベルの一覧表の作成
まず、評価制度を確立させるための最初のステップは、役員を除く従業員の役職の一覧表を作成することです。
一般的には
- 本部長
- 部長
- 次長
- 課長
- 係長
- 主任
- 一般社員
に分かれると思います。
どんな役職があるかは会社によって異なるでしょう。
そして、その上で、それぞれの役職には、どういう仕事レベルが求められるのかを書き出していきます。
- 知識
- スキル
- 資格
- 人柄
などを意識して書き出すといいですね。
例えば、部長であれば
- 経営理念を部署のメンバー全員に浸透させることができる
- 部署の目標設定と戦略立案ができる
- 部署の現状を把握し、課題に対する対策を即座に打てる
- 経営陣に対して部署全体の報告ができる
- 部下に対して事実だけを元に、公平・公正に評価をつけることができる
などですね。
こういう項目を全ての役職で一覧表にして作成していきます。
この役職における現状の仕事レベルではなく、理想の姿を意識して書き出しましょう。
意外とこういうことを言語化していない会社は多いです。
ですが、言語化していなければ、その役職における社内での共通認識が気づけないことになり、人によって「部長像」が異なってきてしまいます。
そうなってしまえば、部長が変わるごとに、方針が変わり、ブランドとしての一貫性がなくなってしまいます。
理想なのは、誰が部長になっても、一貫したブランドの価値体系に基づき、その職務を全うできるようになることです。
そのために言語化するのです。
また、仕事レベルだけではなく、もしその役職になるために必要な資格、取得されることが推奨される資格などがあれば、それも記載しましょう。
記載しておくだけで、上を目指す従業員は、ブランド構築に貢献するスキルを積極的に自分から学ぶようになります。
2-3-2.評価基準の作成
では、続いては、評価基準の作成について。
人事評価の回数は、半年に一回もしくは、四半期に1回実施されることが多いと思います。
重要なのは
どうすれば会社から評価されるのか?
という評価基準を明確にしておくことです。
評価基準は役職によって変わりますが、これが明確でなければ、従業員は何を意識して仕事をすれば良いかわからなくなります。
なので、これも役職の一覧表と同じく作成する必要があります。
評価項目は
- 成果
- 行動
- 能力
- 姿勢
の4つに分かれます。
まず、最初の「成果」は、数値化できる業績のことだと思ってください。
- 会社
- 部署
- 個人
という3つのカテゴリーに分けて、それぞれ成果に関係する項目を設定します。
何を設定するからは部署毎によっても異なりますが、例えば、営業部であれば
- 会社:売上高、経常利益
- 部署:売上高、営業利益、契約件数
- 個人:売上高、契約件数
といったものが成果になります。
この3つの全てが自分の評価に直結していることで、自分だけが頑張るのではなく、部署内でも、部署を超えて会社全体でも連携も生まれるようになります。
これが例えば、完全成果主義で、個人の業績のみを評価する会社であれば、同じ部署内の同僚は敵になり、社内での連帯感はなくなります。
だから、この3つを含めるんですね。
次に「行動」ですが、これは「成果」を出すために、必要な行動のことですね。
例えば、営業部で一般社員というランクであれば
顧客リストを作成し、上司と一緒にに目標を設定して、電話営業ができていた
というようなものですね。
これも内容は役職によってもバラバラですが、複数項目設定するようにしましょう。
成果を出すために必要な行動も明記することで、実際に従業員は動きやすくなります。
次に「能力」というのは、実際に行動を起こし、成果につなげるために必要なスキルのことです。
例えば、営業部で一般社員というランクであれば
上司の指導の元に、電話営業のトークをブラシュアップさせることができていた
というのも「能力」に該当します。
また、もし、その役職で必要な資格等がある場合は、それを取得していることも評価項目に入れます。
例えば、「営業士検定初級」という資格を取得する必要がある場合は、これを取得しているだけで評価に入れるというイメージですね。
続いては「姿勢」です。
これは仕事に対する「取り組み方」のことです。
自分の仕事以外にも協力し、チームワークを意識して、仕事ができていた
というようなものです。
これまで評価の3つの項目を挙げましたが、それを形作るのは「姿勢」です。
この項目にブランドとしての価値観を含めるのであれば、入れるのがいいでしょう。
例えば、DMを月に100件送るにしても、やっつけ仕事でテンプレートを使い回してやるのか、送り先のことを一つずつ見て、しっかりと文章を作成して、送るのかでは、ブランドとしての評価も変わってきます。
なので、これも評価項目に入れましょう。
この4つの評価項目を作成したら、
- SS
- S
- A
- B
- C
- D
- E
という7段階評価をそれぞれの項目に設定して、部署毎に点数の配分を決めて、採点できるようにします。
あとは、この点数を給与と賞与に反映させる設計に変えれば、ブランドの価値体系に根差して行動し、成果を上げた人が評価されるようになります。
もちろん、成果主義ではなく、部署全体、会社全体のことも自分の査定に入るため、従業員は同僚を蹴落としてまでも成果を上げるような自己中心主義に走ることはありません。
評価制度を正しく設計し、運用していけば、従業員のブランド意識を育てることになるのです。
2-4.コミュニケーション設計
では、最後にコミュニケーションの設計をしていきます。
ブランドの価値体系を明確に定めても、それは日常の業務の中で、コミュニケーションを通じて、繰り返し伝えていかなければ浸透しません。
具体的に、社内で発生するコミュニケーションとしては
- 個別面談
- ミーティング
- 社内報
- 日報
- 社内ブログ
- 社内SNS
- 連絡ツール
- イベント
などがあります。
これらを通じて、ブランドが目指すビジョンに向かって、経営陣と従業員が一致団結するようにします。
- どれを使うべきなのか?
- どのように運用すればいいのか?
については、会社の状況によって打つべき施策が異なるので、一概には言えません。
ですが、コミュニケーション設計において、意識すべきなのは、どの従業員も
- 自社はどんな使命を持っているのかを把握している
- 自社はどんなビジョンを目指しているのかを把握している
- 自社の経営方針を把握している
- ビジョンを実現するために自分は何をすべきかを把握している
- ビジョンを実現するために自分の部署は何をすべきかを把握している
- ビジョンを実現するために他の部署は何をすべきかを把握している
- ビジョンを実現するための各プロジェクトの進捗状況を把握している
- 自分の将来像を描くことができている
- 自分の仕事が顧客の幸せに直結していることを実感し、働きがいを感じている
- どの従業員にも敬意を払いつつも、立場を問わず、本音を話すことができている
という状態を作り出すべきです。
項目によっては
それは経営陣だけが把握しておけばいいことではないのか?
というものもあるかもしれませんが、それは違います。
一従業員に対してでも、経営情報をしっかりと開示しなければ、仕事の視座が上がらないからです。
全体のビジョンを知り、他部署の動きも知り、その全体像の中で、自分の仕事を位置付けるからこそ、質の高い仕事ができます。
そうしないと、仕事の指示を与えても、ただ言われたことだけを作業的にこなすようになったり、
この仕事は私の部署の仕事じゃない
と他部署との連携も取れなくなることになってしまいます。
このことも意識してコミュニケーションの設計はしていきましょう。
3.インナーブランディングの成功事例
では、最後にインナーブランディングに成功している企業の事例について紹介します。
3-1.株式会社コンカー
まず、最初のインナーブランディングの成功事例が「株式会社コンカー」です。
画像出典:https://design-inc.co.jp/
コンカーはクラウドによる出張・経費管理サービスを提供している会社で
- 働きがいのある会社ランキング3年連続で第1位を獲得
- 社員の98%が働きがいがあると解答
するなど、従業員が非常に働きがいを感じている会社です。
これは当然、業績面にも現れています。
本社のコンカーテクノロジーズは米国のシアトル郊外にあり、日本法人の設立は2010年なのですが、創業以来、年平均96%という驚異的な成長を遂げています。
外資系ソフトウェア企業の日本市場からの営業の貢献は近年3~5%が平均と言われている中で、コンカーは13%もの貢献を果たしており、2016年から2019年までの3年間で、売上は5.9倍に成長しました。
そして、国内の経費精算市場全体では40.3%、SaaS型(クラウド)では50.5%という圧倒的なシェアを獲得しています。
コンカーが提供している出張・経費管理サービスは、トヨタ自動車、野村証券、三井物産、ファーストリテイリング、KDDI、LIXIL、花王、キリン、任天堂など、日本の時価総額トップ100企業の内の46社が利用しています。
コンカーの業績を支えるのは、コンカーのミッションを実現するべく、自発的に働く優秀な社員がいるからです。
コンカーでは、社員にできるだけ経営者と同じ視座の高さを持ってもらうために、ミッションやビジョン、それらを実現するための具体的な戦略、リソース面での制約、経営の課題も透明にするなどして、経営情報を徹底的に開示しています。
視座が高いと、社員同士、部署間の協力も始まりますし、指示されなくても、ビジョンや戦略の実現に向けて自発的に仕事に取り組むようになります。
コンカーでは、従業員に経営情報を開示するために、四半期に一度、社員全員が参加する「オールハンズミーティング」を開催しています。
オールハンズミーティングでは
- トップからの経営情報の開示
- 各部門のリーダーが自分の部門の事業状況や戦略の発表
- 新規事業の責任者から進捗状況の発表
- プロジェクトの成功事例の報告
- 各タスクフォースからの報告
- 新入社員の紹介
- 昇進した社員の紹介
- 社員の結婚・出産報告
- トップセールスやトップディールの紹介
- 感謝の手紙を多く受け取った社員の紹介
- 従業員アワードの受賞者の発表
などを行うそうです。
また、その他にも、会社の課題を抽出し、具体的な打ち手を考えるオフサイトミーティングも年に1回実施しています。
会社の課題を経営陣だけが発見し、解決策を見出すという組織のスタイルは古いです。
というのも会社の課題解決を経営陣だけに依存させると、その会社の伸び代は、経営陣の才覚だけで決まってしまうからです。
本当に競争力のある会社は、従業員の知恵も引き出して、現場の改善に当たります。
従業員の才覚も組み合わせた方がより何倍もの価値を生み出すことができるからです。
また、このオフサイトミーティングを開催する前には、従業員に
- 会社が抱える課題は何か?
- それをどうすれば解決できると思うか?
というアンケートを取るそうです。
経営情報を開示し、事前アンケートを取ることで、従業員も会社の課題解決に対して、積極的に取り組んでくれるようになります。
その他にもフィードバックの文化も根付いており、
- 上司→部下
- 同僚→同僚
- 部下→上司
など
相手の問題点に気付いているのに、伝えないのは悪だ
という考え方が社内で浸透しており、何か問題点があるときなどは、立場問わず、相手の成長を願って、フィードバックをするそうです。
また、直接言いづらいこともあると思うので、アンケートも実施し、そこで相手の
- 優れているところ
- もっと良くするためには
という2点を伝えるという施策も行なっています。
こうして従業員がお互いに高め合う文化が根付いているからこそ、従業員はさらに成長し、コンカーの躍進につながっているのだと思います。
3-2.株式会社サイバーエージェント
では、次のインナーブランディングの成功事例は、株式会社サイバーエージェントです。
画像出典:https://markezine.jp/
サイバーエージェントは、インターネットの広告代理店として最大の売上を誇る会社です。
1998年に創業し、業績は右肩上がりで伸びています。
- 1999年:社員数20名で、売上は4億円
- 2000年:東証マザーズに上場し、220億円の資金を調達
- 2010年:社員数1000名を超え、売上は940億円
- 2020年:社員数5500名を超え、売上は4785億円
この業績が右肩上がりが続いている背景にも、インナーブランディングがあります。
2000年頃まで、サイバーエージェントは、社内の従業員に目を向けるというよりも、市場や顧客などの外部に目を向け、どれだけ業績をあげたり、自社の商品・サービスを多くの人に広めていくのかということを考えてきました。
結果として、創業3年目で東証マザーズに上場します。
ですが、その直後、ITバブルが崩壊し、インターネット関連企業は世間からのバッシングに遭い、従業員がどんどん辞めていくという状況になったそうです。
藤田社長は、当時の時価で総額7億円の株の無償配布をするなどして、従業員の退職を食い止めようとしますが、食い止まるどころか、加速していき、最終的には退職率が30%を超えたそうです。
今の日本の平均の退職率の倍以上の水準です。
この状況を放置しておくのはマズイとなり、経営陣は社内の改革に乗り出します。
なぜ、これだけ辞めていくのかを追及していったら
- ビジョンや価値観が浸透していない
- 社員同士の繋がりが希薄
- 個人の尊厳を大切にして、一人一人を大切な人材として認知してなかった
というようなことが原因だと分かったそうです。
そして役員は一泊二日の合宿を行い、
- 現場の声を拾う会議の開催
- ビジョンを一つに絞る
- 価値観の明文化
- 社内報の強化
- 社員総会および社員表彰の強化
- 部活動支援制度の開始
などの改革を行っていきました。
まず、最初の「現場の声を拾う会議」について。
これはバージョンアップ委員会とも呼ばれ
- 役員
- 副社長
- 人事部長
- 営業部長
- 入社3・4年目の若手
を加えた10名で、隔週火曜日の朝7時半〜9時の時間帯で実施する会議のことです。
議題としては
- 今年の新卒の状況
- 各部署や現場の状況
- 社員総会について
など、今どんなことが起きているのか、現場の実態をよく把握できるものが挙げられます。
メンバーは、年に一度、現場で活躍している社員を1~3人を入れ替えます。
社員を巻き込むことで、現場に向けた経営陣のメッセージが伝わりやすくなり、新制度を作る時も現場を巻き込むことができるようになりました。
次の「ビジョンを一つに絞る」について。
サイバーエージェントには、元々
- フリー、フラット、フェアな社会を作ろう
- 時価総額10兆円の企業になる
- 最高のインターネットマーケティングカンパニーになる
などのビジョンが複数ありました。
ですが、ビジョンは事業の判断基準になるため、それが複数あることによって会議をしても意見が集約しないことが多々あったそうです。
なので、ビジョンは
21世紀を代表する会社を創る
の一つに絞りました。
また、このビジョンを実現するための価値観、行動規範も
したり顔の評論家よりも一生懸命な行動者の方があるべきサイバーエージェントの社員の姿である
などのように明文化して、クレドとして社員全員が持ち運べるようにしました。
これでサイバーエージェントの社員として、仕事にどう向き合うべきかという価値観が浸透するようになります。
また、「Cybar」というWEB上で社内報も立ち上げました。
社長含めて、役員全員がこのウェブサイト内でブログを執筆するので、従業員に経営陣の考え方を浸透させることができます。
また「私の履歴書」というコンテンツでは、管理職の社員が自分の人生の生い立ちを書くというモノもあり、それがきっかけで社内コミュニケーションが促進されたりもしています。
また、社員総会および社員表彰を強化することで、個人の活躍を認知して、成し遂げたことを褒める文化を作りました。
社員総会は、半年に一回、ホテルの宴会場を借り切って、実施します。
表彰されるのは毎回10人で、現場と事業部長、それに人事部が推薦し、最終的に役員が選びます。
選定基準は
仕事ができるだけでなく、人望もあって、みんなから信頼されている人
です。
単に業績などの数値で評価できる部分以外も重視していることから様々な部署の社員が表彰されるようになっています。
それ以外にも「締め会」と呼ばれる各部署ごとに、毎月、最も仕事を頑張って成果を出した人がMVPとして表彰される制度もあります。
また、部活動支援制度というものあります。
部活動は、役員が発足を承認すると活動をスタートでき、部員一人当たり月1500円が支給されます。
部活動に参加すれば、部署を横断した組織の繋がりができるので、もし悩みがあれば、他部署の上司に相談できます。
これは退職率の低減に寄与していて
直属の上司以外にも相談できる窓口が欲しい
という要望が社員からあって、これが形になったものです。
サイバーエージェントは2020年で上場して20年です。
好調な業績が続く背景には、どの企業も、このような社内の改革があります。
4.インナーブランディングに取り組もうと思っている全ての方へ
今回の記事ではインナーブランディングについての基礎知識・方法・事例などを紹介してきました。
会社組織を経営する場合、このインナーブランディングを避けて通ることはできません。
どれだけ業績が拡大しても、インナーブランディングができていないばかりに、内部崩壊を起こして倒産していった企業もたくさんあります。
また、ここまで読んで頂いたあなたにだけ、「高単価でも競合が増えても選ばれ続けるNo.1ブランドの作り方」について解説した「WEBセミナー」を無料でプレゼントしています。
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