価値が伝わる魅力的なブランドコンセプトとは?作り方と事例も徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「ブランドコンセプトって何?」
「ブランドコンセプトの事例が知りたい!」
「ブランドコンセプトの具体的な作り方が知りたい!」
ブランドコンセプトは、業種・業界問わず、ブランディングを実践していく上でのキーワードです。
これは断言できますが、ブランドコンセプトが上手く作れなければ、どれだけデザインにお金をかけても、集客の方法を学んでも、新商品を開発しても、事業はうまくいきません。
ブランドコンセプトとは、一言で言うと、ブランドの価値を言語化した表現です。
ブランドコンセプトが、ブランドの価値を伝えるものとして設計されていない場合、そのブランドの価値は伝わりにくくなります。
どれだけ商品・サービス力が高くても、その価値というのは、言語化しないと伝わることはありません。
実際に商品・サービス力が高くても、事業を潰してしまう多くの企業というのは、このブランドコンセプトの設計ができていない場合が非常に多いのです。
ブランドの本当の価値が伝わらなければ、選ばれることはありませんし、選ばれたとしても価格競争に巻き込まれてしまいます。
今回の記事では、そんなブランドコンセプトについてお伝えしていきたいと思います。
この記事を読んでいただければ、ブランドコンセプトに関する基礎的な知識や成功事例だけでなく、具体的にどう実践していけばいいのかまでが分かるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
1.ブランドコンセプトとは
では、まず初めに「ブランドコンセプトとは何か」について解説していきたいと思います。
1-1.ブランドコンセプトの意味
ブランディングとは「唯一無二の高い価値を持つブランドとして認識され、選ばれる」ことを目指すマーケティングの手法です。
唯一無二の高い価値を持つブランドとして認識されるようになると、高単価でも、競合が増えても選ばれるようになっていきます。
そんなブランディングにおいて、ブランドコンセプトの構築は、非常に重要で、最も初めに着手するべき作業です。
ブランドコンセプトとは、一言で表現するのであれば、
ブランドの価値の方向性を示す概念
です。
どんな業種・業界であれ、世の中には様々な価値の方向性を持つブランドがあります。
例えば、ホットペッパービューティで「表参道の美容院」を検索すると、245件のお店が出てきます。
画像出典:https://beauty.hotpepper.jp/
表参道に通えるお客さんをターゲットにする美容院は、この245件もある美容院の中から選ばれないと、商売は成り立ちません。
この際にポイントとなるのは
美容師がプロの技術力を持って、カットやカラーやパーマをしてくれる
いわゆる「普通の美容院」では、中々、選ばれないということです。
というのも、プロの技術力を持って、施術してくれるのは「特別な価値」ではなく、美容院ならどのお店も持っている「当たり前の価値」だからです。
インターネットがなかった時代は、このプロなら誰もが持っている「当たり前の価値」を持っているだけでも、十分に商売が成り立っていました。
というのも、インターネットがなく、消費者の情報収集の手段は限られていたため、感覚としては、近所にある数件からお店を選んでいたため、競争率が低かったからです。
ですが、これがインターネットが普及してから、比較対象が数百件に広がり、競争が激化してしまったわけですね。
比較対象がこれだけ広がると、消費者は、いちいち細かく情報を把握して、比較検討はしなくなります。
そして、美容院を選ぶときに、消費者は
世の中にはいっぱい美容院があるけど、あなたの美容院は他と何が違うの?
という問いかけを発するようになります。
そして、この問いに明確に方向性を示して、答えるブランドこそが、その他大勢あるブランドの中から、際立つ存在として識別されるようになります。
一方で、この問いに明確に答えられず、「普通の○○」という枠組みから抜け出せないブランドは、その他大勢の中に埋もれてしまいます。
その他大勢に埋もれてしまえば、ターゲットから選ばれなくなるか、商品・サービスの安売りを始め、集客しようとし、事業はどんどん苦しくなっていきます。
ブランドコンセプトの構築とは、この「普通の○○」という枠組みを抜け出す試みです。
例えば、全国で約600店舗展開している「QBハウス」という理容店があります。
画像出典:https://toyokeizai.net/
このQBハウスのブランドコンセプトは
10分の身だしなみ
です。
QBハウスは、通常の美容院などで行うシャンプーやブロー・シェービング等は一切やらずに、カットをするだけのシンプルなサービスです。
カット以外の施術を、やらないため10分で終わるのです。
また、そのカット料金も安いです。
普通の美容院のカット料金の相場は4000円ほどだと思いますが、QBハウスのカット料金は1200円です。
これもカット以外の施術をやらないためです。
つまり、QBハウスは
- 早さ
- 安さ
を売りにしているというわけですね。
QBハウスが登場する以前に、このようなタイプの理髪店・美容院はなかったと思います。
だからこそ、希少価値が高く、全国で約600店舗展開できるようになったわけです。
QBハウスは、カットなどの身だしなみを整えることに時間やお金をあまりかけたくない人に支持されました。
これはQBハウスが「10分の身だしなみ」というブランドコンセプトを示したからこそ生まれた結果です。
もちろん、このQBハウスのブランドコンセプトに共感できない人もいると思います。
もっと身だしなみには、お金と時間をかけたいという人はそうですね。
ですが、それで良いのです。
QBハウスはそういった人たちは対象にしていないので。
つまり、ブランドコンセプトを構築すると、ブランドが意図して集めたいと思ったターゲットの人が集められるようになるというわけです。
1-2.なぜ、ブランドコンセプトを言語化する必要があるのか
ブランドコンセプトを作るとは、言い換えれば、
ブランドの価値を言語化する
ということです。
どんな業種・業界であっても、商品・サービス力は高いはずなのに、ターゲットから選ばれないことに悩んでいるブランドはたくさん存在します。
例えば、その地域内で比較すると、カットも、パーマも、カラーも、どこのお店よりも上手なはずなのに、選ばれていないとかですね。
この原因はシンプルで、そのブランドが持つ「本来の価値が伝わっていない」からです。
では、なぜ、「本来の価値が伝わっていない」のかというと、価値を言語化してないからです。
ブランドの価値というのは目に見えないものです。
目に見えないものというのは、言語化というプロセスを経て、目に見える形にして初めて、他者と共有ができるのです。
その美容院に、どれだけ凄腕の美容師が在籍していたとしても、それを目に見える形に表現しなければ、伝わらないのです。
例えば、ここに苺のかき氷があります。
画像出典:https://magazine.hitosara.com/
このかき氷のビジュアルを見るだけで、
お祭りの屋台で売っている100円のかき氷とは違って、ちゃんとお店でこだわって作られているかき氷なんだろうな
ということくらいはわかると思います。
ですが、それだけでは、このかき氷の本当の価値というのは、伝わっていません。
このかき氷は、東京都台東区谷中にある「ひみつ堂」というかき氷の専門店のメニューです。
画像出典:https://www.uenoue.xyz/
ひみつ堂は、とても人気なかき氷屋さんで、1000円のかき氷が1日500杯も売れており、夏になると、5時間以上の待ち時間ができるそうです。
かき氷は屋台で買えば、100円で買えるので、その10倍以上の値段がするわけですが、お客さんが殺到しているんですね。
それは、このひみつ堂のかき氷が、屋台で売られている普通のかき氷に比べて価値が高いからです。
まず、氷にかけるのは、既製品のシロップではなく、すべて自家製手作りの蜜で、完全無添加です
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蜜に使う果実は100%で、代表自らが生産地まで足を運び、自分の目で直接確認して、交渉して、仕入れを決めます。
例えば、いちご蜜には静岡県と秋田県の旬摘完熟いちごのみ使用。加えるのは砂糖のみです
そして、使う氷は、日本最高峰の三ツ星氷室の日光天然氷を使用しています。
天然氷は人工的に凍らせた氷と違って密度が非常に高く、溶けにくいのが特徴です。
画像出典:https://letronc-m.com/
天然氷作りは、休みがなく、本当に命懸けで大変なお仕事で日本には、大正時代に天然氷の製氷事業者は500ほどありましたが、冷凍技術が発展して、工場でも大きく綺麗な氷が作れるようになった影響もあって、2000年の初めには5軒しか残っていません。
その5軒の中の貴重な1軒の氷を使っているのです
そして、この氷の削り方にも拘っていて、自動ではなく手動式の氷削機を使っています。
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機械の取り付ける刃は、毎日研ぎたての刃に取り替え、ふわふわだけど、溶けにくい氷にします。
また、季節によって、微妙に削り方を変える事で、その季節にぴったり合った氷がいただけます
夏は涼しさを感じてもらうためにたっぷり削って、氷の割合を多くして、冬は贅沢を感じてもらうために、氷の量を減らして、蜜の濃厚さを感じていただけるようにするそうです。
ここまで見ても、明らかに屋台で売られている、既製品のシロップと人工氷を使ったかき氷とは一味も二味も違いますよね
一般的なかき氷の原価は、10%程度だと言われています。100円のかき氷は10円ということですね。
一方で、ひみつ堂のかき氷は、メニューにもよりますが、280円以上するそうで、原価率は30%を超えています。
それだけ中身が違うということです。
ポイントは、このかき氷の本当の価値というのは、言語化して初めて伝わるということです。
黙っていて、かき氷を見せるだけでは、ビジュアルの印象以外、何も伝わりません。
だから、ブランドコンセプトを言語化するというのは必要なのです。
2.ブランドコンセプトの事例
では、次にブランドコンセプの事例を紹介していきたいと思います。
2-1.銀木犀のブランドコンセプト
まず、最初に紹介するのは、サービス付きの高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」のブランドコンセプトです。
画像出典:https://helpmanjapan.com/
銀木犀のブランドコンセプトは
自分の力で最期まで生きる場所
です。
一般的な高齢者施設は
管理され、自由がなく、孤独で、殺風景
というような印象を持つ人が多いと思います。
実際に、入居者の安全を確保し、トラブルを防ぐために、スタッフによる過度の管理が行われている施設も多いと思います。
銀木犀は、そうした一般的な高齢者施設とは真逆の考え方を持っていて
過度な管理は依存を生む
という考えから、スタッフによるサポートは必要最低限にしておいて、入居者同士で助け合ってもらうというスタンスをとっています。
だからこそ、従来の高齢者施設にはない「自由」があります。
ご飯を自分で運べる人は自分で運び、自由に食べる。
花を生けられる人は、花を生けたいと思ったら、自由に生けられる。
更に、迷子札さえ持てば、外出だって自由です。
また、「銀木犀」の一階は、地域住民に開放し、駄菓子屋と食堂を運営しているので、地域の子どもや主婦の方との交流もあります。
そんな「自由」があるからこそ、入居してきた人はイキイキとし、その姿を見た人は
介護されるようになったら、ここに入居したい
と思うそうです。
全国平均が17%の看取り率は、銀木犀では「76%」もあり、入居率も98%と日本一です。
自分の力で最期まで生きる場所
というブランドコンセプトは、銀木犀の価値を明確に伝える表現となっています。
2-2.バーミキュラのブランドコンセプト
では、続いては、2010年に発売が開始されて、大ヒットしたバーミキュラのブランドコンセプトです。
画像出典:http://hiroba-magazine.com/
バーミキュラーのブランドコンセプトは
暮らしをかえる鍋
です。
バーミキュラの販売価格は約3万円です。
一般的な鍋が数千円なので、相場よりも遥かに高い価格設定ですが、累計で30万個以上も売れている、大ヒット商品です。
なぜ、ここまで売れたのかというと、機能面にその秘密があります。
バーミキュラは
- ステンレス製の鍋
- ホーロー加工した鋳物の鍋
の良いところを掛け合わせて作られた鍋です。
ステンレス製の鍋は、気密性が高く無水調理ができ、バーミキュラが発売されるまでは「世界一の鍋」と称されていました。
鍋の気密性が高いと、食材から水分を引き出すことができるので、調理するために、わざわざ追加で水などを入れる必要はありません。
また、旨味や栄養素も水蒸気として逃さないので、とても美味しく調理ができるというわけです。
ただし、旨みを引き出すためには、食材への「熱伝導」が重要になってくるので、これはホーロー加工した鋳物の鍋に軍配が上がります。
鋳物の最大の特徴は「保温性」で、食材を芯から温めることができるからです。
ただし、鋳物は変形しやすく、気密性は低いため、無水調理などはできないのが常識でした。
バーミキュラは、その当時、世界のどの鍋ブランドも実現させてこなかった、鋳物で高気密の鍋を作ったのです。
挑戦を成功させるまでに失敗作は1万個以上生み出し、月日も3年以上かかったそうです。
完成した鍋はまさに
暮らしを変える鍋
でした。
食材の旨みを最大限引き出せるようになったので、家で作る料理の味が格段と美味しくなり、今まで野菜嫌いだった子どもが野菜を食べるようになったり、外食に行かなくなったり、夫婦の会話が増えたり。
まさに、バーミキュラのブランドの価値の方向性を示す、良いブランドコンセプトだと思います。
2-3.SOUSOUのブランドコンセプト
次のブランドコンセプトの事例は、国内のアパレルブランドの「SOSUSOU」です。
SOUSOUは、和柄のオリジナルテキストスタイルを使用した、衣服や地下足袋や小物などを販売しているブランドです。
画像出典:http://www.sousou.co.jp/
画像出典:https://shop-pro.jp/
画像出典:https://shop-pro.jp/
SOUSOUのブランドコンセプトは
新しい日本文化の創造
です。
明治維新以降、日本には、ありとあらゆる西洋文化が浸透し、日本人のライフスタイルは大きく変わりました。
日本の文化とうまく融合した部分もありますし、生活が便利になった面もあります。
ですが、人々が身につける衣服や靴に関しては、廃れてしまったと言わざるを得ません。
地下足袋は靴にとって代わり、和服は洋服に取って代わり、和装文化を作り上げてきた関連作業も廃れていきました。
なぜ、和装文化が廃れてしまったのかというと、和装自体が時代の変化に対応して、進化しなかったからです。
SOUSOUは、日本の伝統的な和装文化を現代に合うような形で復活させようとしているブランドです。
SOUSOUが目指すのは
日本の伝統の軸線上にあるモダンデザイン
です。
SOUSOUのテキスタイルデザインは、伝統的な和装文化を感じさせつつも、斬新で新しい仕上がりになっていて、若者からも幅広い年齢層に支持されるアパレルブランドとなっています。
2-4.USJのブランドコンセプト
では、続いては、関西最大のテーマパークである、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のブランドコンセプトです。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、2001年3月31日に、関西最大のテーマパークとして開業しました。
当初のブランドコンセプトは
大人が楽しめる、映画のテーマパーク
でした。
メインコンテンツは
- ET
- バックトゥーザ・フューチャー
- ジュラシックパーク
- ジョーズ
- ターミネータ
などのアトラクションでした。
「大人が楽しめる、映画のテーマパーク」というコンセプトは、これまでの日本にはなく、アトラクションの質も高かったため、話題を集めて、1年目は、来場者数が1000万人を突破しました。
ですが、全てのアトラクションが大人向けに作られていたため、小さい子どもは楽しめず、テーマパーク事業の最大顧客層の「ファミリー層」を取りこぼしてしまいました。
1年目以降の来場者数は右肩下がりに減少し続け、800万人前後に落ち込み、2004年には、事実上の経営破綻をし、その後も何度も社長を交代させて、経営改革を行いましたが、上手くいきませんでした。
そこで、2010年6月、マーケターの森岡毅さんが社長の右腕としてUSJの経営に参画し、様々な改革を行いました。
画像出典:https://newspicks.com/
まず、森岡さんは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのブランドコンセプトを
世界最高のエンターテインメントを届けるテーマパーク
に転換させます。
映画という縛りではなく、「エンターテイメント」という広い枠を設けて
- ONE PIECE
- モンスターハンター
- 進撃の巨人
- 妖怪ウォッチ
- ハリーポッター
- きゃりーぱみゅぱみゅ
- AKB48
- マリオ
などのコンテンツも導入し、さらに小さい子どもでもパークを楽しめるように、改革をしていきました。
このブランドコンセプトの転換を行なったことによって、ブランドのターゲットのボリュームゾーンは大きく広がり、2015年の来場者数は1390万人へと上昇し、年間では東京ディズニーシーを抜くほどの快進撃を見せて、V字回復が起こりました。
2-5.RIZAPのブランドコンセプト
では、次に、パーソナルトレーニングジムのRIZAPのブランドコンセプトについて。
画像出典:https://www.rizap.jp/
RIZAPのブランドコンセプトはあまりにも有名ですが
結果にコミットする
です。
メッセージは非常に簡潔で、わかりやすく、非常にブランドコンセプトとしても上手です。
パーソナルトレーニングジムに対して、顧客が求めることは「理想的な体」という「結果」そのものです。
RIZAPは、このコンセプトを伝えるクリエティブが非常に上手です。
短期間で理想的な体型に激変するビフォーアフターのインパクトと、必ず入る「結果にコミットする」というワードは、一度聞けば頭から離れないような印象形成をしています。
2-6.Dysonのブランドコンセプト
では、続いては、掃除機のDysonのブランドコンセプトについて。
画像出典:https://www.dyson.co.jp/
ダイソンのブランドコンセプトもRIZAPと同様にあまりにも有名ですが
吸引力の落ちないただ一つの掃除機
です。
表現が簡潔で、かつ、ダイソンという掃除機の独自の強み(サイクロン式掃除機)が一目で認識できる非常に良いブランドコンセプトです。
ダイソンはこのブランドコンセプトを提げて、日本市場に参入し、たった4年で、日本での売上を3倍にしました。
2-7.イージートーンのブランドコンセプト
では、続いては、「イージートーン」のブランドコンセプトについて。
イージートーンは、イギリスのスポーツ用品ブランドのリーボック社のシューズです。
画像出典:https://yamahack.com/
イージートーンには「バランスポッド」という空気が注入されたソールが内蔵しています。
「バランスポッド」が、柔らかいクッションの上に乗ったような微妙な不安定さを生み、ハムストリング筋、腓腹筋(ふくらはぎ)、大臀筋など美脚、ヒップアップに欠かせない筋肉を鍛えます。
そんなイージートーンのブランドコンセプトは
履くだけのジム
です。
イージートーンは
- ジムに通えない
- トレーニングする時間がない
といった働く女性向けに開発され、非常に多くの支持を集めて、世界的な大ヒット商品となりました。
このブランドコンセプトを見るだけで、そのブランドと関わる先の未来が想像できるという点も、このブランドコンセプトが秀逸な点です。
3.ブランドコンセプトの作り方
では、最後にブランドコンセプトの作り方について解説していきます。
3-1.ターゲットの明確化
まず、一番最初に、ブランドのターゲットを明確にしましょう。
ブランドコンセプトは、ブランドの価値を言語化したものですが、どれだけ秀逸なコンセプトを作っても、すべての人がその価値を認めてくれるわけではありません。
例えば、先ほど紹介したイージートーンの
履くだけのジム
というブランドコンセプトは表現としては完成度が高いです。
ですが、すべての人がこのブランドコンセプトに共感し、イージートーンを欲しいと思うわけではありません。
例えば、時間とお金に余裕があり、
理想体型を目指すのであれば、パーソナルトレーナーをつけて、食事から、運動までのアドバイスをプロから受けるべきだ
という考えの人もいます。
そういう人はもしかしたら
結果にコミットする
というライザップのブランドコンセプトに共感するかもしれません。
一方で、ライザップのブランドコンセプトも万人に受け入れられる訳ではなく、そもそもジムに通う時間もお金もないという人は、イージートーンのようなブランドコンセプトに惹かれるという訳です。
これは、人によって
何に価値を感じるのか?
という価値観が違うからです。
自社の商品・サービスを購入する可能性がある人は一括りにできるわけではなく、色んな層が存在しています。
その中でも、
どんな人を最も顧客にしたいのか?
を考えましょう。
考える際のポイントとしては
- 年齢
- 性別
- 地域
- 家族構成
- 仕事
- 年収
- 価値観
- ライフスタイル
- 願望
- 悩み
などの外面的要素と内面的要素から考えてみて、最後に一言で集約するといいでしょう。
例えば、私の場合、販売している商品・サービスは
- ホームページ制作
- コンサルティング
になります。
この商品・サービスを購入する可能性がある人は、大きく分けて
- 経営者
- 個人事業主
- 起業準備中
の方です。
私の場合、その中でも特に
- 世のため・人のためという志を持っている
- 商品・サービス力に自信がある
- 価値の伝え方や広め方を知らないため、苦戦している
方を対象としています。
こういうイメージでターゲットを明確にしてみましょう。
3-2.ブランドプロミスの作成
そして、次に、ブランドプロミスの作成について。
ブランドプロミスとは、ターゲットに対して行う、ブランドとしての約束です。
つまり
私たちのブランドと関わると、こういう理想の未来に導くことをお約束します
という宣言ですね。
これを設定すると、ブランドコンセプトを見たときに、そのターゲットの人たちは、
こんな理想の未来に行けるなら、このブランドと関係性を築こう
と思います。
例えば、RIZAPには、
結果にコミットし、あなたの理想の体に導きます
というようなブランドプロミスがあります。
これがあるからこそ、自分の体型に悩む人は、RIZAPのブランドコンセプトを見た時に、興味を惹かれるのです。
なので、ターゲットの人たちに
どうなってもらうことを約束するのか?
を言語化してみましょう。
また、この約束というのは、ターゲットの人たちから見て魅力的である必要があります。
例えば、ある整体院で
患者様に笑顔をお届けします
というようなブランドコンセプトがありました。
これは体に痛みや悩みを抱える、患者の人から見て、魅力的でしょうか?
「笑顔にする」というのはあまりにも間接的で、伝わりにくい表現です。
ターゲットが心から望む結果を表現として出しましょう。
3-3.ブランドストーリーの作成
では、次にブランド・ストーリーの作成について。
ブランドコンセプトは、ターゲットに響く、完成度が高いコンセプトであれば、全てOKという訳ではありません。
というのも、そこにストーリーが宿っていなければ、事業を継続させることはできないからです。
ブランド・ストーリーとは
なぜ、あなたが、そのブランドプロミスを掲げるのか?
という必然性です。
本当にブランド構築に寄与するブランドコンセプトには全てこれが内在しています。
例えば、先ほど紹介した、SOUSOUのブランドコンセプトは
新しい日本文化の創造
でした。
では、なぜ、SOUSOUはこのブランドコンセプトを掲げているのか?
代表の若林剛之さんは、中学生の時にファッションに興味を持ち始め、私服通学の高校に進学したことで、ファッションの世界にのめり込みます。
画像出典:https://www.shakaika.jp/
そして、高校を卒業する頃には
ファッションデザイナーになりたい
という夢を持つようになります。
卒業後は、上京して、日本で唯一の「オーダーメイド紳士服の専門学校」の日本メンズ・アパレル・アカデミーに進学します。
その当時は、DCブランドが流行し始めていたころで、卒業後は、念願だったDCブランドへの就職が決まります。
DCブランドとは、日本のアパレルメーカーが、西洋の流行を真似て作った高級ファッションブランドです。
ですが、90年代に入り、バブル崩壊以降、DCブランドの勢いは衰え始め、次に、日本では発売されていないアメリカの服を現地で買い付けて、日本国内で売るというセレクトショップが流行します。
DCブランドは模倣でしたが、インポートしたものは本物でした。
その時期に、若林さんもニューヨークに渡り、直接レアモノを買い付け、自分のセレクトショップを京都に開きます。
若林さんは相当な目利き力があったので
こんな海外のレアモノが手に入る店は他にない
と話題を集めて、売上は順調に右肩上がりに伸びていきました。
そんなある日のこと、自宅の建て替えを検討していたときに、建築家の辻村久信さんと出会いました。
画像出典:https://www.imn.jp/
そして、辻村さんの紹介で、テキスタイルデザイナーの脇阪 克二さんに出会うことになります。
画像出典:https://www.1101.com/
脇坂さんは、フィンランドのブランドの「マリメッコ」の日本第一号のテキスタイルデザイナーです。
画像出典:https://www.cortina.ne.jp/
若林さんは、辻村さんの紹介で、脇坂さんの自宅兼アトリエを訪ねて、脇坂さんの描いたテキスタイルデザインを見せてもらいます。
脇坂さんのテキスタイルデザインは40年前のデザインも10年前のデザインも、そして現在のデザインも全く色あせず、普遍的な魅力を持ったデザインでした。
画像出典:https://www.amazon.co.jp/
若林さんは衝撃を受け、「これだ!」と直感しました。
アパレルブランドのあり方は、良くも悪くも「流行」を追いかけて、商品が作られ、成立してきました。
なぜ、流行を追って、常に新しいものを売り続けなくてはならないのか、いいものを作ったのならば、長くそれを売り続ければいいのではないか
という思いがふつふつと湧き上がってきました。
若林さんはこのテキスタイルデザインを活かした、服、家具、雑貨などを作れば絶対に面白いことになると確信して、SOUSOUを始動することになります。
そして、西洋の流行の模倣をするのではなく、西洋からも憧れられる、現代のライフスタイルにあった日本のアパレルブランドを、新しい和装文化を作ることを決意します。
SOUSOUには、こういう芯の詰まったブランド・ストーリーがあるからこそ、あのブランドコンセプトは力強いのです。
どんな業種業界であれ、一時期はヒットしても、消えていくブランドはたくさんあります。
それは、こういう確たるブランドストーリーがなく、
このコンセプトなら儲かるのではないか?
という思惑があるだけだからです。
「儲かるか儲からないか」という判断軸だけで練り上げられたブランドコンセプトは、事業の良し悪しを全て、儲かっているかどうかで決めてしまいます。
どんなブランドであれ、何の失敗も危機もなく、右肩上がりで成長し続けるということはあり得ません。
だから、そういう危機が来たときに、あっさり、そのブランドを畳んでしまうのです。
また、仮に上手くいって、利益が出ていたとしても
何のためにこの事業をやっているのか?
と内省するようになり、次第に事業に対する情熱を失っていきます。
なので、このブランド・ストーリーは言語化するようにしましょう。
3-4.選ばれる理由の明確化
続いては、選ばれる理由を明確にしていきましょう。
選ばれる理由とは
- 強み
- 独自性
- 実績
のことです。
「普通の○○」を抜け出すためには、「普通の○○」とは具体的にどこがどう違うのかを明確に提示する必要があります。
先ほどもお伝えはしましたが、重要なのは価値を言語化することです。
ひみつ堂のかき氷のように
- 既製品のシロップではなく、すべて自家製手作りの蜜で、完全無添加です
- 日本最高峰の三ツ星氷室の日光天然氷を使用しています
と言葉にして伝えるからこそ、本当の価値は伝わります。
そして、この選ばれる理由を言語化して伝えると、
このブランドなら、ブランドプロミスを守り、理想的な未来に導いてくれる
という確信を抱いてもらえるようになります。
例えば、RIZAPは
結果にコミットし、あなたの理想の体型に導く
というブランドプロミスを掲げている訳ですが、この文言だけだと
本当なの?
という疑問が見込み客から湧いてしまいます。
ですが、この疑問を選ばれる理由を提示することによって、解消できるのです。
例えば、RIZAPでは以下のような選ばれる理由を掲げています。
- 完全個室のプライベートジムです
- プライベートジムランキングでライザップは四冠を達成しました
- 30日間で満足できなかったら全額返金します
- トレーナーは採用率3.2%という狭き門をくぐり抜けたトッププロで、厳しい研修を192時間こなしています
- トレーナーだけでなく、全国提携医療機関、栄養士/管理栄養士、カウンセラーでチームを結成し、フォローします
これを見れば、他のパーソナルトレーニングジムとの違いがわかるだけでなく、理想世界に導いてくれるんだという確信を持たせることができて、成約率がグッと上がります。
3-5.ブランドコンセプトのキーワードを抽出し、キャッチコピーに集約する
ここまでできれば、ブランドコンセプトを作る素材は、全て洗い出せていることになります。
ブランドコンセプトは最終的には、以下のようにキャッチコピーのようなまとまったシンプルな表現として落とし込む必要があります。
10分の身だしなみ
自分の力で最期まで生きる場所
暮らしをかえる鍋
新しい日本文化の創造
世界最高のエンターテインメントを届ける
吸引力の落ちないただ一つの掃除機
履くだけのジム
いきなりこれだけのまとまった表現を作り出すのは難しいので、まずは、
- ターゲット
- ブランドプロミス
- ストーリー
- 選ばれる理由
を考える時に出てきたキーワードを書き出していってくだっさい。
例えば、QBハウスであれば
- 早い
- 10分で終わる
- 安い
- カット
- 身だしなみ
- 忙しい
- 理容院
などがキーワードとしてあったかもしれません。
このキーワードの抽出作業に、正しいも間違っているもないので、とにかく関連するキーワードを書き出せるだけ、書き出していってください。
この洗い出しの作業は、一人でやるよりも、複数人でやった方が良いアイディアは生まれやすいです。
そして、最終的に、この洗い出されたキーワードを組み合わせて、まとまった表現を作っていくというイメージで、キャッチコピーを作成していきましょう。
4.良いブランドコンセプトの条件
では、続いては、良いブランドコンセプトの条件を3つご紹介します。
全てを満たすことは難しいかもしれませんが、できるだけ多くの条件に当てはまっている方が、価値が伝わるブランドコンセプトになります。
4-1.表現が簡潔で分かりやすい
まず、最初のポイントが「表現が簡潔で分かりやすい」ことです。
特に押さえておきたいのは、ブランドのターゲットが見た時に、意味が通るということです。
例えば、架空のブランドコンセプトで、こんな言葉はあり得ないのですが
ブランドコンセプトをアカウンタビリティーしてインキュベーションする
というものを掲げているコンサルタントがいたらどうでしょうか?
ほとんどの人が意味不明なのではないでしょうか?
こういうターゲットの人が理解できないような言葉は使わないということです。
どれだけ方向性として素晴らしいブランドコンセプを作ったとしても、表現として伝わらなければ、全く意味がないので。
4-2.ブランドと関わる理想の未来が想像できる
そして、次に「ブランドと関わる理想の未来が想像できる」について。
私は、良いブランドコンセプトになるかどうかの試金石がこの2つ目の条件だと考えています。
この条件を満たしているブランドコンセプトは、価値が伝わりやすいです。
例えば、月額制のファッションレンタルサービスの「エアークローゼット」のブランドコンセプトは
月額制で借り放題。気軽に借りて、思うままに試せる。ストレスフリーに「わたしに似合う」が見つかるファッションレンタルサービスです
というものです。
エアークローゼットは、月額3960円から、30万着の洋服から、雑誌や広告で活躍するプロのスタイリストが、好みや体型や使うシーンに合わせて、セレクトしてくれるというサービスです。
画像出典:https://www.air-closet.com/
特にこのブランドコンセプトが秀逸な点は、エアークローゼットというサービスを利用すれば
ストレスフリーに、「私に似合う」が見つかる
という理想の未来が想像できることです。
これがあるからこそ、
エアークローゼットと関係性を築こう
とターゲット層は思います。
一方で、理想の未来が想像できないというブランドコンセプトも世の中にたくさんあります。
例えば、以下も架空のブランドコンセプトですが、
子育ては親育て。教育は共育(子育ての専門家)
もっと人に恵まれていい(採用コンサルタント)
とかはそうですね。
言葉としては良さそうなことを言ってるのですが、ターゲットの人からすると「?」となります。
ブランドコンセプトというよりは、理念に近いです。
また、理想の未来がぼんやりとしていて、ターゲットの人から見て、魅力的ではない場合があります。
笑顔あふれる未来をお届けします(整体院)
幸せで穏やかな時間を約束します(カフェ)
こういう抽象的な表現を使っているブランドコンセプトもよく見るのですが、抽象的な言葉というのは、解釈の幅が広く、伝えたいメッセージが伝わらない場合が多いので、使う際には注意が必要です。
4-3.独自性が伝わる
次に、4つ目のポイント「独自性が伝わる」について。
ブランドコンセプトの中で、そのブランドの独自性まで伝えられるととても良いです。
QBハウスの
10分の身だしなみ
とかはそうですね。
「10分でカットが終わる」ようなお店はないので。
ここの要素は、選ばれる理由から抽出して、盛り込むようにすると良いでしょう。
5.ブランドコンセプト作りに取り組もうと思っている全ての方へ
今回の記事では、ブランドコンセプトに関する基礎知識や作り方を様々な角度でお伝えしました。
ブランドコンセプトの構築こそ、ブランディングで最初に取り組むべきステップであり、このブランドコンセプトこそが事業戦略の礎となるものです。
ぜひ、今回の記事を読んで、希少価値の高い、ターゲットに響くようなブランドコンセプトを作成してみてください。
また、このブランドコンセプト構築に関して、もっと深く学んで実践していきたいと思われた方は、私の公式LINEアカウントで配信されている無料のWEBセミナーをご覧ください。
このWEBセミナーでは、ブランドコンセプトの構築だけでなく、
- 高単価でも競合が増えても選ばれ続けるNo.1ブランドの作り方
- 広告に依存しない安定的な集客の仕組みの作り方
- 商品力は競合よりも高いはずなのに選ばれない理由
などを解説しています。
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再び、ブランドコンセプトについて理解する(本ページ上部に移動する)