離職率が高い会社の特徴・原因とは?定着率が飛躍的に上がる方法も徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「離職率が高い会社の特徴とは?」
「離職率が高まってしまう原因は?」
「どうすれば離職率を下げることができるのか?」
どれだけ今、業績が高いとしても、組織全体として離職率が高いとその会社の行末は安泰だということはできません。
というのも、離職率が高いということは、
- 適切な意思決定ができる
- 結果にコミットする
- 仕事に対する意欲が高い
という優秀な人材から会社を去っていくことを意味しているからです。
そういった優秀な人材は今の職場でなくても活躍できる場所はたくさんあり、独立・起業しても上手くやっていくことができる自信があるが故に、今の会社の環境や働きがいに人一倍敏感です。
離職率が高い会社は、そういった優秀な人材の多くが去ってしまい
- 指示待ち
- 思考停止
- 主体性がない
といった消極的な姿勢のメンバーばかりが残ってしまい、
社長がいないと会社が回らない
というような状況に陥ってしまいます。
なので、会社を繁栄・発展させたいのであれば、業績が高いだけでなく、高い働きがいを実感できて、離職率が低い組織を目指すことが大切です。
実際に、長期的に繁栄・発展している企業は「業績も高く、離職率が低い」というところが多いです。
今回は「離職率が高まる原因と離職率を下げる方法」について解説したいと思います。
この記事を読んでいただければ、離職率に関する基礎的な知識や離職率が高まる原因だけでなく、離職率を下げるための方法についてもかるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
目次
1.離職率とは?
では、まずは「離職率とは何か?」について詳しく解説をしていきたいと思います。
1-1.離職率の意味
離職率とは厚生労働省の定義によると
常用労働者数に対する離職者の割合
を意味します。
具体的には
離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100%
で算出することができます。
例えば、1月1日の時点で、200名が在籍していて、このうちの15人が1年以内に辞めたとします。
この場合の1年以内の離職率は
15÷200×100%=7.5%
になります。
1-2.離職率と定着率の違い
また、離職率と併せてよく話題になるのが「定着率」です。
「定着率」は離職率と反対の概念で
入社した社員が一定期間の中でどれだけ会社に在籍しているのか?
を示す割合のことです。
定着率の計算方法は
一定期間後に在籍している人数 ÷ 採用時の人数 × 100%=定着率
となります。
例えば、新入社員として10名を採用し、3年以内に5名が辞めたとします。
この場合の計算式は
5÷10=50%
となり、この会社の3年以内の定着率は50%となります。
1-3.離職率の平均について
では、日本における離職率の平均はどれくらいなのか?
厚生労働省が発表している「2021年(令和3年) 雇用動向調査結果の概況」によると、日本全体の離職率の平均は「13.9%」です。
まず、この離職率の平均値というのが一つの基準にはなりますが、離職率の平均というのは、業界によって異なりますし、年齢や性別によっても異なります。
例えば、学校を卒業したばかりの新卒の社会人の離職率は高い傾向にあり、厚生労働省が2022年に発表している新卒の3年以内の離職率は
- 新規高卒就職者35.9%
- 新規大卒就職者31.5%
となっています。
また、業界によっても離職率の平均値は変わります。
厚生労働省が発表している「令和3年上半期雇用動向調査結果」によると、産業別の離職率は以下の通りです。
画像出典:https://www.mhlw.go.jp/
少しわかりにくいと思うので、ランキング形式にすると、
- 宿泊業、飲食サービス業:15.6%
- 教育、学習支援業:12.4%
- 生活関連サービス業、娯楽業:11.0%
- サービス業、他に分類されないもの:9.7%
- 医療、福祉:8.6%
- 学術研究、専門・技術サービス業:7.6%
- 卸売業、小売業:6.9%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:6.7%
- 鉱業、採石業、砂利採取業:5.8%
- 運輸業、郵便業:5.2%
- 製造業:5.1%
- 建設業:5.0%
- 情報通信業:5.0%
- 複合サービス事業:4.7%
- 金融業・保険業:4.3%
となります。
1-5.離職率と併せて把握しておくべきこと
また、離職率について考える際に
離職率が低いから良い会社
離職率が高いからダメな会社
とは一概に言い切れないことにも注意が必要です。
例えば、離職率が低かったとしても、社員の生産性が低く、業績も低いというような企業もあります。
一方で、離職率が高かったとしても、従業員満足度が高く、社員の生産性も高く、業績も高いため、社員からの採用紹介が自然と発生しているような企業もあります。
なので、まずは
どんな会社を理想だと考えるのか?
を経営者が明確にした上で、離職率と併せて
- 業績
- 従業員満足度
- 生産性
などの指標も同時に把握しておく方が、今の自社の組織状態や課題というのが明確になっていきます。
2.離職率が高くなるデメリット
では、続いては、離職率が高くなるデメリットについてお話していきたいと思います。
2-1.採用&教育コストが無駄になる
まず1つ目は「採用&教育コストが無駄になる」ということです。
社員が離職するということは
- その社員を採用するためにかかったコスト
- その社員を教育したコスト
の2つが無駄になってしまうということです。
もちろん、その社員が働いている期間中にそのコスト分が最低でも回収できていると良いのですが、離職率が高いと、回収する前に会社を去ってしまうので、会社にとっても大きな損失につながります。
特に3年以内の新卒離職率がどれくらい高いのかは注目するべき指標です。
例えば、仮に新卒のスタッフが1年以内にほとんど辞めるような場合は、採用コストと教育コストの多くが無駄になっており、それが業績悪化に直結している可能性が非常に高くなります。
2-2.指示待ちの従業員が多くを占めるようになる
また、離職は、適切な意思決定や判断ができる優秀な人材から始まっていきます。
いわゆる「仕事ができる人材」というのは、そこから独立したり、他の会社へ行ったとしても活躍できる可能性が高いからです。
特に
- やりがいを実感できない
- 仕事をやっていても楽しくない
- 出勤するのが億劫
というように働きがいに問題を抱えている場合、この傾向が強まります。
なので、離職率が高まっていくと組織に残るのは、リーダーの意思決定や指示命令を忠実に守るだけの主体性のないメンバーばかりになります。
彼らは、たとえ働きがいに問題を感じていたとしても、そもそも仕事に対する熱量が低く、転職・独立などをしたとしても上手くいかない可能性が高いので、
生活のため仕方なく
という消極的な理由で会社に残り続ける場合が非常に多いです。
そうすると、様々な意思決定や判断を全て、経営者が介入しないと会社が回らないようになってしまい、「経営者の意思決定率100%」というようにリーダー層の仕事の負担も非常に大きくなってしまいます。
2-3.雰囲気が悪くなり、離職が当たり前になる
また、離職率が高まり
短期間で離職することが当たり前
というような雰囲気が社内全体で醸成されるようになると、離職率は更に悪化していきます。
離職していく社員が
- 次のステップに向かうために社長の全面的な応援を受けて
- 結婚を機に、社長や社員に祝福されながら
離職するという場合であれば問題ないのですが
- 上司からのパワハラを受けて、鬱になった
- 働きがいを実感できず、何も告げずに飛んでしまった
- 仕事内容や給与・待遇面で不満を持っていた
というような理由で離職されてしまうと、職場の雰囲気は非常に悪くなってしまいます。
というのも、上記のような理由は、残された社員に対して、
その社員がなぜ離職することになったのか?
について説明ができないからです。
そして、理由の説明もなく、業務の引き継ぎだけが淡々と行われた結果、組織に対する信頼が更に損なわれると、離職の文化が更に加速するようになってしまいます。
2-4.業務がスムーズに進まなくなり、業績が悪化する
また、離職率が高まっていくと、きっちりと自分に与えられた役割を果たすメンバーからいなくなってしまうので、業務がスムーズに進まなくなります。
特に離職率が高まっている中でも
優秀な人材から辞めていく
という状態になっている時は要注意です。
- 適切な意思決定ができる
- 結果にコミットする
- 目標を達成できる
という特徴を備えて、替えの効かない人材になっている場合、その人が抜けてしまった穴を埋めていくのは至難の業になってきます。
仮に、新しいスタッフを雇ったとしても、基本的には0から教育がスタートするので、そこにもコストがかかってしまい、結果的に、どんどん業績が悪化していきます。
2-5.企業イメージが悪化し、人材確保が難しくなる
そして、離職率が高まっていく中で
- 上司からのパワハラを受けて、鬱になった
- 働きがいを実感できず、何も告げずに飛んでしまった
- 仕事内容や給与・待遇面で不満を持っていた
といった理由でその会社に対して不満を持った状態で辞めていくメンバーが後を立たなくなってしまうと、企業イメージが悪化します。
特に今の時代は、インターネットがあり、匿名であれば、誰でもその会社の口コミを投稿できるので、会社に対する不満というのはすぐにバレるようになっています。
なので、円満退職ではない離職者が増えると、次の人材確保も難しくなり、採用コストが高騰してしまって、さらに経営は苦境に立たされてしまいます。
3.離職率が高い会社の特徴と原因
では、次に、離職率が高くなる会社の特徴と、離職率が高まってしまう原因について解説をしていきたいと思います。
3-1.一般的な離職率が高い会社の特徴と原因
高い会社の特徴や離職率が高まる原因を調べると
- 勤務時間が長く、残業が多い
- 人間関係でストレスが溜まる
- ハラスメントが横行している
- 正当に評価されてると感じない
- 業務内容にやりがいを感じない
- 給与待遇が悪い
- 多様性が認められない
- 教育やフォロー体制の不備
- 休暇がとりにくい
- 働き方の選択肢が少ない
- キャリアアップが見込めない
- 企業の将来性が見えない
といったことが一般的に挙げられています。
確かにこういった特徴を持っている組織は、一般的に離職率が高まる傾向にあると思います。
3-2.離職率が高まる本当の原因とは?
ですが、前述の項目というのは、あくまでも問題の表層であり、離職率が高い本当の原因ではありません。
離職率が高いのは
メンバーのオーナーシップが低い
ことが原因です。
オーナーシップとは
私は状況を所有している、コントロールしている、変えることができる
と思えている感覚のことです。
多くの組織ではこのオーナーシップを社長やリーダー層は感じることができていますが、一般社員などのメンバー層は感じることができないという構造になっています。
組織において、このオーナーシップの度合いは、その人に与えられている
- 情報
- 権限
- 責任
の大きさによって決まります。
一般的に会社というものは、経営者を頂点としたピラミッド階層構造型の「トップダウン型組織」と呼ばれる組織体制になっていると思います。
このトップダウン型組織は
リーダの意思決定にメンバーが従う
という全体原則のもとで運営がされています。
そして、このトップダウン型組織の大きな特徴は、階層によって与えられている「情報・権限・責任」の度合いが違うため、階層によってオーナーシップの差が生じてしまうということです。
会社で最もオーナーシップを持っているのは社長です。
社長は誰よりも多くの「情報・権限・責任」を与えられているので、自分の興味・関心に従って
- 売上目標
- 評価制度や給与の決め方
- 働く場所や時間
- 働き方や社内ルール
- 役職の任命
など、様々な事柄に関して、最大の権限を持って、組織を自由に変えることができます。
人は自分の興味・関心に従って、行動できている時ほど意欲が高い状態でいれるので、社長が最も熱意高く働いているのが一般的な会社組織だと思います。
ですが、一般社員はそうはいきません。
一般社員には「情報・権限・責任」が与えられていない場合が多く、先ほどあげたような項目に関して
こんな風に変わったらな
と思って、行動したとしても、状況が変わらないことがほとんどです。
例えば、一般社員の方が
給与をもっと上げてほしい
ちゃんと自分の評価が正当にされるように評価制度を改めてほしい
今の担当業務が自分の強みを発揮できないので、変えてほしい
もっと働き方の多様性を認めてほしい
といったことを思ったとしても、変えられないことがほとんどです。
これがオーナーシップが低いという状態です。
人は
状況を変えたいけど、自分が行動しても状況が変わらない
という状況に長期間置かれてしまうと、意欲が段々下がってきて、それが離職という形に現れていきます。
「セムコスタイルとは何か?業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説」でも詳しく解説をしましたが、これはトップダウン型組織という組織構造をとっている限り、構造的に起こってしまいます。
今、日本では、ほとんどの企業がトップダウン型組織という組織構造を取っていますが、結果として、日本企業で働く社員は
- 熱意ある社員:6%
- 熱意が低い社員:71%
- 熱意が全くない社員:23%
という事態に陥っている(米ギャラップ社による日本企業の社員エンゲージメント調査)のだと思います。
これが離職率を高めてしまう根本原因です。
仮に今、会社に所属をしている従業員が
- 勤務時間が長く、残業が多い
- 人間関係でストレスが溜まる
- ハラスメントが横行している
- 正当に評価されてると感じない
- 業務内容にやりがいを感じない
- 給与待遇が悪い
- 多様性が認められない
- 教育やフォロー体制の不備
- 休暇がとりにくい
- 働き方の選択肢が少ない
- キャリアアップが見込めない
- 企業の将来性が見えない
というような不満を持っていたとしても、彼らが声を上げれば、その状況を変えることができる会社だったらどうなるでしょうか?
恐らく、そんな会社だったら、離職率が低い状態を実現することができます。
これがメンバーのオーナーシップが高い会社です。
4.離職率を下げて定着率を高めるための施策
では、離職率を下げて、定着率を高めるにはどうすれば良いのか?
一般的には
- モチベーションアップの研修を導入する
- 人事評価制度を刷新する
- 従業員から不満や改善案などのヒアリングを行う
- 休暇が取れやすい体制を作る
- 企業の将来性が見えるように全社ミーティングを開く
- 教育体制を外部の専門家を入れながら見直す
などの解決策が挙げられることが多いですが、
人の意欲の源泉はオーナーシップである
という観点に立つと、上記の解決策は短期的には有効かもしれませんが、長期的かつ、根本的な解決にはならない場合が多いです。
例えば、社員のモチベーションがアップする研修を受けたとしても、モチベーションが上がるのは、数日だけで、数ヶ月後にはまた仕事への意欲は下がります。
人事評価制度を刷新して、多くの人が納得するような評価制度に変わったとしても、状況や人が変われば、また不満も出てくる訳で、これも根本的な解決にはなりません。
なので、離職率を下げるための根本的な解決方法というのは「メンバーのオーナーシップが高まる組織」を作ることしかありません。
では、メンバーのオーナーシップが高まる組織というのはどんな組織なのか?
多くの組織で採用しているトップダウン型組織では、階層によってオーナーシップに差があるため、メンバーのオーナーシップが高い組織は作ることはできません。
そこで、参考になるのが「セルフマネジメント型組織」と呼ばれる、次世代型組織の運営モデルです。
セルフマネジメント型組織は、メンバーのオーナーシップを高め、一人一人が適切な意思決定ができるようにトレーニングし、リーダーが意思決定・指示・行動管理をしなくても組織本来の目的・目標を達成できるようにしていく組織です。
組織において重要なのは、目標・目的が達成できるかどうかです。
トップダウン型組織では、一部のリーダーだけが意思決定をし、「指示・管理」によってメンバーを統制することで、目標・目的の達成を目指します。
一方で、セルフマネジメント型組織では、リーダーが一方的に意思決定をするのではなく、「自立・信頼」の元に、メンバー自らが適切な意思決定ができるようにリーダーがサポートをし、目標・目的の達成を目指していきます。
メンバーのオーナーシップを高めていくには、メンバーの意思決定可能領域を少しずつ広げていくことが重要になります。
もちろん、最初から組織全体に大きな影響があり、リテラシーも必要な高度な領域の意思決定を任せていくという訳ではなく、最初は、リテラシーも不要で、組織全体に大きな影響がない領域から任せていきます。
つまり、最初から給与や人事評価制度や経営の全体戦略という領域ではなく、社内向けのイベントや日報の書き方などの小さな領域から意思決定を任せていくということです。
意思決定可能領域を少しずつ開放していくと、自然とオーナーシップが高まるので、メンバーの仕事に対する意欲や主体性が自然と回復するようになっていきます。
そして、セルフマネジメント型組織への移行が進み、メンバーが飛躍的に成長し、意思決定やコミットメントのレベルも上がっていけば、組織全体に関わる高度で大きな領域にも関わることができるようになっていきます。
セルフマネジメント型組織では、業績だけでなく、メンバーの意欲や働きがいがも高い組織ができるようになります。
実際に、セルフマネジメント型組織への移行が進んでいった国内企業では
- 離職率30%の業界で離職率3%を実現し、単月売上最高1300万円から2000万円に大幅アップ
- 3年以内の新卒離職率50%から3%になり、従業員一人当たりの売上が過去最高に
- 離職率17%から0%になり、売上も1500万円アップ
- 採用コストが1500万円から400万円にダウンし、売上昨年対比150%を実現
などの成果も上げています。
このメンバーのオーナーシップを高めて、業績だけでなく、働きがいも高い組織を作ることができれば、離職率は大幅に下げることができるので、興味がある方は、ぜひ「セムコスタイルとは何か?業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説」の記事もご覧ください。
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