リブランディングとは?成功事例から実践のポイントまでを徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「リブランディングって何?」
「リブランディングは具体的に何から始めればいいの?」
「リブランディングの成功事例が知りたい!」
どれだけ過去に業績が順調だったブランドでも、時代の変化に伴う業績不振などの影響を受けて、これまでの経営スタイルの変革を迫られることがあります。
その際に必要となるのが「ブランドの再構築」を意味するリブランディングです。
例えば、東京の多摩市に「サンリオピューロランド」という屋内型テーマパークがあります。
画像出典:https://www.puroland.jp/
ピューロランドは、1990年に「愛と夢とで、できた国」をキャッチコピーにオープンし、
- 最先端の技術を駆使したアトラクション
- クオリティの高いショーやパレード
- 天候の影響を受けない屋内型テーマパーク
などが揃う「子ども向けのテーマパーク」として、1991年には、来場者数は194万8000人を記録しました。
ですが、その後は、来場者数は低迷し続け、2009年度には、過去最低の108万人5000人まで落ち込みます。
誰が見ても、今のままの経営スタイルを維持していては、黒字化の見込みは出てきません。
そんな時に必要になるのがリブランディングです。
ピューロランドはその後、根本的なブランドの
- ターゲット
- イメージ
- サービス
- マーケティング
の見直しを行います。
そして、2014年には126万人だった年間来場者数は右肩が上がりに伸び続け、2018年度には219万人と大台を突破しました。
ピューロランドは開業当初の経営スタイルを続けていたら、今もなお低迷を続けていたと思いますが、2014年にブランドの再構築を始めることで、業績を回復させることができました。
今回の記事では、そんなリブランディングについてお伝えしていきたいと思います。
この記事を読んでいただければ、リブランディングに関する体系的な知識や成功事例だけでなく、具体的にどう実践していけばいいのかまでが分かるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
1.リブランディングとは
まずは、リブランディングとは何かについてお話していきたいと思います。
1-1.リブランディングの意味
リブランディングとは「ブランドを再構築する」ことを意味します。
ブランドとは
- 記号
- イメージ
が結びついた総称のことです。
例えば、Appleというブランドのロゴマーク(記号)を見た時に、人は多くのブランドに対するイメージを連想します。
具体的には
- デザインがオシャレ
- データ連携が楽
- 使い心地が良い
- 性能が高い
などですね。
そのブランドを表すロゴマークなどの記号を見た時に、それに付随するイメージを連想させることができていれば、「ブランドが成立している」ことになります。
まずは、リブランディングとは
- 記号
- イメージ
を再構築することだと認識してもらえれば大丈夫です。
1-2.リブランディングの目的
ただし、リブランディングの目的は、ただ単に
- 記号
- イメージ
を再構築することではありません。
リブランディングの目的は、この二つを再構築することによって、ブランド力を高めることです。
ブランド力が高まれば
- 差別化ができ、比較検討されずに選ばれる
- 相場よりも高い価格でも選ばれる
- リピート率が向上し、売上が安定する
- 多額の広告費をかけなくても、集客が安定する
- 優秀な人材が確保できる
- 社員の定着率が向上する
- 新商品が売れやすくなる
- コラボレーション機会が増大する
- 仕入れコストを削減できる
- 資金調達コストを削減できる
などを実現していくことができます。
ブランド力とは
- 認知度
- 知覚品質
- ブランド・ロイヤルティ
の3つから構成されています。
「認知度」とは、そのブランドの存在がどれだけ多くの人に認知されているのかという度合いのことです。
ブランドを再構築するにあたって、そのブランドがどれだけ多くの人に知られているのかは非常に重要です。
10人にしか知られていないブランドよりも、100人に知られているブランドの方が市場において圧倒的に有利だということは誰でも理解できると思います。
ブランドの名前を知られていないと、そもそも消費者の選択肢にすら入らないので。
次に「知覚品質」とは、消費者に伝わっている「品質」のことです。
知覚品質は、実際の商品の品質ではなく、あくまでも消費者が抱くブランドに対するイメージです。
世の中にはどれだけ実際の品質が高くても、その価値が伝わっていないことが原因で、選ばれていないというブランドが数多く存在します。
例えば、AppleのPCに対して非常に満足度が高く、好印象を抱いている顧客であれば
スマートフォンを選ぶにしても、AppleのiPhoneを選べば間違いない
という人は多いでしょう。
たとえ、そこに、iPhoneより性能が高いスマートフォンのブランドが新たに登場したとしても、その価値が伝わらなければ、顧客は選びません。
これが知覚品質です。
そして、最後の「ブランド・ロイヤルティ」とは、ブランドに対する顧客の忠誠度のことです。
ブランドに対する忠誠度が高いほど
- リピート
- 口コミ
が起こります。
これも事業において非常に重要な指標です。
というのも、ブランド・ロイヤルティが低ければ、どれだけ商品を購入してもらってもリピートされず、口コミも起きないため、新規集客にエネルギーも時間も投下し続けないといけないからです。
マーケティングの世界では
新規顧客に販売するコストは、既存顧客に販売するコストの5倍かかる
と言われるように、このブランド・ロイヤルティも高めていくことが重要になります。
とにかく、リブランディングでは「記号」と「イメージ」を再構築することで、
- 認知度
- 知覚品質
- ブランド・ロイヤルティ
を高めていくことがゴールだということを認識しておきましょう。
1-3.リブランディングを実施すべきタイミング
リブランディングを実施すべきタイミングは
- ブランドの設計ミスが発覚した時
- ブランドの劣化を認識した時
- 事業規模を拡大する時
の3つに分かれます。
1-3-1.ブランドの設計ミスが発覚した時
まず、最初のブランドの設計ミスが発覚した時について。
これは何か新規でブランドを立ち上げたものの
- 競合の中にブランドが埋もれてしまっている
- 集客や売上などの成果が思ったように上がらない
- ターゲット層に対して効果的にアプローチできていない
- ブランドに対する誤解や勘違いが浸透してしまっている
という状態に陥ってしまっている場合ですね。
もし、ブランドを立ち上げ、1年~2年経過していても、上記のような状態であれば、そもそものブランドの設計から失敗している可能性があります。
根本的なブランドの設計ミスであれば
- チラシのデザインを変える
- 接客フローを変える
- 広告の打ち方を変える
などの枝葉のマーケティング施策を実施したところで、効果は上がりません。
例えば、地元で、美容院を開業するとします。
近所の競合店には
10分の身だしなみ
をコンセプトにしているQBハウスという理容院があるとします。
画像出典:https://toyokeizai.net/
この理容院のウリは
- 安さ
- スピード
です。
一般のサロンで行うシャンプーやブロー・シェービング等などはやらずにカットだけやるので、10分で終わるのです。
美容院でカットしようとすると4000円以上するとは思いますが、QBハウスだと1200円でカットができます。
これだけの早さでカットを終わらせることができ、かつカット料金も安いお店はこれまでになく、全国で約600店舗展開するまでに至りました。
こういうお店が近所にあるにも関わらず、これといった強みも打ち出さず、
普通の美容院よりは、少し安い3000円でカットができるお店
としてオープンしてしまえば、確実に上手くいきません。
安さだけをウリにするのであれば、QBハウスには勝てないからです。
これもブランドの設計ミスですね。
チラシを変えようが、ホームページを変えようが、接客フローを変えようが、成果は上がりません。
1-3-2.ブランドの劣化を認識した時
二つ目は、ブランドの劣化を認識した時です。
新規でブランドを立ち上げ、順調に成果が上がり、上手くいくという場合もあると思います。
ですが、どれだけ最初に上手くいったブランドも、時を経るにつれて、
- 市場環境の変化
- 社会の価値観の変化
などにさらされ、今まで通りにいかなくなることが出てきます。
例えば、学研などはそうでした。
学研は、1946年に蕎麦屋の2階を間借りして、古岡秀人さんの
画像出典:https://www.114154.com/
戦後の復興は教育をおいて他はない
という信念の元に創業されました。
当時、墨で塗られていた教科書を補うために、「学習」や「科学」というを創刊し、ピーク時には
小学生の3人に2人は買っていた
と言われるくらいの人気ぶりでした。
画像出典:https://twitter.com/_yorozuplanet/status/767907301944532992
学研は「学習」と「科学」だけで、1979年には年間670万部、売上1000億円に到達しました。
ですが、その後
- 少子高齢化
- 学習塾の普及
と共に衰退し、20年間、売上は右肩下がりになり、2009年には雑誌を休刊するまでに至ります。
典型的な
- 市場環境の変化
- 社会の価値観の変化
だと思います。
ブランドの劣化は目に見える数字にハッキリと現れます。
具体的には
- 売上や顧客の減少
- 市場シェア率の低下
- リピート率の低下
- 顧客満足度の低下
- クレームの増加
などですね。
これを見逃さないようにすることです。
学研はその後、2010年に、宮原博昭社長が就任し、創業者の理念を今の時代にフィットさせる抜本的な改革を行います。
画像出典:http://www.tanabekeiei.co.jp/
結果として、売上は10年連続、右肩上がりで増収し、2019年には売上1400億円に到達しました。
これまでの歴史や実績にあぐらをかかず、リブランディングを実行したからこそ、今の学研の成功があります。
1-3-3.新規ジャンルに参入する時
そして、3つ目が新規ジャンルに参入する時です。
ブランドの立ち上げ段階というのは、基本的にジャンルを専門特化させます。
例えば、バーミキュラというブランドであれば、最初は「鍋」に特化したブランドでした。
画像出典:http://hiroba-magazine.com/
そして、その特化したジャンルで成功したら、次はそれに関連するジャンルに足を踏み入れることもあると思いますが、ここもリブランディングのタイミングです。
新規ジャンルに参入した時に起こるのが、これまでのブランドの在り方との整合性です。
これが上手く取れていないブランドは失敗してしまいます。
例えば、
結果にコミットする
というキャッチコピーでおなじみのRIZAPグループなどはそうですね。
画像出典:https://biz-journal.jp/
RIZAPグループは2012年に開始したボディメイクジム事業で、一気に飛躍し、2018年の3月期には「1362億100万円」の売上高を記録しました。
ですが、その後、2017年から始まった、M&Aによる事業の多角化が失敗し、2019年の3月期には「193億円」の赤字を計上してしまいます。
RIZAPグループの理念は
「人は変われる。」を証明する
です。
とても良い理念だと思います。
ボディメイク事業はまさにこの理念に合致した事業でした。
ですが、M&Aで買収した企業は
- アパレル
- ヘルスケア
などの本業と関連した企業もありましたが、その他は
- メディア
- CD・ゲーム販売
- 雑貨
- 住宅・不動産
など、この理念に本当に関係があるのかと疑ってしまうような企業まで買収しています。
しかも、ブランドとして、なぜ、このタイミングで、一気に買収する必要があったのか?
明らかに、新規ジャンルへの参入がこれまでのブランドの在り方と整合性が取れていないからこそ、起こった事態だと思います。
単に売上や事業規模を拡大するためだけのM&Aは上手くいきません。
僕はM&Aによる新規ジャンルへの参入は否定しませんが、それは、ブランドが目指す世界観と一致している必要があります。
このタイミングもリブランディングを実施するべきタイミングですね。
1-3.リブランディングに失敗する最大の原因
では、次にリブランディングに失敗する最大の原因というテーマでお話していきます。
リブランディングを実行していくと、最終的には、ロゴやウェブサイトや商品パッケージなど、目に見える形で、ブランドの記号やイメージを変えることになります。
この2つの要素を変更したときに、ブランドの認知度が高いほど、例外なくネットで批判にさらされます。
例えば、2008年にサンフランシスコで創業した「Aribnb」もそうです。
Airbnbは、世界192ヶ国で「空き部屋を貸したい人」と「部屋を借りたい旅人」をマッチングさせるウェブサービスを提供する企業で、2014年にロゴを変更しました。
このロゴ変更は
- 前のロゴの方が愛着があった
- 他社のロゴと似通っている
など、SNSをきっかけに、多くの批判にさらされました。
基本的にリブランディングを実行する際には、こうした既存ユーザーからの批判が出てくるのは覚悟しなければなりません。
人は本能的に「変化」を恐れるからです。
できるだけ、これまで見慣れてきたものの方が良いと本能的に思ってしまうのです。
全てのユーザーを納得させることはできません。
重要なのは、そういう批判にさらされたとしても、リブランディングを貫けるかどうかです。
一部のユーザーの声に左右され、リブランディングを実行するべきなのに、中途半端に辞めてしまえば、そのブランドに未来はありません。
そういう事態を避けるためには
- PRのため
- ◯周年記念に
という曖昧な理由でリブランディングを実行しないことです。
変えるべき必然性がなければ、取り組みをユーザーに理解してもらうことは不可能だからです。
リブランディングするべき必然性があるのであれば、一部のユーザーから批判が出たとしても無視すれば良いです。
リブランディングに必要なのは、ブランドの過去に執着する既存ユーザーではなく、ブランドの未来を信じる人たちです。
Airbnbの場合も、多くの批判に晒されましたが、ロゴ変更を行うべき必然性があり、貫くことができました。
Airbnbが目指すのは
暮らすように旅をしてもらう
ことです。
ユーザーに利用してもらうのは「安い価格で泊まれる場所」ではなく、自分の居場所を感じることができる温かい「家」です。
そんな思想を反映したのが今のロゴです。
これは以前のロゴでは全く伝わっておらず、だからこそ変えるべき必然性があったというわけです。
本当のファンはリブランディングの目的について、信念を持って、適切に伝えれば、理解してくれます。
だから、一部に批判されても恐れることなく、変わっていけばいいのです。
2.リブランディングの手法
では、次に具体的なリブランディングの手法について解説していきます。
リブランディングの手法は、ブランディングの手法とも重複している箇所があるので、以下の記事も併せて読むと、より深い理解を得ることができます。
2-1.ブランドの課題の分析
まず、最初に、ブランドが抱えている課題を明確にしていきます。
リブランディングを実施しようと思う背景には、ブランドの現状に対して漠然と抱えている不安や問題意識があるからだと思います。
まずは、思いつくままに、箇条書きでも良いので、書き出してみましょう。
例えば、これから自分が経営する旅館のリブランディングをしようと思うなら
- 5年前から空室が明らかに目立つようになってきた
- リピートしてくれるお客様の割合が減ってきた
- 地元で広告を出しても反応が出なくなって来た
という具合に。
そして、課題の部分をより明確に把握するには、業績などの数値を見ることが大切です。
上記の空室率もリピート率も、広告の反応率も全て数値です。
特に業績が良かった時と比較すれば、ブランドの課題は浮き彫りになります。
次に、なぜ、そのような状態になったのかについて分析をしていきます。
ポイントは
- ブランドのイメージ
- 商品・サービスの質
- 顧客満足度
- 認知度
- 外部環境
- 従業員満足度
という6つの観点から分析することです。
ブランド力はこの6つのポイントが鍵を握るからです。
ブランドのイメージが良く、商品・サービスの質が高く、顧客満足度も高く、認知度もあって、外部環境という観点からも今の時代にもマッチしていて、働いている従業員の満足度も高ければ、そのブランドには何の問題もありません。
このどこかに問題を抱えているからこそ、リブランディングの必要性が出てきます。
例えば、旅館の料理や内装や接客といったサービスの質が高くても、ブランドのことを認知している消費者からは
どこか古臭いイメージがあって、積極的に利用したいとは思わない
というような印象を抱かれていたという調査結果が出たとします。
この場合は、実際に利用した人の満足度は高いので、リピート率は高いと思いますが、新規顧客の集客に苦戦していると思われます。
なぜ、そこまでブランドのイメージが悪いのか?
消費者の目線に立って、旅館の予約・検討をする動線を辿ってみます。
現在、宿泊施設の予約・検討のメインの動線はインターネット経由です。
それを念頭に見ていくと、旅館の予約サイトに出てくる情報量が不十分だったり、写真が不鮮明で魅力が伝わりづらかったり、口コミの数が少ないというようなことがわかってきました。
つまり、旅館の本当の魅力がインターネット上では伝わっていないということですね。
これが最初にやるべき課題の明確化です。
ポイントは事象を深掘り、原因を分析していくことです。
例えば、実際に旅館を利用していただいたお客さまからアンケートを取り
料理や温泉にはとても満足しているが、接客があまり良くなかった
という声がたくさん集まったとします。
こういう結果が得られたのであれば、
なぜ、接客の質があまり良くないのか?
を分析していきます。
スタッフに聞いてみると、上司によって接客の指導方針が異なっており、現場で混乱が起きていることがわかってきました。
そうすると、課題となるのは、接客の指導方針の統一です。
このように見えてきた課題の本質を
- 旅館の魅力がインターネット上では十分に伝わっていない
- 新規集客は口コミだけに依存しており、他の入り口も増やす必要がある
- 徳島県自体の旅行者が全国的に少ない
- 接客の質を全体的に向上させる必要がある
- 旅館の理念や価値観に共鳴できていないスタッフが多い
というように箇条書きで書いていきます。
2-2.リブランディングの目標設定
次のステップでは、リブランディングの目標を定めます。
上記の課題を踏まえた上で、どのような状態になるのが、ブランドの理想なのかということを書き出していきます。
最初は思いつくままにアイディアレベルで良いので
- 年間を通して、客室稼働率が90%を超える
- リピーターで予約枠の80%以上が埋まっている
- 新規顧客の60%以上は口コミ経由
- 徳島県の宿泊施設の中で、顧客満足度No.1になる
- 徳島県の宿泊施設の中で、従業員満足度がNo.1で、離職率は5%以下
というように書き出していきます。
最初は
徳島県でNo.1の旅館になる
というような抽象的な表現しか出てこない場合もあるかもしれませんが、これも「徳島県でNo.1の旅館になる」とはどういうことかを具体的に明確にしていきます。
「No.1」と一口に言っても
- 客数
- 客室稼働率
- リピート率
- 口コミ率
- 顧客満足度
- 従業員満足度
- プロが選ぶホテル・旅館100選ランキング
など、様々な観点があります。
ブランドによって目指したい方向性が違うと思うので、ここを明らかにしていきます。
2-3.リブランディングの実施施策の確定
では、次にリブランディングの実施施策を
- イメージ
- 商品・サービスの質
- 知覚品質
- 認知度
- 従業員満足度
という5つの観点から決めていきます。
ブランド力を回復させるためには、この5つを見直していく必要があります。
2-3-1.ブランドのイメージ
まずは、ブランドのイメージについて。
人はロゴなどのブランドの記号を認識した際に、イメージを抱きます。
ブランディングでは、この設計したイメージに基づき
- 商品・サービス設計
- デザイン
- プロモーション
などの事業戦略を実行していくことになります。
ですが、ビジョンと事業の状況によっては、このブランドのイメージを根本的に転換する必要がある場合も出てきます。
例えば、関西最大のテーマパークである、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の場合がそうでした。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、2001年3月31日、関西最大のテーマパークとして華々しく開業しました。
日本では、今までになかった
大人が楽しめる、映画のテーマパーク
として話題を呼び、1年目の来場者数は1000万人を突破しました。
しかし、その後、来場者数は右肩下がりに減少し続け、800万人前後に落ち込み、2004年には事実上、一度、経営破綻していました。
その後、社長も交代し、様々な経営改革がなされましたが、来場者数は変わることなく、2010年には、700万人前後に落ち込みました。
この経営危機の最大の原因とは一体何か?
それが、当時のユニバーサル・スタジオ・ジャパンが持っていた「大人が楽しめる、映画のテーマパーク」というブランドイメージです。
このブランドイメージは、確かに日本ではユニークなもので、かつ世界観の作り込み方やアトラクションの品質も国内トップクラスでした。
ですが、このブランドイメージでは、テーマパークに足を運ぶ可能性が高い、小さい子どもを連れたファミリー層を取りこぼしてしまいます。
園内も大人向けに設計されており、アトラクションも身長制限を設けられたものばかりで、小学校にもまだ入っていない子どもたちが遊べるようなものは少なかったんです。
実際にデータでもファミリー層を取りこぼしていました。
そこで、2010年6月、マーケターの森岡毅さんが社長の右腕としてユニバーサル・スタジオ・ジャパンに入り、様々な改革を行いました。
画像出典:https://newspicks.com/
まず、森岡さんは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのブランドイメージを
世界最高のエンターテインメントを届けるテーマパーク
に転換させます。
なので、森岡さんが就任してから、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのコンテンツは、映画一辺倒ではなくなり
- ONE PIECE
- モンスターハンター
- 進撃の巨人
- 妖怪ウォッチ
- ハリーポッター
- きゃりーぱみゅぱみゅ
- AKB48
- マリオ
なども登場します。
扱うコンテンツの幅が多様になったため、これまでユニバーサル・スタジオ・ジャパンに来場しない層も足を運ぶようになります。
また、小さい子どもが身長制限を気にせず、遊ぶことができる、ユニバーサル・ワンダーランドというエリアも設けて、ファミリー層の集客にも成功しています。
結果として、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの2015年の来場者数は1390万人へと上昇し、年間では東京ディズニーシーを抜くほどの快進撃を見せました。
このようにブランドのイメージは、
どんな未来を目指すのか?
によって転換させる必要がある場合が出てきます。
なので、改めて
- どんな人に
- どんなブランドのイメージを抱いてもらいたいか?
を明確にしてみましょう。
どんな業種業界でも、様々なブランドイメージを持つプレイヤーがたくさんいます。
そんな中、自社のブランドは
どういう存在なのか?
を考えるようにしましょう。
2-3-2.商品・サービスの質
では、続いては、商品・サービスの質です。
商品・サービスの質は、顧客満足度に直結し、
- リピーター
- 口コミ
を生むための非常に重要な要素になります。
この商品・サービスの質が低ければ、リピーターも口コミも広がらないため、常に新規集客にコストをかけ続けなければ、事業が成立しないという非常に苦しい状況になってしまいます。
ポイントは、現在の商品が
ブランドイメージを保証するような商品・サービスの質になっているのか?
ということです。
例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、ブランドイメージを
世界最高のエンターテインメントを届けるテーマパーク
に転換させ、上手くいきましたが、これは商品・サービスの質が伴っていたからです。
例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、ONE PIECEのショーも開催していますが、「ONE PIECE」は累計発行部数4億7000部を超える、世界を代表するアニメ・漫画のコンテンツです。
アトラクションも世界最高品質のものばかりです。
例えば、ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニーは、ライド系の世界No.1の賞である、ゴールデン・チケット・アワードの「ベスト・ダーク・ライド」というを5年連続受賞しています。
ブランドイメージというのは、いわば顧客に対する約束です。
世界最高のエンターテインメントを届けるテーマパーク
というブランドイメージを作ったのであれば、商品・サービスの質によってその約束を守る必要があります。
約束を守るからこそ、信用・信頼が生まれ、そのブランドを利用し続けてくれる顧客ができるのです。
もし、今の商品・サービスが、その約束を守れていないとしたら、
どう改善すれば守れるようになるのか?
を考えてみましょう。
この時に自社だけのリソースで考える必要はありません。
自社のリソースには限界があるので、力が足りないのであれば、外部に頼ったり、コラボレーションすることも大事です。
こちらも具体的に実行できそうな施策を書き出してみましょう。
2-3-3.知覚品質
次に、知覚品質について。
知覚品質とは、消費者に伝わっている「品質」のことです。
知覚品質が低ければ、どれだけ実際の商品・サービスの価値は高くても、新規顧客の集客には苦戦します。
例えば、実際に宿泊してみると、料理も美味しいし、部屋も広くて清潔で、温泉もロケーションが良くて、非常に満足度が高い旅館でも、ホームページが古くて、写真も不鮮明で、全体的に暗くて、古い印象を与えているのであれば、
この旅館ってどこか古くて、泊まらない方がいいかも
という印象を与えてしまいます。
まず、知覚品質を向上させるためにやるべきなのは、消費者が商品・サービスの購入を決定するまでにいたる動線を書き出してみることです。
例えば、旅館であれば
- アメブロ
- ホームページ
- じゃらん
- トラベルコ
- 楽天トラベル
- パンフレット
のようにピックアップできるかもしれません。
まず、認識しないといけないのが、上記のメディアの
- 写真
- 文章
- デザイン
のクオリティーが知覚品質を決定しているということです。
公式のInstagramにアップする一つの写真でも、その旅館に対する印象が形成されます。
新規顧客の集客が上手くいかないのは知覚品質が低いからです。
知覚品質が低いかどうか判断できない場合は、自分の事業のターゲットとなる人たちに、自社が所有しているメディアを見てもらって、率直な感想をもらうことです。
そうすれば、メディアの課題が浮き彫りになります。
この中でも特に重要なのはホームページです。
ユーザーは最終的には、ホームページで商品・サービスの内容を確認して、購入を決断するからです。
ホームページはメディアとして、記載できる情報量も一番多く、表現の幅も一番多彩に持たせることができます。
イメージとしては、まずはホームページをリニュアールさせて、そこからポータルサイト、SNS、パンフレットなどを修正していくという流れが一番スムーズで上手くいきます。
2-3-4.従業員満足度
次に、従業員満足度について。
ブランド作りを考える上で、欠かすことができないのが従業員満足度です。
ブランド作りというのは、その組織に所属する一人一人の行動にかかっているからです。
どれだけブランドイメージを再設計しても、商品・サービスの質を改善しても、知覚品質を向上させても、従業員満足度が低ければ、ブランドを築くことはできません。
従業員満足度が低ければ、従業員はお金のためだけに働きます。
そういう従業員は
- いかに楽をして、高い給与をもらうか
- いかに楽をして、出世するか
しか考えていません。
想像してみればわかるのですが、そういう従業員が、顧客を感動させるような振る舞いができたり、会社のピンチを救うような画期的なアイディアを発案したり、リーダーシップを持って、主体的に行動できるわけがないのです。
顧客満足度を形成するのは従業員満足度です。
従業員満足度が高ければ、従業員はブランドのために働きます。
そういう従業員は
- いかにブランドが目指す理想世界を実現するか
- ブランドにふさわしい振る舞いとはどういうものか
- もっとブランドの存在を広めるにはどうすればいいか
ということなどを積極的に考え、行動しようとします。
なので、アンケートやヒアリングを行い、あまりにも従業員満足度が低いのであれば、社内からの改革も必要になります。
リブランディングをするということは、従業員にもブランドの新しい方向性を理解してもらい、それに見合った振る舞いを求めることになります。
どうすれば、従業員の満足度を高め、ブランドの価値体系を理解してもらい、行動してもらえるようになるのかは、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ、ご覧ください。
2-3-5.ブランドの認知度
では、次にブランドの認知度について。
- ブランドイメージの再設計
- 商品・サービスの質の改善
- 知覚品質の向上
- 従業員満足度の向上
が終われば、後は、生まれ変わったブランドとの接点を作る必要があります。
どれだけブランドをリニューアルしても、その存在が認知されていなければ、意味がありません。
ブランドの認知度を拡大させるためには
- ブログ
- Youtube
- SNS広告
- PPC広告
- プレスリリース
- DM
- チラシ
など様々な手段がありますが、まず、重要なのは全ての手段があなたの事業にフィットする訳ではないということです。
というのも、事業によって
- 業界
- ターゲット層
- 使える時間
- 使えるお金
- 使える人材
- コンテンツ形式の得意・不得意
- スキル
などが異なってくるからです。
まずは、それらのメディアの特性を知り、自分の事業との相性も踏まえた上で、一つ選択するようにしましょう。
最初から様々なメディアに手を出すのではなく、一つに絞ることが大事です。
扱うメディア数が多ければ多いほど、時間もエネルギーも分散して、中途半端なメディアしか育たず、全く結果が出ないということになりかねないからです。
まずは
このやり方を続けていけば、結果が出る
という成功パターンを掴むメディアを一つ育ててください。
特に今の時代は、「B to C」であろうが「B to B」であろうが、インターネットのメディアを育てることは非常に重要です。
というのも、「B to B」の事業であっても、企業の情報源はインターネットになっているからです。
トライベック・ブランド戦略研究所の2018年の調査結果では、B to B市場の情報源の第1位がウェブサイトになっています。
- 1位:ウェブサイト
- 2位:営業員の説明
- 3位:カタログ・パンフレット
- 4位:業界サイトや専門サイト
- 5位:専門雑誌
- 6位:テレビ・ラジオ
- 7位:ニュースサイト
- 8位:研修・セミナー
- 9位:展示会
- 10位:専門新聞
- 11位:インターネット上の口コミ
それぞれのメディアの特性の解説は以下の記事で詳しくお話しているので、自分はどんなメディアを育てるべきか悩んでいる人は是非ご覧ください。
クリックしていただけると、メディア解説のパートに飛びます。
また、認知度を上げて、商品・サービスの成約に繋げるために、
このことを考える上ではカスタマージャーニーマップの作成が有効
参考: カスタマージャーニーマップとは?目的や作り方、
3.リブランディングの成功事例
では、最後にリブランディングの成功事例について紹介していきます。
3-1.ヤンマーのリブランディングの成功事例
まず、最初に紹介するリブランディングの成功事例は「ヤンマー」です。
ヤンマーのリブランディングが実施されたのは、ちょうど創業100周年を迎えた2013年でした。
当時、ヤンマーといえば、国内では「ヤン坊、マー坊」の天気予報のイメージと、農業器具を扱っているというのが一般的なブランドのイメージでした。
ですが、実情としては、ヤンマーはグローバル企業で、世界中に数多くの社員が存在し、サービスも海洋、農機、建機と幅がありました。
しかも、海外では「小型船舶向けエンジン」のトップシェアを誇っていたため、「先端的な企業」というイメージがありました。
つまり
- 国内:農業機械(トラクター)、ヤン坊・マー坊
- 国外:船舶エンジン、最先端
というように国内と国外のブランドのイメージがバラバラで、これを統一していくために、アートディレクターの佐藤可士和さんを招聘して、リブランディングを実施しました。
画像出典:https://www.gizmodo.jp/
佐藤さんは、ヤンマーの本質を「テクノロジー×サービス×ホスピタリティ」と定義し、デザインの力で、これまでにはない「最先端で、グローバルな企業」というイメージに一新しました。
画像出典:https://www.yanmar.com/jp/
このリブランディングの事例を見ると、いかにデザインが大切かを思い知ると思います。
ロゴも、農業ウェアも、トラクターも、ボートも、どれを見ても、最先端なイメージが想起されます。
また、このリブランディングに伴い、ヤンマーの強烈な国内のイメージを形成していたヤン坊・マー坊の天気予報はなくなり、国内でも最先端企業としての認知が広がっていくと思われます。
3-2.サンリオピューロランドのリブランディングの成功事例
続いては、サンリオピューロランドのリブランディングの成功事例です。
画像出典:https://www.puroland.jp/
サンリオピューロランド は、1990年に「愛と夢とで、できた国」をキャッチコピーに東京でオープンした、屋内型テーマパークです。
1990年のオープン当初は
- 最先端の技術を使ったアトラクション
- 国内初の360度回転式シアター
- 3D映像を使った体感型アトラクション
なども話題となり、他に類を見ない斬新なテーマパークとしてスタートしました。
1991年には、来場者数は194万8000人を記録しましたが、その後は、来場者数も業績も低迷し続け、2009年度には過去最低の108万5000人を記録します。
そして、サンリオピューロランドの転機となったのは、2014年に、小巻亜矢さんが顧問に就任したことです。
画像出典:https://aria.nikkei.com/
小巻さんが顧問に就任してから、リブランディングを実施し、2014年には126万人だった年間来場者数は右肩が上がりに伸び続け、2018年度には219万人と大台を突破します。
驚くべきことに、2019年の平日の来場者数は、5年前に比べて1日約4倍になります。
まず、大きく変わったのは、メインターゲットでした。
小巻さん就任以前のサンリオピューロランドのメインターゲットは、小さな子どもを連れた家族連れでした。
ですが、コンテンツを全て、子ども向けに作ってしまうと、大人は来なくなります。
なので、このターゲットを、20才前後の学生から30代半ばの働く女性である「F1層」に変更しました。
彼女たちは消費の牽引役であり、SNSのヘビーユーザー層でもあります。
また、その層の人たちに満足してもらえれば、自然と子どももついてきます。
なので、テーマパーク内のコンテンツをそういった「大人女子」向けに作り替えていきます。
例えば、ミュージカルも大きく変わりました。
これまでのピューロランドで上映されているミュージカルは、登場人物も内容も、子ども向けでした。
このミュージカルを大人女子向けにするために
イケメン俳優による2.5次元ミュージカル
というコンセプトを設定しました。
企画開発では、ミュージカル『テニスの王子様』をプロデュースした、株式会社ネルケプランニングにも協力してもらい、2015年6月に、「ちっちゃな英雄」というミュージカルをスタートさせます。
ミュージカルの方針としては、今注目の若手男性俳優を5~7人登場させ、女性役は出しません。
原作は、辻社長のメルヘン作品を使用して、サンリオの理念が伝わるように。
ストーリーテラーは「マイメロディ」です。
その他にも、メインパレードも大人女子向けにリニューアルします。
ピューロランド25周年記念にお披露目された「Miracle Gift Parade(ミラクルギフトパレード)」がそうですね。
画像出典:https://tamapon.com/
大人女子が「かわいい」と思えるように、振り付け、衣装、楽曲、構成から全て見直します。
アートディレクターには、きゃりーぱみゅぱみゅのライブ演出を手がける増田セバスチャンを起用し、参加楽曲の作詞作曲は、ももいろクローバーZなどの楽曲を手がけるヒャダインさんが担当することになりました。
完成度は相当高く、このパレードだけを見にくるお客さんも大勢いるそうです。
また、ピューロランド内のレストランの飲食メニューも大きく変わりました。
大人女子はSNSを日常的に利用している層が多いので、食の安全を最優先にしつつ、野菜で鮮やかな色を出し、「インスタ映えする」メニューを多く追加しました。
画像出典:https://www.puroland.jp/
その他にも、2014年の秋のハローウィンには、ピューロランドで初めて、「Pink Sensation」というオールナイトイベントが開催されました。
「Pink Sensation」は、野外音楽フェスティバル「TAICO CLUB」とのコラボ企画で、人気DJ、アーティストが集まる音楽イベントで、フェスでも、クラブでもない、「仮装パーティー」という位置付けのイベントです。
画像出典:https://spice.eplus.jp/
「オールナイト」という言葉だけでも、明らかにこれまでの「子ども向けのテーマパーク」というイメージが払拭されると思います。
こういった改革により、ピューロランドは「サンリオのキャラクターが好きな子ども向けのテーマパーク」というブランドイメージを脱却して、「大人女子」に響くテーマパークとしてV字回復を果たしました。
その他のリブランディングの成功事例については、以下の記事でも紹介しています。
4.リブランディングに取り組もうと思っている全ての方へ
今回の記事ではリブランディングについての基礎知識、方法、成功事例をご紹介してきました。
リブランディングは
- 業績不振
- ブランドの劣化
- 社会情勢の変化
などのタイミングで必ず必要になってくるものだと思います。
なので、もし、今、あなたの会社が、リブランディングをするタイミングであれば、この記事が何かの参考になると幸いです。
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