ブランドエクイティとは?意味や構成要素や高める方法について徹底解説

                       

ブランドコンサルタント・中江 翔吾

ブランドエクイティ

「ブランドエクイティって何?」
「ブランドエクイティが高い企業の事例を知りたい!」
「ブランドエクイティの高め方を知りたい!」

ブランドエクイティとは

ブランドが所有する無形の資産価値

のことであり、その企業のブランド力を表す重要な指標です。

ブランディングとは「ブランド力」を高めていくことに他ならないのですが、この抽象的な「ブランド力とは何か?」を明確に定義した概念がブランドエクイティです。

ブランドエクイティについて正確に理解し、ブランド力を高めていくことができれば

  • 高単価でも競合が増えても選ばれ続ける
  • 新規集客に困らなくなる
  • 競合他社と明確な差別化ができるようになる
  • 新規顧客がリピートし続けてくれる
  • 口コミが広がり、新規顧客の獲得コストが下がる

など、様々なメリットを享受できます。

中江 翔吾
中江 翔吾
というわけで、こんにちは!ブランドコンサルタントの中江です。

今回の記事では、そんなブランドエクイティについてお伝えしていきたいと思います。

この記事を読んでいただければ、ブランドエクイティに関する基礎的な知識や具体的な事例だけでなく、具体的にどうブランドエクイティを高めていけばいいのかまでが分かるようになっています。

ぜひ、最後までお読みください!


1.ブランドエクイティとは

まずは「ブランドエクイティとは何か」について解説していきます。

1-1.ブランドエクイティの意味

ブランドエクイティは

ブランドが所有する無形の資産価値

のことです。

この概念はアメリカの経営学者のデイヴィッド・アーカー氏が提唱しました。

デイヴィッド・アーカー
画像出典:https://marketing-campus.jp/

「ブランド」には、目に見えない不思議な力があります。

例えば、その一つが、一度、そのブランドのファンとなると、無条件でそのブランドの商品・サービスを選択するというものがあります。

私自身にとっての「Apple」というブランドはまさにそうです。

初めて自分用のパソコンを持ったのは、大学生の時で「マイクロソフトのWindows」でしたが、アップデートの度に動きが遅くなったり、覚えることも多く非常に使いづらいなという印象がありました。

そこで、本格的にグラフィックデザインやWEBデザインを学ぶというタイミングでパソコンを「MacBook Pro」に買い換えました。

MAC BOOK

当時の私は、実際に使用してみて、その使い心地の良さに驚きました。

スピードは遅くならないですし、操作方法もシンプルで、数年使っていても、不具合もなく、本当に使い心地が良かったのです。

そうして、Apple製品の虜になった私は、スマートフォンもiPhoneに変え、タブレットもiPadに変え、その後、Apple以外の選択肢を見なくなりました。

「Apple」というブランドを全面的に信用しているからです。

恐らく、今後、どれだけ素晴らしいPCやスマートフォンが他の企業が出したとしても、私はその情報を見ないでしょうし、「Apple」を選択し続けると思います。

人が何かを購入する際には、商品・サービスの価値を比較し、自分にとって価値が高いものを選択する訳ですが、それは単純に商品単体の数値化できる価値を推し量った上で選んでいる訳ではないのです。

ブランドが所有する目に見えない無形の資産価値も合わせた価値の総量を測っているのです。

私が「マイクロソフト」ではなく「Apple」を選択するのは、「Apple」というブランドに「無形の資産価値」を見出すからです。

だから、たとえ両社のブランドでPCのスペックが同じものが出たとしても、私にとってPCの価値の総量としては、Appleの方が高いのです。

ブランドエクイティ

注意しておきたいのは、価値というのは絶対的なものではなく、相対的なもので、人によって価値の感じ方は異なるということです。

例えば、私と逆のパターンで、Macを使っていたけれど、意外と会社では使いにくかったり、高かった割に、不具合が頻発して使い物にならなかったという人は、Windowsの方が「無形の資産価値」は高くなり、Macではなく、Windowsの方を選択するでしょう。

いずれにせよ、この目に見えない無形の資産価値が「ブランドエクイティ」です。

そして、ブランドエクイティは、ブランドが提供する顧客体験によって形成され、商品・サービスの価値を増やすか、減少させます。

重要なのは、ブランドエクイティは、ブランドにとってプラスの資産価値をもたらす場合もあれば、マイナスの資産価値(=負債)をもたらす場合もあるということです。

例えば、2008年に、倒産してしまった高級料亭の船場吉兆なんかがそうです。

大阪の阪急百貨店や、福岡の博多大丸とも提携するほど、経営は順調でしたが、過剰な採算重視の方針が仇となり

  • 消費・賞味期限切れの菓子・惣菜の販売
  • 地鶏やみそ漬けの産地偽装
  • 客の食べ残しの再提供

などを行なっていたことが発覚し、これが全国的なニュースとなり、一気に経営が傾きました。

特に、高級料亭が、客の食べ残しの再提供を10年以上前から常習的にやっていた訳ですから、その後、どれだけ料理の質を改善しても、お客さんを集めていくことは不可能でしょう。

客の食べ残しを再提供していた

という顧客体験があまりにも大きな負債となり、ブランドや商品・サービスの価値を極端に下げてしまったのです。

とにかく、ブランドエクイティが負債として働く場合もあるということです。

1-2.ブランドエクイティの構成要素

また、デイヴィッド・アーカー氏によると、ブランドエクイティは、

  • 名前の認知
  • 知覚品質
  • ブランドロイヤルティ
  • ブランドの連想
  • 他の所有権のあるブランド資産

の5つの構成要素によって形成されます。

1-2-1.名前の認知について

まず、1つ目のブランドエクイティの構成要素が「名前の認知」です。

これは文字通りですが、ブランドの名前が認知されているかという度合いのことです。

たとえ、iPhoneと同じスペックを持つスマートフォンが市場にあったとしても、見込み客がそのブランドの名前を知らなければ、そもそも購入の選択肢にも入りません。

名前の認知によるブランドエクイティの差

また「名前を知らない」というだけで

本当にこの商品・サービスを利用しても大丈夫なのか?

という購入不安が生まれ、商品・サービスの選択の際には不利になります。

なので、名前の認知というのは、ブランドエクイティの一要素となります。

1-2-2.知覚品質

次に、2つ目のブランドエクイティの構成要素が「知覚品質」です。

同じ価格の商品・サービスで、品質が高いものと品質が低いものが並んでいれば、当然ですが、「品質が高い」ものが選ばれていきます。

それくらい品質は、商品・サービスの購入の際に非常に決定的な役割を果たしますが、この品質は

  • 実体品質
  • 知覚品質

という2種類があるということは覚えておかなくてはいけません。

実体品質とは、商品・サービスそのものの品質のことで、実際にその商品・サービスを購入することで得られる顧客体験によって形成される品質のことです。

一方で、知覚品質というのは、購入前に知覚されるイメージとしての品質のことです。

このイメージとしての品質は、ウェブサイト、広告といった宣伝活動を通じて形成されます。

ブランドイメージ

その商品・サービスを購入したことがない見込み客は、購入前に実際の品質を確かめることはできないので、この知覚品質を通じて商品・サービスの選択をします。

あくまでもイメージとしての品質なので、実体品質は関係ありません。

なので、よく起こりうるのは

商品・サービスの実体品質では競合他社に勝っているはずなのに、なぜか選ばれない

という事態です。

知覚品質によるブランドエクイティ

これは、競合他社の方が宣伝広告が上手で知覚品質が高く、品質の総合計として負けているということが考えられます。

なので、知覚品質も、ブランドエクイティの一要素となります。

1-2-3.ブランドロイヤルティ

続いてのブランドエクイティの要素が「ブランドロイヤルティ」です。

ブランドロイヤルティとは、既存顧客の忠誠度のことでこれが高いほど

  • リピート
  • 口コミ

に繋がりやすくなります。

ブランドロイヤルティが高いことは、それだけ商品選択の際にアドバンテージになります。

例えば、私のようにMacのノートパソコンで、素晴らしい顧客体験をしたユーザーは、スマートフォンを新たに購入する際に、たとえ、同等のスペックのブランドがあったとしても

iPhoneの方が価値のあるものとして目に映ります。

ブランドロイヤルティによるブランドエクイティ

なので、ブランドロイヤルティもブランドエクイティの一要素となります。

1-2-4.ブランドの連想

続いてのブランドエクイティの構成要素が「ブランドの連想」です。

ブランドの連想というのは、ブランドに対するイメージのことで、これは

  • 宣伝広告
  • 商品・サービスの体験

などを通じて、形成されます。

ブランドのイメージ

ブランドイメージはブランドによって異なり、消費者は自分の価値観に基づいて商品選択を行います。

なので、ブランドイメージが、見込み客の価値観に沿ったものであれば、それだけ商品選択の際に有利に働きます。

ブランドの連想

なので、ブランドの連想もブランドエクイティの一要素となります。

1-2-5.他の所有権のあるブランドの無形資産

そして、最後のブランドエクイティの要素が「他の所有権のあるブランドの無形資産」です。

これはこれまでに挙げた4つ以外にブランドが所有する無形資産のことで、

  • 特許
  • 商標権や著作権
  • 独自技術やノウハウ
  • 取引先や顧客との関係性

といったものがこれにあたります。

例えば、特許があるだけで、そのブランドの独自技術やノウハウは法律的に保護されるため、それだけ市場における希少価値は守られるため、ブランドの資産価値はアップし、商品選択の際に有利に働きます。

例えば、iPhoneであれば「スライド式ロック解除」が特許として登録されています。

その他の無形資産によるブランドエクイティ

なので、これもブランドエクイティの一要素となります。

1-3.ブランドエクイティを高めるメリット

ブランドエクイティを高めるメリットとは何か?

デイヴィッドアーカー氏は、著書『ブランド・エクイティ戦略』の中で、ブランドエクイティを高めるメリットを

  • 競争優位性を与える
  • 顧客の購買決定の確信に有利な影響を与える
  • プレミアムの付いた価格決定ができ、利益率がアップする
  • 新しい顧客を惹きつけ、古い顧客を再び惹きつける
  • ブランドの拡張を通じて、成長させる舞台を与えることができる

と定めています。

1-3-1.競争優位性を与える

まず、1つ目のメリットがブランドに競争優位性を与えるということです。

先ほど見てきたように、見込み客は「商品・サービス単体の価値」を比較しているわけではなく、ブランドエクイティ(無形の資産価値)も含めた上で、購入を決断します。

そのため、市場で競争優位性を獲得するには、商品・サービス単体の価値を向上させるだけでなく、ブランドエクイティを向上させていくことが非常に重要となります。

ブランドエクイティ

実際に、商品単体の価値がほとんど同じであれば、ブランドエクイティが高い方が市場では選ばれます。

1-3-2.顧客の購買決定の確信に有利な影響を与える

2つ目のメリットが「顧客の購買決定の確信に有利な影響を与える」です。

見込み客は

  • 価格
  • 機能
  • 特徴
  • 耐久性
  • デザイン

など、様々な観点から商品・サービスをリサーチし、比較したとしても、

どちらにすれば良いんだろう

と迷うことは多々あります。

特に、今の時代は、機能や性能といった機能的価値も、デザインといった感情的価値も非常に高いものが市場には出揃っているため、購買決定は迷いやすい傾向にあります。

そんな時に、最後の決め手になるのは

  • 名前の認知
  • 知覚品質
  • ブランドロイヤルティ
  • ブランドの連想
  • 他の所有権のあるブランド資産

というブランドエクイティです。

カメラを購入する際に、2つのブランドで、どちらを選ぶか迷ったとします。

スペックも、価格も、デザイン的な好みも同じの場合、ブランドエクイティを踏まえた上で購入の決定がなされます。

例えば、お店でカメラを購入するまでに、購入を検討している2つのカメラブランドのうちの1つの方のテレビCMを何度も見かけたとします。

テレビCMを何度も見るということは「名前の認知」に繋がり、それが安心感へと繋がり、購入の可能性がグッと高まります。

やはり一度も名前を聞いたことがないブランドよりも、何度も目にする、耳にするブランドの方が安心感があります。

また、そのテレビCMに出演しているのが、自分が好きな女性芸能人であれば、より親近感を覚えます。

これは「他の所有権のあるブランド資産」の一例の「関係性(心理的距離)」です。

上記の場合、おそらく購入はそのCMを展開しているカメラブランドに決まります。

1-3-3.プレミアムの付いた価格決定ができ、利益率がアップする

3つ目のメリットが「プレミアムの付いた価格決定ができ、利益率がアップする」です。

ブランドエクイティが高いということは、市場におけるそのブランドの価値が高く、他に替えが効かないという状態になっていることを意味します。

見込み客が

他に変えが効かない

と判断するのであれば、価格が相場より高くても選ばれます。

AppleのiPhoneなんかはまさにそうです。

世界のスマートフォンの平均価格は「約36,940円」ですが、iPhone13の価格は「122,800円〜」で、約4倍ほど高いです。

それでも多くのユーザーから支持されて

世界のスマートフォン市場の売上高の32%・全利益の66%をiPhoneだけで占めている

という調査結果(調査会社Counterpoint Technology Market Researchの2019年の調査)も出ています。

相場より高い価格でも選ばれるということはそれだけ利益率がアップするということであり、経営にも余裕が出てきます。

1-3-4.新しい顧客を惹きつけ、古い顧客を再び惹きつける

4つ目のメリットが「新しい顧客を惹きつけ、古い顧客を再び惹きつける」というものです。

まず、ブランドエクイティが高まっていくと、その市場において、相対的にブランドの価値が高いという状態になります。

なので、ブランドを初めて認知をした新規の見込み客の目から見ても、魅力的なブランドに映るため、新規購入に繋がる可能性が非常に高くなります。

また、このことは既存顧客にも当てはまります。

ブランドエクイティが高いということは、既存顧客にとってそのブランドが特別な存在になっているということです。

例えば、私にとってのAppleがまさにそうです。

最初は、AppleのMac Book Proを購入したことから始まりましたが、この製品体験が非常に良かったので、そこから

  • iPhone
  • iPad
  • iMac

と次々に購入していきました。

Apple製品

その人にとってブランドが特別な存在になれば、その信頼感から、何か新しい商品がリリースされる度に、購入してもらえる可能性が高まります。

1-3-5.ブランドの拡張を通じて、成長させる舞台を与えることができる

5つ目のメリットが「ブランドの拡張を通じて、成長させる舞台を与えることができる」です。

ブランドエクイティが高くなっていくと

  • 新規の見込み客から選ばれる
  • 既存顧客からリピートやクチコミが起きる
  • 相場よりも高い価格でも選ばれる

という可能性が非常に高くなり、事業が非常に大きく成長し、ブランド自体を拡張させることができます。

例えば、調理器具ブランドの「バーミキュラ」なんかがそうです。

バーミキュラ

バーミキュラというブランドは、元々は、2010年に発売を開始した1つの鍋からスタートしています。

当時の技術では実現不可能とされていた「気密性が高い、鋳物のホーロー加工した鍋」を苦節3年の中で生み出し、素材の栄養素も旨味も逃さない、圧倒的に商品力が高い鍋を完成させました。

価格は3万円で、普通の鍋が数千円で買えることを考えると、価格帯としては相場よりも高い部類ですが、累計で40万個以上の大ヒットを記録しました。

このヒットの要因は商品力の高さだけでなく、

  • 名前の認知
  • 知覚品質
  • ブランドロイヤルティ
  • ブランドの連想
  • 他の所有権のあるブランド資産

というブランドエクイティ自体も高かったことも大きく関わっています。

最初は、1つの鍋からスタートしましたが、そこから

手料理と、生きよう。

というブランドスローガンの元に

  • 炊飯器
  • フライパン
  • その他のキッチンアイテム
  • 食品

など、手料理の素晴らしさを日常で実感できるアイテムを増やし、右肩上がりで成長を続けています。

2.ブランドエクイティが高い企業の事例

では、続いてはブランドエクイティが高い企業の事例について紹介していきます。

2-1.テクニカン

最初の事例は食品用冷凍装置を製造・販売する「テクニカン」です。

凍眠
画像出典:https://www.technican.co.jp/

ブランドエクイティという観点からいうと、テクニカンは「他の所有権のあるブランドの無形資産」の

  • 独自技術
  • 特許

を武器にこの10年で、売上を6倍に伸ばした企業です。

テクニカンの主力商品は「凍眠」という食品用冷凍装置で、これには「液体凍結」という独自技術が使われています。

一度凍らせた食材や料理は味が落ちてしまう

というのは誰もが経験上知っていることだと思います。

例えば、マグロが一番美味しいのは、漁で獲れたそのタイミングであって、一度、冷凍してから遠方へ配送して、自宅で解凍してから食べるタイミングではありません。

では、なぜ、食材や料理は一度凍らせてしまうと味が落ちるのか?

これは、通常、食品や食材を凍らせる際に用いられるのは、冷たい空気を使って凍らせるという「空気凍結」だからです。

この「空気凍結」は食品や食材をじっくり凍らせていくため、細胞に含まれる水分が膨張してから凍るため、以下の図のように、細胞膜を突き破ってしまいます。

空気凍結のリスク
画像出典:https://www.technican.co.jp/

凍った水分が細胞膜を突き破ると、解凍時に、そこから旨味や栄養素などが流れ落ちてしまって、食材や食品の品質が落ちてしまうのです。

この問題を解決したのが「液体凍結」という独自技術です。

液体凍結というのは文字通り、液体で凍らせていく技術です。

この技術で、食品や食材を凍らせていくと、非常にスピーディーに凍るため、細胞内での水分の膨張率が低く、細胞の膜を突き破らないため、解凍した際に、旨味や栄養素などが流れ落ちることがないので、冷凍前と同等の食材・食品の質を再現できます。

液体凍結のメリット
画像出典:https://www.technican.co.jp/

その冷凍技術の凄さは一流の料理人も認めるほどで、調理してからすぐに食べる料理と、一度、液体凍結で凍らせて、解凍してから食べる料理の差がほとんどわからないそうです。

味や鮮度が落ちないのであれば、防腐剤などを入れて、急いで食品を輸送する必要がなくなるので、輸送コストも安くなります。

テクニカンは14の国と地域でこの「液体凍結」という独自技術の特許を取得しており、市場において絶対的な地位を確立しています。

2-2.ラクサス

続いての事例は「ラクサス」です。

ラクサスは、月額6800円で、本物のブランドバックを返却期限なしで、自由にレンタル・交換ができるというサブスクリプションのサービスを提供しています。

ラクサス
画像出典:https://renta-man.net/

ブランドエクイティの観点から、このラクサスが最も優れているのは「ブランドロイヤルティ」です。

既存顧客の継続率は95%で、9ヶ月以上継続している優良顧客が98%という驚異的な数字を叩き出しています。

ラクサスでレンタルできるのは、エルメスやシャネルやルイヴィトンといった1点あたり数十万円以上する、高級なブランド品ばかりです。

そして、そのブランド品の全てを専門の鑑定士がチェックしているので、全て本物のブランド品で、最初の3ヶ月間は通常料金の半額で利用することができます。

また、専用のアプリ内では、それぞれのブランドバックに似合うファッションコーディネートも掲載されているため、実際に3ヶ月以内に

ブランドバッグを持ったことで、出掛けるときに高揚した気持ちを味わう

という顧客が望む体験が確実にできるように設計されていることが、継続率の高さに繋がっています。

2-3.楽農ファームたけした

続いての事例は、苺農家の「楽農ファームたけした」です。

苺というと、一般的にスーパーでは安いものだと300円から、高いもので700円ほどで販売されていると思います。

そんな価格帯のものが市場の多数を占める中で、楽農ファームたけしたの「苺」は、単価5000円以上で販売しており、これが毎月2000パックも売れています。

楽農ファームたけしたの苺
画像出典:https://www.happy15.jp/

楽農ファームたけしたがある福岡の大川市の苺農家の平均的な年商が630万円であることを考えると、年商1億2000万円を達成している楽農ファームたけしたの業績は驚異的で、まさにブランドエクイティが高い事例です。

このブランドエクイティが高い要因は様々ありますが、まずは「完熟あまおう」という圧倒的な商品力の高さにあります。

一般的に市場に出回る苺は少し硬めの「早熟」のものがほとんどです。

というのも「完熟」の状態だと、柔らかくて、繊細なので、流通や配送の流れの中でトラブルが起きやすいからです。

ですが、苺が最も美味しいのは「完熟」した状態です。

楽農ファームたけしたは「ひとくちの感動体験」を顧客に届けるために、この流通や配送の問題を10年間かけて解決し、朝摘みした完熟状態の苺を配送する仕組みを整えました。

これはブランドエクイティの「他の所有権のあるブランドの無形資産」の中の「独自技術やノウハウ」に該当します。

ただし、楽農ファームたけしたが売れているのは、商品力が高いことが直接的な要因ではありません。

実際に世の中には、商品力が高くてもほとんど売れていないものはたくさんあるからです。

楽農ファームたけしたの苺が売れている要因は「知覚品質」の高さにあります。

それは楽農ファームたけしたのホームページを見ればわかります。

楽農ファームたけしたのHP 楽農ファームたけしたのHP
画像出典:https://www.happy15.jp/

これを見れば、一度も楽農ファームたけしたの苺を食べたことがない人でも

この苺には5000円以上の価値がある

と思ってしまうと思います。

ホームページ上ではビジュアルだけでなく、文章からも苺の価値が伝わるような設計がされており、この表現があるからこそ、相場より高い価格でも毎月2000ケース売れていくのです。

3.ブランドエクイティの測り方

では、続いてはブランドエクイティの測り方について解説をしていきます。

3-1.財務情報を使用した測定方法

まず一つ目の方法が、財務情報を使用した測定方法です。

財務情報におけるブランドエクイティは「超過収益力」にあたります。

超過収益力は、目に見えない資産で、定量的に数値化されていない、将来的な企業の収益を生み出す源泉となる、企業価値のことで、具体的には

  • 人材
  • ブランドロイヤルティ
  • 認知度
  • 独自の技術・ノウハウ

などが評価されます。

M&Aをする際に、企業の価値を評価することになりますが、その際に評価されるのは単純に数値化される資産や負債だけではありません。

この目に見えない企業価値も合わせて考慮されます。

この超過収益力の算出方法は大きく分けて

  • コストアプローチ:ブランドエクイティを再構築する際にかかる費用を元に計算
  • インカムアプローチ:ブランドエクイティが将来生み出すキャッシュフローや利益を元に計算
  • マーケットアプローチ:類似するM &Aの事例や相場を元に計算

の3つの方法があります。

具体的に知りたいという方は「超過収益力とは?計算方法やM&Aにおけるのれんとの関係をわかりやすく解説」のサイトの記事で詳しく解説がされているので、参考にしてみてください。

3-2.NPSを使用した測定方法

続いては「NPSを使用した測定方法」について。

NPSとは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略称のことで、ブランドロイヤルティを計測するための指標です。

NPSは

あなたはこの商品・サービスをどの程度、友人や同僚に勧めますか?

という質問を既存顧客に行い、「0~10」の11段階で回答して計測します。

NPS

具体的なNPSの数値の算出方法は以下の通りです。

例えば、既存顧客の100人にアンケートを取り、

  • 30人:0~6点(批判者)
  • 30人:7~8点(中立者)
  • 40人:9~10点(推奨者)

というアンケート結果だったとします。

この場合のNPSは「40%(推奨者)−30%(批判者)」なので「+10%」となります。

NPSの平均値は業界によって異なり、具体的な業界の平均数値などは、NTTコムオンラインの「NPS業界別ランキング&アワード」などで紹介されています。

NPS業界別ランキング

あくまでもこの調査で測れるのは、現時点でのブランドロイヤルティのみなので、他の計測方法と複合的に利用していくのが良いでしょう。

3-3.ブランドリプレイス費用から概算する測定方法

最後に「ブランドリプレイス費用から概算する測定方法」について。

これは今のブランドが全く認知されていない商圏外で商品・サービスを展開して、0から今のブランドのステージにまでブランド力を高めていくには、どれだけの費用がかかるのかを計算するというものです。

具体的にブランド力を高めていく費用としては

  • ブランドコンセプトの作成
  • ウェブサイトの構築
  • 認知度の獲得
  • 顧客ロイヤルティを高める
  • スタッフ育成

などが挙げられます。

これらの費用は正確に算出するのは難しいので、あくまでも概算として出すのが一般的です。

4.ブランドエクイティの高め方

では、続いては、ブランドエクイティの高め方について解説をしていきたいと思います。

4-1.ブランドエクイティピラミッドとは

ブランドエクイティが高い状態をどのようにして実現すれば良いか?

そのことを端的に示す「ブランドエクイティピラミッド」というフレームワークがあります。

この概念はダートマス大学タック経営大学院のケラー教授によって提唱されました。

ケヴィンケラー
画像出典:https://wmsj.tokyo/

このブランドエクイティピラミッドは対象者とブランドの関係性を示す概念で

  • リレーションシップ
  • レスポンス
  • ミーニング
  • アイデンティフィケーション

という4つのステージがあり、ピラミッドの上部に行くほど、ブランドエクイティが高い状態になります。

ブランドエクイティピラミッド

では、どのようにして、上のステージに上り詰めることができるのか?

今回はこのフレームワークに基づき、ブランドエクイティの高め方について解説していきます。

4-2.アイデンティフィケーション

まず、最初のステージは「アイデンティフィケーション」のステージです。

このステージはブランドを「認知・認識(Sailence)」してもらうことで到達することができます。

これはブランドとしてまず、最初に到達しないといけないステージです。

ブランドエクイティピラミッド

というのも、ブランドの存在を「認知・認識」されていなければ、見込み客の購入の選択肢にすら入らないからです。

ブランドエクイティの構成要素に「名前の認知」という要素がありましたが、それがこれに当たります。

売上が思うように上がっていないという原因は様々ありますが、その際に

見込み客にどのようにブランドの存在を認知させるのか?

という導線の設計を見直すことは非常に重要です。

この部分を考えずに、いきなり無名のブランドの認知が広がっていくことはないからです。

具体的なブランドの認知の拡大方法について

  • WEBメディア:ブログ・SNS
  • 広告:リスティング広告、SNS広告、チラシ、DMなど
  • PR:メディア掲載、出版

の3つの手法があり、このことについては「ブランドマーケティングとは?成功事例から実践ステップまでを徹底解説」で詳しく解説しているので、興味がある方はこちらの記事をご覧ください。

ブランドマーケティングとは?成功事例から実践ステップまでを徹底解説
ブランドマーケティングとは?成功事例から実践ステップまでを徹底解説 「ブランドマーケティングって何?マーケティングとの違いは?」 「ブランドマーケティングの成功事例を知りたい!」 「ブランドマーケティングの実践方法を知りたい!」 ブランドマーケティングは、これから時代において、売上を上げ […]

4-3.ミーニング

そして、その次のステージが「ミーニング」です。

このステージはブランドの存在を認知されるだけでなく「市場におけるブランドの価値(特徴・ポジション)」が理解されていることで到達することができます。

ブランドエクイティピラミッド

一口にブランドの存在が「認知」されているといっても、ただブランド名だけが知られているのか、ブランド名と共にそのブランドの特徴や市場における優位性が理解されているのかでは意味合いが変わってきます。

当然ですが、市場において、そのブランドだけが持つ価値を理解されるからこそ、その市場における競争優位性が高まり、見込み客に選ばれる可能性というのは高くなります。

ブランドの価値は

  • Performance:性能・特徴
  • Imagery:印象・イメージ

という理性的な側面と感情的な側面の2種類で構成されていると捉えると良いと思います。

ブランドエクイティの構成要素でいうと「ブランドの連想」や「知覚品質」が大きく関わっています。

また、このステージに到達するために設計しないといけないのは

  • ブランドコンセプト
  • ブランドイメージ

の2つです。

ブランドコンセプトの作成

ブランドコンセプトとは

どんなブランドなのか?

というブランドの価値の方向性を一言で定義した概念になります。

例えば、一口に「ノートパソコン」といっても

  • パソコン初心者の人が簡単に使いこなせるノートパソコン
  • PCゲームをやることに特化したノートパソコン
  • デザイン性が高く、お洒落なノートパソコン
  • 高性能にも関わらず、リーズナブルなノートパソコン
  • 24時間365日電話サポートがあるサポートが充実しているノートパソコン

など、定義できる価値の方向性は様々あります。

今の時代、どんな業種業界であっても、自社と競合する様々なブランドがあり、見込み客は全てのブランドを詳細に調べ上げて、比較検討するということは行いません。

購入の選択肢として入るのは「どんなブランドなのか?」という価値の方向性が、瞬時に理解でき、印象に残るブランドだけです。

パソコン初心者の人から使えて、様々カスタマイズができて、PCゲームをやる上でも便利で、色々と高性能で、国産で、意外とリーズナブルで、サポートも充実しているノートパソコン

というように価値の方向性を瞬時に理解できず、特徴が掴めないものに関しては、印象に残らないので、選ばれる可能性というのは低くなります。

だからこそ、ブランドコンセプトを設計し、

どんなブランドだと理解されたいのか?

を明確に定める必要があります。

このブランドコンセプトの作成方法については「価値が伝わる魅力的なブランドコンセプトとは?作り方と事例も徹底解説」という記事で詳しく解説しているので、興味がある方はこちらの記事も併せてご覧ください。

価値が伝わる魅力的なブランドコンセプトとは?作り方と事例も徹底解説
価値が伝わる魅力的なブランドコンセプトとは?作り方と事例も徹底解説 「ブランドコンセプトって何?」 「ブランドコンセプトの事例が知りたい!」 「ブランドコンセプトの具体的な作り方が知りたい!」 ブランドコンセプトは、業種・業界問わず、ブランディングを実践していく上でのキーワードです。 こ […]

ブランドイメージの設計

次にブランドイメージの設計について。

ブランドコンセプトを作成して、ブランドの価値の方向性を定めたら、あとはその価値の方向性を理解する仕組みを作る必要があります。

ブランドコンセプトは

暮らしをかえる鍋(バーミキュラ)

というような言語表現に落とし込むだけなので、この表現を作ったからといって、即座にブランドの価値が伝わるようになるわけではありません。

このブランドコンセプトを

  • ロゴ
  • WEBサイト
  • パッケージ
  • SNS
  • 広告
  • 店舗(外観・内観)

などに反映していき、見込み客がブランドを認知した時にブランドコンセプトを理解できるようにする必要があります。

このステップがブランドイメージの設計です。

ブランドイメージとは、ブランドを認知したときに頭の中で形成されるブランドに対する印象のことです。

ブランドイメージ
画像出典:https://www.nikon-image.com/

具体的なブランドイメージの設計については「ブランドイメージとは?ブランド価値を向上させる戦略と事例を徹底解説」で、詳しく解説しているので、興味がある方はこちらの記事をご覧ください。

ブランドイメージとは?ブランド価値を向上させる戦略と事例を徹底解説
ブランドイメージとは?ブランド価値を向上させる戦略と事例を徹底解説 「ブランドイメージって何?」 「ブランドイメージは大切?」 「ブランドイメージを高め方を知りたい!」 ブランドイメージは、事業の売上を決定づける非常に重要な要素です。 どれだけ実体として、商品・サービス力が高くても、ブラ […]

4-4.レスポンス

そしてその次のステージが「レスポンス」というステージです。

このステージには、実際に対象者がそのブランドの商品・サービスを体感し、そのブランドを「評価」することで到達します。

ブランドエクイティピラミッド

この「評価」にも

  • 機能的評価:性能・機能
  • 感情的評価:コンセプト、デザイン、ストーリー

という2種類の評価軸があります。

機能的評価はその商品・サービスの品質や性能に対する評価のことで、感情的評価とはその商品・サービスに対する「好き・嫌い」「安心・信頼できる」といった感性的な評価のことです。

ターゲット顧客から高い評価を受けるには、商品・サービスそのものの実力である「実体品質」を高めていくことが重要になってきます。

4-5.リレーションシップ

そして、最後のステージが「リレーションシップ」です。

このステージはブランドロイヤルティが高まり、ブランドに対して「共鳴・愛着」が生まれることで到達することができます。

ブランドエクイティピラミッド

このステージに到達すると

  • リピート
  • 口コミ

というアクションが積極的に起こるようになります。

ブランドに対して「共鳴・愛着」を起こすために、重要なのは「ブランドロイヤルティ」を高めていくことです。

ブランドロイヤルティの高めるポイントは、顧客に対して「ブランドプロミス」を設計し、それを何があっても必ず守ることです。

ブランドプロミスとは、ブランドが顧客に対して行う約束のことです。

例えば、苺農家が

本物の完熟あまおうで、一口の感動体験を届けます

というブランドプロミスを作成するのであれば、一口食べただけで、誰もが思わず

こんなに美味しい苺、食べたことがない

というような感動するような苺を育て届ける必要があります。

このようなブランドプロミスを明確に宣言しているブランドはどの業界でもまだまだ少ないです。

ですが、このブランドプロミスを宣言し、それを何があっても守るからこそ、既存顧客からの信頼を勝ち取ることができます。

このブランドは

  • 信頼できる
  • 信用できる
  • 安心できる
  • 間違いない

と既存顧客から思われることは何者にも変え難い競争優位性を生みます。

ブランドに対する絶対的な信頼は競合他社との比較検討すら終わらせます。

このブランドロイヤルティの高め方について詳しく知りたい方は以下の記事も併せてお読みください。

ブランドロイヤルティとは?高めるメリットや方法を成功事例から解説
ブランドロイヤルティとは?高めるメリットや方法を成功事例から解説 「ブランドロイヤルティって何?」 「ブランドロイヤルティが高い企業の事例を知りたい!」 「ブランドロイヤルティの高め方を知りたい!」 ブランドロイヤルティとは、既存顧客の忠誠度のことであり、その事業が末長く繁栄していくか […]

4.ブランドエクイティを向上させたいと思っている全ての方へ

今回の記事では、ブランドエクイティの基礎知識や事例、ブランドエクイティを高める方法を様々な角度でお伝えしました。

ぜひ、今回の記事を読んで、ブランドエクイティを高めるきっかけにしていただけると幸いです。

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中江翔吾
中江翔吾
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再び、ブランドエクイティについて理解する(本ページ上部に移動する)

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