日本企業の離職率の平均とは?離職率が高まる要因や計算方法について徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「離職率とは?」
「日本企業の平均離職率はどれくらい?」
「離職率を下げる方法を知りたい…」
加速度的に高まる労働人口の減少と雇用の流動化が進む日本において、離職率が低い組織を作ることは会社を繁栄発展させていくために必須条件です。
どれだけ今の時点で業績が高かったとしても、離職率が高ければ、長期的には
- 商品・サービスの品質の低下
- 生産性の低下
- モチベーションの低下
- 新規採用の難易度向上
- コストの増加(採用・教育費用など)
などに繋がっていきます。
具体的にいうと、まず、離職率が高ければ、高度な知識や経験や実績を持つスタッフが会社を去ることにつながることで生産性が下がります。
そして、残された従業員は
毎年多くの人が辞めていく、この会社にいていいのだろうか。将来は大丈夫なのか?
という余計な不安を抱くことに繋がり、仕事へのモチベーションが下がります。
また、会社とわだかまりを残したような形で離職する従業員が多い場合は、インターネットで悪い口コミを書かれてしまって、新規採用に苦労することになり、せっかく採用してもすぐに辞めていくような会社であれば、採用・教育コストが高まり続けることになってしまいます。
特に今の日本は労働人口が加速度的に減っている状況なので、働きがいが低い会社はどんどん選ばれにくくなります。
「離職率」は、どの企業も長期的に組織運営する上で必ず向き合わないといけない課題です。
今回は「離職率」をテーマに「日本企業の離職率の平均とは?離職率が高まる要因や計算方法」というタイトルで解説したいと思います。
この記事を読んでいただければ、離職率の全般的な知識だけでなく、離職率が高まる原因や離職率を劇的に下げるための方法についても解説をしていきたいと思います。
ぜひ、最後までお読みください!
目次
1.離職率とは
では、まずは「離職率とは何か?」について解説をしていきたいと思います。
1-1.離職率とは何か?
離職率とは、厚生労働省の雇用動向調査に基づく定義によると
常用労働者数に対する離職者の割合
のことです。
常用労働者とは
- 期間を定めずに雇われている者
- 1か月以上の期間を定めて雇われている者
という2つの条件を満たしている労働者のことです。
1-2.離職率の算出方法
離職率は
離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100%
という算出方法によって導き出すことができます。
例えば、2022年1月1日時点で100名が自社に在籍をしていて、このうち10人が1年以内に辞めるとします。
この場合の1年以内の離職率は
10÷100×100%=10%
という計算方式になり「離職率10%」と導き出すことができます。
1-3.離職率が注目される背景
また、今、日本で「離職率」という指標に大きな注目が集まっているのは「採用活動の難易度が上がっている」ことが関係しています。
採用活動が年々難しくなっているのは
- 少子高齢化による労働者不足
- 雇用形態の流動化
- リアルな労働環境に対する評価の可視化
という3つの現象が進んでいることに起因しています。
まず、一つ目が少子高齢化による労働者不足です。
2022年の日本の出生数は「79万9728人」で、1889年以来初の80万人を割り込むという結果になりました。
1947年から1949年の第一次ベビーブームの時代は毎年250万人以上の出生数を誇っていましたが、1975年に200万人を割り込み、1984年には150万人を割り込み、2016年に100万人を割り込み、右肩下がりの減少が続いています。
結果として、内閣府の予測では、2060年には、日本の人口は8674万人にまで減少すると言われています。
画像出典:https://www8.cao.go.jp/
これは毎年これから日本では100万人の日本人がいなくなるということです。
しかも、その頃になると、人口の50%以上は60歳以上です。
少子高齢化の問題については50年以上も前から指摘されてきましたが、今もなお抜本的な解決策は見つかっておらず、このままのペースで日本は労働人口が減少し続ける可能性が高くなります。
労働人口が減少していけば、求職者(売り手)の立場が強くなり、
働くのであれば、こんな職場で働きたい!
と思われない会社は、人材の確保に苦労するでしょう。
特にその際に参考とされる指標が「離職率」です。
離職率が高い企業はどうしても、求職者に
人材が定着しない、ブラック企業なのではないか?
と先入観を持たれてしまい、採用活動に不利になってしまいます。
そして、日本では「終身雇用制度」は崩壊し
一つの企業で最後まで勤め上げよう
と考えている人は少なく、基本的には転職することをベースに人生設計を組み立てている人が多いです。
なので、昔に比べると、どの企業も人材の出入りは激しくなっている傾向にあり、そういった転職希望者にも「離職率が高いかどうか」は一つの指標として参考にされます。
また、今は実際にその職場を離職していった人たちのリアルな口コミを転職サイトなどで見ることができます。
離職率が高い要因は様々考えられますが、
- 業務量が過剰過ぎて、心身が壊れた
- パワハラ・モラハラが横行している
- 上司に仕事のミスの責任をなすりつけられた
- 休日出勤が当たり前な割に給与が低い
といった
企業の組織体制が原因で離職率が高まっているんだな
と思われるような口コミが書かれてしまっている場合は、さらに求職者から敬遠されてしまうでしょう
2.離職率のメリットとデメリット
続いては「離職率が低いことで生じるメリット」と「離職率が高いことで生じるデメリット」について解説をしていきたいと思います。
2-1.離職率が高いことで生じるデメリット
では、まずは離職率が高いことで生じるデメリットについて解説をしていきます。
2-1-1.採用&教育コストが高騰する
離職率が高まると、採用&教育コストが高騰します。
まず、従業員が離職するということは、その人に投資してきた
- 採用コスト
- 教育コスト
の2つが無駄になるということです。
そして、その離職した従業員の穴を埋めるためには、新しい従業員を採用して、同等レベル以上の仕事ができるように教育する必要があるので、更にコストがかかってくるという訳です。
採用してから離職するまでの期間中に投資したコスト分が回収できていると良いのですが、離職率が高いと、回収する前に会社を去ってしまう場合が多いので、会社にとっても損失につながります。
それに加えて、離職率が高い職場は
この会社で働いても本当に大丈夫なのか?
と余計な不安を与えることになり、求職者から避けられる傾向にあるので、一人当たりの採用コストも上昇していきます。
2-1-2.生産性や顧客満足度が下がり、業績が悪化する
また、離職率が高まると、生産性や顧客満足度が下がり、業績悪化に繋がっていきます。
基本的に離職は、適切な意思決定や判断ができる優秀な人材から始まっていきます。
仕事ができる優秀な人材は、給与などの条件だけでなく、働きがいに敏感です。
彼らは他の環境に移っても活躍できる能力を備えているので、今の会社に対して
- 自分の思うように仕事ができない
- この会社で働いていても、楽しくない
- 出勤するのが億劫
というような不満を持つようになれば、環境を変えればいいと判断するので、あっさりと離職してしまいます。
離職率が高まっていくと、そういった優秀な人材からいなくなってしまい、会社に残るのは、意欲が低く、主体性がない従業員ばかりになります。
彼らは基本的には、他の会社に行っても活躍できる自信がないため
今の職場に不満はたくさんあるけど、生活のためには我慢して働くしかない
という消極的な理由で働いています。
会社から適切な意思決定や判断ができる優秀な人材が去り、そういった消極的な動機で働く従業員ばかりになると、当然ですが、生産性も顧客満足度も下がり、長期的には、業績悪化に繋がっていきます。
2-1-3.社内の雰囲気が悪くなり、離職が当たり前になる
また離職率が高まり
離職することが当たり前
という雰囲気が社内全体で広がっていくと、更に離職率が悪化していきます。
特に
- 社長の全面的な支援を受けて、独立するから
- 親の介護で一時的に離れるだけ
- 結婚が決まって、他府県に引っ越すから
といった誰もが納得できる理由で離職するのではなく、
- 毎日繰り返される上司からの厳しい叱責が嫌になった
- ノルマが厳しすぎて、何も告げずに急に会社に来なくなった
- 給与や待遇に対して不満を持っていた
というような理由で離職されてしまうと、職場の雰囲気が非常に悪化します。
というのも、上記のような理由で離職されると、
その従業員がなぜ離職することになったのか?
という説明を正面からできないからです。
離職した理由を隠して、業務の引き継ぎだけを行うと、更に組織に対する信頼が損なわれ、離職率が上昇するという負のスパイラルにはまっていきます。
2-2.離職率が低いことで生じるメリット
では、次に「離職率が低いことで生じるメリット」について。
2-2-1.生産性が高まり、業績が向上し、経営が安定する
一般的に離職率が低い職場は、意欲が高く、真剣に仕事に向き合っている従業員が多いため、一人当たりの生産性が高くなる傾向にあります。
また
今の会社で働けていることが幸せだ
と考えている従業員は、会社に対してもっと貢献しようという意識が強いので、離職率が高い会社と比べると、業績も格段に変わってくる場合が多いです。
それに加えて、適切な意思決定や判断ができる優秀な人材が辞めないことも非常に大きいです。
離職率が高い会社は、そういった適切な意思決定ができる優秀な人材から辞めていってしまうので、最終的には
社長がいないと会社が回らない
という歪な組織構造になってしまう可能性が高いです。
ですが、離職率が低いと、優秀な人材が社長の分身となって働いてくれるので
社長がいなくても会社が回る
という状態を作り出すことができ、会社の経営全体が安定していきます。
2-2-2.企業イメージが向上し、優秀な人材の確保ができる
また、離職率が低いと、企業イメージが向上して、優秀な人材の確保が比較的容易になります。
例えば、「就職したい人気企業ランキング」の上位に軒並みランキングしていて、ホテル・レストランなどを運営する「Plan・Do・See」という企業があります。
この企業は非上場で、採用のプロモーション活動もほとんど行っていないにも関わらず、毎年エントリー数は平均5~6万人を誇り、企業説明会には約2万人を動員するなど、求職者が殺到しています。
ここから実際に採用されるのは0.1%以下で、能力や人柄はもちろんのこと、Plan・Do・Seeの理念に共感している優秀な人材を厳選して集めることができます。
離職率が低く、多くの求職者が「働きたい!」と思わず言ってしまうような職場環境を作れると、それだけ優秀な人材を集めやすくなるということです。
そうなっていくと、採用コストだけでなく、教育コストも削減していくことができます。
2-3.離職率に対するよくある誤解
ただし一概に
離職率が高いから悪い会社である
離職率が低いからいい会社である
とは言い切れないということは一つ注意しておいてください。
重要なのは、
- なぜ、離職率が高いのか?
- なぜ、離職率が低いのか?
という理由です。
例えば、
社会に高い価値を還元できる起業家を世の中に多く送り出したい。だから、基本的には、5年以内に価値を生み出す仕事の仕方を学んでもらって、それ以降は独立や転職を推奨する
という会社の方針があって、離職率が高いのであれば、問題ないでしょう。
こういう会社は働きがいも高く、業績も高い場合が非常に多いです。
一方で、
- 今の仕事は嫌いだけど、生活のためには辞めれない
- 転職したら給料が下がりそうだから仕方なく働いている
- 残業が少なくて、ノルマも厳しくないから働いている
というような消極的な理由で離職率が低ければ、問題があるでしょう。
こういった消極的な理由で長く在籍している従業員が多いのであれば、一人当たりの生産性も低いでしょうし、従業員満足度も低いので、採用市場においても有利に働きません。
3.日本企業の平均離職率とは
では、続いて、日本企業の平均離職率について解説をしていきたいと思います。
3-1.日本企業全体の平均離職率
日本企業全体の平均離職率は厚生労働省が発表している「2021年(令和3年) 雇用動向調査結果の概況」では「13.9%」と出ています。
また平均離職率は
- 性別
- 雇用形態
- 学歴
- 業界
などの属性によっても違っていきます。
3-2.男女別の平均離職率
具体的には、男性の平均離職率は「12.8%」で、女性の平均離職率は「15.7%」となっています。
3-3.雇用形態別の平均離職率
雇用形態別では、一般労働者が「11.1%」で、パートタイム労働者の離職率は「21.1%」です。
3-4.学歴別の平均離職率
また、離職率は学校を卒業したばかりの新社会人は比較的高い傾向にあり、厚生労働省が令和3年に発表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、新社会人の3年以内の離職率は
- 中学卒:55%
- 高校卒:36.9%
- 短大卒:41.4%
- 大学卒:31.2%
となっています。
画像出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11652000/000845829.pdf
3-5.業界別の平均離職率
また、平均離職率は業界によっても異なります。
厚生労働省が発表している「令和4年上半期雇用動向調査結果」によると、業界別の平均離職率は
画像出典:https://www.mhlw.go.jp/
- 宿泊業、飲食サービス業:15.0%
- 教育、学習支援業:12.2%
- サービス業、他に分類されないもの:11.1%
- 生活関連サービス業、娯楽業:10.0%
- 医療、福祉:9.9%
- 卸売業、小売業:8.0%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:7.5%
- 複合サービス事業:7.4%
- 学術研究、専門・技術サービス業:6.6%
- 運輸業、郵便業:6.4%
- 情報通信業:6.4%
- 製造業:5.5%
- 金融業・保険業:4.7%
- 建設業:4.5%
- 鉱業、採石業、砂利採取業:3.8%
となっています。
4.離職する理由ランキング
では、続いては従業員が離職する理由についてお伝えしていきます。
求人情報メディアの運営をしているエン・ジャパン株式会社は2022年にユーザーを対象に「本当の退職理由」についてアンケートを実施し、10,432名から回答を得たアンケート調査があります。
画像出典:https://corp.en-japan.com/
それによると、全世代の離職理由のランキングは
- 第1位:職場の人間関係が悪い
- 第2位:給与が低い
- 第3位:会社の将来性に不安を感じた
- 第4位:社風・風土が合わない
- 第5位:評価・人事制度に不満があった
- 第6位:仕事内容が合わない
- 第7位:残業・休日出勤が多かった
- 第8位:福利厚生他・待遇が悪い
となっています。
5.離職率が高い会社の特徴と原因
では、続いては離職率が高い会社の特徴と原因について。
5-1.離職率が高い会社に共通している特徴
離職率が高い会社の特徴について検索してみると
- 人間関係でストレスが溜まる
- 給与や待遇が悪い
- 正当に評価されてると感じない
- 勤務時間が長く、残業が多い
- ハラスメントが横行している
- 業務内容にやりがいを感じない
- 多様性が認められない
- 教育やフォロー体制の不備
- 休暇がとりにくい
- 働き方の選択肢が少ない
- キャリアアップが見込めない
- 会社の将来性が見えない
といったことが出てきます。
これは先ほど紹介したエンジャパンの「本当の退職理由」についての調査結果とも共通しているので、離職率が高い会社には上記のような特徴があるのでしょう。
5-2.離職率が高まる本当の原因とは?
ですが、上記のような特徴は、離職率が高まる本当の原因ではありません。
離職率が高くなる根本的な原因は「メンバーのオーナーシップが低いこと」にあります。
オーナーシップとは
私は状況を所有している、コントロールしている、変えることができる
と思えている感覚のことです。
例えば、メンバーの一人が
子ども生まれたし、もっと自分の給与が上げていきたいな
と思うようになったとします。
オーナーシップが低い組織に所属をしていると、
とはいえ、そんな希望を口に出しても、この会社で給与が上がるわけないもんな。そんなこと言ったら社内での立場も悪くなるし、上司に怒られそうだから言うのはやめておこう
というような思考になります。
一方で、オーナーシップが高い組織に所属をしていると
どうすれば今の給与を希望額に上げていけるのかを一度、上司に相談してみよう。この会社では自分の頑張りと結果次第で給与は上げていけるから積極的に行動すればいい
というような発想になります。
この場合、今もらっている給与額が高かったとしても、オーナーシップが低い組織の方が離職率は高まるでしょう。
なので、給与額が低いからといって、それが離職率の高さに直結するわけではないと言うことです。
それよりも「給与を上げたい」という願望を抱いた時に、給与額を上げていけるルートを知っていて、
自分の行動次第で、コントロールすることができる
と思えている環境を整えているかどうかの方が重要です。
離職する理由の第1位である「職場の人間関係が悪い」ということもそうです。
性格的な相性などの問題で、上司や今所属しているチームでうまく活躍出来ないと思った時に、その事情を率直に口に出すことで、本人の配置換えや関係改善の方向に進むのであれば、たとえ、今関係性が悪いとしても離職することはないでしょう。
日本企業の実情としては、そんなことすら口に出せない組織の方が多いです。
メンバーのオーナーシップが低いのは、経営者が悪いわけでも、従業員が悪いわけでもなくて、組織構造上の問題です。
組織において、オーナーシップの度合いは、その人に与えられている
- 情報
- 権限
- 責任
の大きさによって決まります。
一般的に多くの組織では「トップダウン型」と呼ばれる組織マネジメントの方式が採用されていると思います。
このトップダウン型組織では、優秀なリーダーがトップに就任すれば、短期間で効率的に大きな結果を出すことができるというメリットがあるのですが、一方で、階層によって与えられている「権限・情報・責任」に大きな差があるという特徴も備えています。
トップダウン型組織であれば、最もオーナーシップを持っているのはトップの経営者です。
経営者は組織内の誰よりも「権限・情報・責任」を与えられているので
- 今年の売上目標
- 評価制度や給与の決め方
- 働く場所や時間
- 働き方や社内ルール
- 役職の任命
- 新規事業の内容
など、さまざまな領域に関して自分の興味・関心に従って自由に決めることができます。
人は誰かからの指示・命令ではなく、自分の興味・関心によって動いているときに最も意欲高く行動できるので、トップダウン型組織では、経営者が誰よりも熱量高く働いています。
ですが、他の階層のメンバーは経営者ほどの「権限・情報・責任」を与えられておらず、オーナーシップも低いため、そうはいきません。
特に階層の一番下のメンバー層は与えられている「権限・情報・責任」が少ないので、あらゆる意思決定に関わることすらできません。
なので、メンバーが
もっと公平に評価がされるように人事評価制度を改めてほしい
給与や待遇を改善してほしい
残業が多いから働き方を効率的に変えたい
と思っていたとしても、口にすら出せないことがほとんどです。
たとえ、このような希望を言ったとしても、与えられている「権限・情報・責任」があまりにも少ないので、効果的な提案ができずに却下だけされる場合がほとんどです。
そうなってしまうと、メンバーは
どうせ口に出しても状況が変わらないなら、黙って言うことだけ聞いておこう
となっていき、仕事に対して消極的に向き合うようになり、意欲も下がり「仕事は生活のため」と割り切るようになってしまいます。
実際にトップダウン型組織がほとんどの日本企業で働く社員は
- 熱意ある社員:6%
- 熱意が低い社員:71%
- 熱意が全くない社員:23%
という事態に陥っています(米ギャラップ社による日本企業の社員エンゲージメント調査)。
たとえ、今の時点で、メンバーから
- 人間関係でストレスが溜まる
- 給与や待遇が悪い
- 正当に評価されてると感じない
- 勤務時間が長く、残業が多い
- ハラスメントが横行している
- 業務内容にやりがいを感じない
- 多様性が認められない
- 教育やフォロー体制の不備
- 休暇がとりにくい
- 働き方の選択肢が少ない
- キャリアアップが見込めない
- 会社の将来性が見えない
といった不満があったとしても、すぐに声を上げることができて、その状況を改善できるオーナーシップが高い組織であれば、離職率は低くなるということです。
6.離職率を下げる方法
では、最後に離職率を下げる方法について解説をしていきたいと思います。
離職率を下げる方法として
- 人事評価制度を見直す
- 1 on 1ミーティングを開催してコミュニケーションを取る
- モチベーションアップなどの人事研修を取り入れる
- 休みが取りやすいように仕事のやり方を見直す
- 人材管理システムを導入して原因を調べる
- 経営の全体像を伝えるための全社ミーティングを開催する
といったことが一般的に挙げられていると思います。
ですが、こういった方法はあくまでも部分的な対処法であって、離職率が低くなる根本的な解決方法にはなっていません。
というのも、先ほどもお伝えしたように離職率が高まる本当の原因は「メンバーのオーナーシップが低いこと」だからです。
メンバーのオーナーシップが低いという組織構造を続けている限り、短期間のモチベーション研修を導入しても、効果は持続せずにすぐに戻ってしまいます。
なので、本当に離職率を下げていきたいのであれば、メンバーシップが自然と高まるような組織構造へと転換する必要があります。
そこで、参考になるのが「セルフマネジメント型組織」と呼ばれる、次世代型組織の運営モデルです。
セルフマネジメント型組織とは、メンバーのオーナーシップを最大限高めることを志向した組織です。
従来のトップダウン型組織では、リーダーとメンバーの役割が
- リーダー:計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任
- メンバー:実行
という風に明確に分けられていました。
この場合、多くの権限と責任を与えられているリーダーだけが、様々な意思決定領域に介入でき、他のメンバーはそういった「情報・権限・責任」がないので自然とオーナーシップが低くなるという構造をとっていました。
そこで、セルフマネジメント型組織では、リーダーとメンバーの役割を
- リーダー:メンバーの意思決定と目標達成のサポート
- メンバー:計画・意思決定・行動管理・結果責任
という風に転換させます。
つまり、メンバーはリーダーのサポートを受けながら、最終的には従来リーダーが担ってきた「計画・意思決定・行動管理・結果責任」という役割を自らで行えるように目指していくということです。
トップダウン型組織は、一部の優秀なリーダーが全ての意思決定に介入し、メンバーの管理を行い、結果責任を引き受けることで成果を上げようとしますが、セルフマネジメント型組織では、リーダーがメンバーのサポートに入り、
メンバーに任せても最高の結果が手に入る
ようにすることを目指します。
もちろん、最初からメンバーに、全ての意思決定可能領域を解放していく訳ではありません。
いきなり解放したとしても、メンバーには意思決定の能力やリテラシー、結果責任を引き受けるというコミットメントの意識が低ければ、良い結果は出ないからです。
なので、最初は、
- 組織全体に大きな影響がない
- リテラシーもそれほど必要がない
という領域から任せていきます。
例えば、最初から会社全体の売上目標や人事評価・給与制度などの領域に介入させるのではなく、MTGの進め方や日報の書き方などの領域から任せていくというようなイメージです。
また、任せるといってもメンバーに丸投げするという訳ではなく、適切な意思決定と目標達成をするためのサポートはリーダーが行うので、優秀なリーダーの仕事の感覚をメンバーに移していくことが可能になっていきます。
メンバーの意思決定可能領域を解放していくと、自然とオーナーシップが高まり、メンバーの意欲が高まっていきます。
そして、
- 意思決定に必要な情報を読み解くこと
- 自分で意思決定をすること
- 自分の行動管理をすること
- 結果責任を引き受けること
を繰り返していく過程で、失敗も成功も経験しながら、メンバーは飛躍的に成長をしていきます。
実際に、組織の在り方をトップダウン型組織からセルフマネジメント型組織へと移行しただけで、新入社員が生み出す年間の付加価値総額が2倍になったという企業もあります。
そうして、メンバーが飛躍的に成長し、主体性を持って仕事ができるようになっていくと、いちいちリーダーが計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任を引き受けることをしなくても、最高の結果が生まれるようになっていきます。
実際に国内でもセルフマネジメント型組織へ移行することで
- 離職率30%の業界で離職率3%を実現し、単月売上最高1300万円から2000万円に大幅アップ
- 3年以内の新卒離職率50%から3%になり、従業員一人当たりの売上が過去最高に
- 離職率17%から0%になり、売上も1500万円アップ
- 採用コストが1500万円から400万円にダウンし、売上昨年対比150%を実現
といったような結果も出ています。
メンバーのオーナーシップを高め、離職率を下げながら、業績も高い組織を作ることは可能です。
こういったセルフマネジメント型組織の作り方については「セムコスタイルとは何か?業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説」でも詳しく解説しているので、ぜひ、ご覧ください。
7.離職率を下げたいと思っているすべての方へ
今回の記事では、離職率の平均や計算方法や離職率が高まる原因、離職率を下げるための方法について様々な角度でお伝えしました。
ぜひ、今回の記事を読んで、自社の組織運営を見直すきっかけにしていただけると幸いです。
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