ブランドロイヤルティとは?高めるメリットや方法を成功事例から解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「ブランドロイヤルティって何?」
「ブランドロイヤルティが高い企業の事例を知りたい!」
「ブランドロイヤルティの高め方を知りたい!」
ブランドロイヤルティとは、既存顧客の忠誠度のことであり、その事業が末長く繁栄していくかどうかを決定づける、非常に重要な指標です。
ブランドロイヤルティが低ければ、どれだけ新規で商品・サービスを購入してもらっても、リピートや口コミが生まれないので、常に新規集客に莫大なコストをかけなければ、事業が成立しません。
それだけでなく、日本は加速度的に少子高齢化が進行しており、内閣府の予測データで、2060年には、日本の人口は8674万人にまで減少し、このうちの半数以上が、60歳以上になります。
40年で約4000万人の人口減少が起こり、あらゆる業界の顧客層が物理的に減少していくため、日本においては、新規顧客にいかに忠誠度が高いロイヤルカスタマーに変えることができるのかが、事業の生命線になってくるといっても過言ではありません。
ブランドロイヤルティを高めていくことで
- 新規顧客がリピートし続けてくれる
- 口コミが広がり、新規顧客の獲得コストが下がる
- 新商品が売れやすくなる
- 平均顧客単価が上がる
など、様々なメリットを享受できます。
今回の記事では、そんなブランドロイヤルティについてお伝えしていきたいと思います。
この記事を読んでいただければ、ブランドロイヤルティに関する基礎的な知識や成功事例だけでなく、具体的にどうブランドロイヤルティを高めていけばいいのかまでが分かるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
1.ブランドロイヤルティとは
まずは「ブランドロイヤルティとは何か?」について解説していきたいと思います。
1-1.ブランドロイヤルティの意味
ブランドロイヤルティとは、ブランドに対する顧客の忠誠度のことで、これが高ければ高いほど
- リピート
- 口コミ
に繋がりやすくなります。
1-2.ブランドロイヤルティと顧客ロイヤルティと顧客満足度との違い
これとよく似た言葉に
- 顧客ロイヤルティ
- 顧客満足度
という言葉があります。
まず、顧客ロイヤルティとは、サービスを提供する企業全体(グループ・ブランド)に対しての忠誠度のことです。
例えば、株式会社ファーストリテイリングの中には、コーポレートブランドとして、ユニクロやGUなど様々なブランドがありますが、この場合、顧客ロイヤルティとは「株式会社ファーストリテイリング」に対する忠誠度です。
一方で、ブランド・ロイヤルティとは、「ユニクロ」や「GU」に対する忠誠度です。
ファーストリテイリングのように大きな会社ではない場合は、企業とブランドが同一化しているという場合もあります。
基本的には、ブランド名と会社名が一致していない限りは、顧客はブランド名を認識している場合が多いので、ブランディングを行うという視点に立てば、「ブランド・ロイヤルティ」を高めていくことが最優先事項です。
そして、次の顧客満足度とは、企業やブランドに対する忠誠度ではなく、ブランドの商品・サービスに対する満足度のことです。
そのブランドが提供する商品・サービスに満足し、ファンになった結果、生まれるのが「ブランド・ロイヤルティ」です。
1-3.なぜ、ブランドロイヤルティを高めることが重要なのか?
ブランド・ロイヤルティを高めなければ、どれだけ新規集客が上手くいったとしても、リピートや口コミがされないので、事業は必ず苦境に陥ります。
例えば、美容院を新しくオープンしたとすると、まず重要になってくるのは、新規顧客の獲得です。
最も手っ取り早く、確実な方法は、ホットペッパービューティやチラシなどの広告を活用して、新規集客していく方法です。
広告費をかければ、一定数は必ず集客できるようになりますが、来店した新規顧客の9割が2回目以降来なかったとします。
そうなると、お店を維持していくためには、来月もこの失った9割の顧客数を集客するために広告費をかけ続けなければいけません。
マーケティングの世界に
新規顧客に販売するコストは、既存顧客に販売するコストの5倍かかる
という「1:5の法則」があることからも分かるように、新規集客というのは非常にコストがかかる活動なのです。
一方で、ブランド・ロイヤルティが高まると、既存顧客がリピートや口コミを起こし続ける状態に入るので、新規顧客獲得活動に割くコストというのは次第に減っていくので、事業がどんどん楽になっていきます。
1-4.ブランドロイヤルティを高めるメリット
ブランドロイヤルティを高めることは、リピートや口コミに繋がるだけでなく
- 比較検討されずに自動的に選ばれる
- 利益率が高くなる
- 新商品が売れやすくなる
という状態も実現できます。
1-4-1.比較検討されずに自動的に選ばれる
顧客の忠誠度が高いということは、顧客にとって、そのブランドが替えの効かない存在であるということです。
例えば、Appleに対しての忠誠度が高い顧客は
PCやスマートフォンを買うならApple製品しかない
と考えているため、他のメーカーがどれだけ魅力的な製品を出していたとしても、比較検討の対象にすら入らないわけです。
1-4-2.利益率が高くなる
替えが効かないということは、相場よりも価格が高くても選ばれるということです。
iPhoneなんかが良い例ですね。
世界のスマートフォンの平均価格は「約36,940円」に対して、iPhoneシリーズは約10万円なので、3倍以上の価格ですが、多くの消費者から支持されて、世界のスマホ市場の全利益の66%をiPhoneだけで占めているという調査結果も出ています。
ブランドロイヤルティが強くなると、相場の価格すら超越できます。
1-4-3.新商品が売れやすくなる
また、そのブランドに対して、忠誠度が高い固定のファンがいれば、新商品をリリースした時でも
このブランドなら間違いない
と思って、派手に売り込まなくても、購入してくれます。
ブランドロイヤルティは無形の資産です。
これがあるだけで、スタート地点から競合よりも一歩抜きん出るのです。
Appleのことを信頼している顧客なら
Appleが出す商品なら、間違いない
と思い、iPhoneだけでなく、MacもiPadもApple Watchといった他の製品も購入してくれるのです。
2.ブランドロイヤルティ向上の成功事例
では、続いては、ブランドロイヤルティが高い企業の事例についてご紹介していきたいと思います。
2-1.スノーピーク
まず、最初に紹介するのは、キャンプ用品メーカーの「スノーピーク」です。
スノーピークは、オートキャンプにおける、ライフスタイルの原型を世界で初めて提唱したブランドです。
画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/
スノーピーク以前のキャンプは
- 学校行事で行くキャンプ
- 長期休暇にホテルや旅館にお金を使いたくない人が代用するキャンプ
という2種類しかありませんでした。
そんな中で、スノーピークは
SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)を走らせ、自然の中で豊かで贅沢な時間を過ごすためにキャンプをしましょう
という新たなキャンプスタイルを提案し、それに見合う製品を提供してきました。
スノーピークの武器は、その商品力の高さです。
代表も従業員は全てキャンプ好きで、キャンパーの心を知り尽くしています。
だからこそ、思わず
こういう商品が欲しかったんだよ
と唸ってしまう商品が作れ、結果として、それがリピートの要因となっています。
1986年から、2014年までに、社員数は15名から160名に。売上高は5億円から45億円に。売上総利益は17倍に。
利益率も業界の中でも高水準の50%という数字を叩き出しています
これはアウトドア業界の市場が右肩上がりに拡大していった結果ではありません。
むしろ、アウトドア業界は、1993年をピークに、2009年まで市場は縮小の一途を辿っていましたが、そんな中でも、スノーピークは増収増益を続けてきました。
一体、なぜ、市場自体が縮小していく中で、スノーピークが成長し続けることができたのか?
スノーピークには「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的なファンがいたからです。
スノーピークには、カード会員という制度があって、1年間の購入金額に応じて、既存顧客に
- レギュラー
- シルバー
- ゴールド
- プラチナ
- ブラック
というランクを付与しています。
そして、シルバー会員には年間10万円分以上の購入が必要で、ゴールド会員は年間20万円分以上、プラチナは年間30万円以上、ブラックカードはプラチナ会員で累積100万円以上を購入した人がなれるという仕組みです。
2014年時点で、スノーピークの会員は10万人いて、プラチナの保有者が5500人で、ブラックカードの保有者が600人で、ロイヤルカスタマーは約6000人なわけですが、この全体の6%の顧客が、全体の1/4の売上を作り上げています。
まさに、ブランドロイヤルティが高い企業の事例です。
2-2.でんかのヤマグチ
続いての事例は、「でんかのヤマグチ」です。
でんかのヤマグチは、東京の町田市にある、街の小さな電器店です。
画像出典:https://itot.jp/
街の小さな電器店は、1990年以降に登場した、ビックカメラなどの大型家電量販店の進出とともに、そのほとんどが衰退していきました。
大型家電量販店は、一度に大量の商品を仕入れることができ、それによって、仕入れ値をを抑えることができるので
- 品揃え
- 価格
という点で、街の小さな電器店に勝ち目はないからです。
そんな大きな流れがある中でも、でんかのヤマグチは、ブランドロイヤルティを高めることによって、20年以上黒字化に成功し、大型家電量販店よりも高い利益率を継続しています。
でんかのヤマグチの創業は1966年で、元々はパナソニックの販売代理店の一つとして、どこの地域にもある、普通の街の小さな電器店でした。
経営は順調でしたが、1996年から、東京の町田市にも、コジマやヤマダ電機などの大型家電量販店が進出してきて、売上が少しずつ減少していくことになります。
このままでは価格競争に巻き込まれ、近いうちに淘汰されてしまう…
と危機感を抱いた、代表の山口勉さんは、店の方針を大きく切り替えます。
画像出典:https://business.nikkei.com/
街の小さな電器店が、大型家電量販店に「価格の安さ」で勝てる見込みはありません。
なので、大型家電量販店の手が届かない、徹底した顧客サービスで勝負することに決めます。
一般的に、大型家電量販店で、何か商品を購入したとしても、基本的には商品が自宅に配送されるだけです。
ですが、でんかのヤマグチの場合、例えば、テレビを購入したら、設置から配線までを行い、さらに操作が苦手なお客様には、テレビの予約の仕方まで教えてあげます。
これは実際にあった話ですが、韓流ドラマを楽しみにしている年配のお客様で、番組の予約方法が分からないという場合は、毎週、営業担当者がその家に足を運んで、予約を代わりにやってあげていたそうです。
そのほかにも
- 電球1本の交換
- 自宅に届く荷物の受け取り
- 植木の水やり
- 送迎
など、お客様のお困りごとで、できることがあれば、何でも無料でお応えしています。
特に、これは価格の安さよりも、サービスの質を重視する高齢者の心を掴みました。
年配の方は、若者のように、1つの商品を買うのに、色んな店舗を梯子したり、比較サイトを閲覧し
どれだけ1円でも安く買えるか?
を探究するようなことをしません。
常に新しいものを探しているというよりも、馴染みの信頼できるお店で買い続けます。
だから、ターゲットも、「価格の安さ」を最重要視する顧客は外しました。
本当に親身に寄り添って、サポートしてくれるので、お客さんは自然と
何か困ったら、でんかのヤマグチで買おう
となるわけです。
だから、最新の薄型テレビが、他の大型量販店と比べると約2倍、高い値段でも売れたり、数十万円するエアコンがたった1通のDMで、50個以上売れたりするのです。
まさに、ブランドロイヤルティが高いお店です。
2-3.杉山フルーツ
続いての事例は「杉山フルーツ」です。
杉山フルーツは静岡県の富士市の吉原商店街にある、個人商店の果物屋です。
画像出典:https://icotto.jp/
個人商店の果物屋は大型スーパーマーケットの進出とともに、衰退していき、約10年で4万軒あった店が2万軒へと減少したと言われています。
杉山フルーツが店を構える吉原商店街も、最盛期は120店舗ありましたが、今となっては60店舗以下へと減少しています。
そんな中でも、杉山フルーツは
- 毎日150~200人が来店
- 平均顧客単価は業界水準の2倍
- 1万円のメロンが年間7000~8000個売れる
- リピート率が80%超え
- 高級な生フルーツゼリー(500~700個)が毎日完売
という圧倒的な結果を残しています。
特に、リピート率が80%を超えており、高単価でも顧客の支持を集めていることからも分かる通り、ブランドロイヤルティが非常に高いお店です。
杉山フルーツのブランドロイヤルティが高いのは、創業者の杉山清さんの果物に向き合う姿勢に秘密があります。
画像出典:https://visionet.jp/
とにかく
お客様に最高の果物を届けよう
という思いがあり、毎朝、日本最大の果物市場に出かけて、フルーツソムリエの資格を活かした目利きを行い、最高の果物を仕入れてきます。
そして、お店に持ち帰って、箱から果物を全て出し、従業員と
お客様はこれで満足するのか?
と検討し、傷んでいるものや形が悪いものは必ず取り除いています。
ここまでやっている果物屋さんは、全国を探してもほとんどないでしょう。
また、7年間で120万個も売り上げた生フルーツゼリーも並々ならぬこだわりがあります。
画像出典:https://fujibrand.jp/
使用している果物は加工用のワンランク落ちる果物ではなく、贈答用の高級果物を使用しており、ゼリーも全て手作りです。
あまりにも売れ過ぎていたので
全国で販売しないか?毎日1億円の売上が上がりますよ
というような申し出が大企業からたくさん入っていたそうですが、杉山さんは全て断りました。
というのも、全国で販売しようとすると、使用する果物のランクも落ちますし、防腐剤などの添加物を入れて、工場のラインで製造しなくてはいけなくなるからです。
そんなフルーツゼリーは、杉山フルーツのゼリーではありません。
ブランドロイヤルティが高いブランドの特徴は、売上よりも、守るべきブランドのポリシーがあることです。
2-4.トランスフォーム
では、続いての事例は「トランスフォーム」です。
トランスフォームは東京の中野区の鷺ノ宮にある美容院です。
画像出典:https://relax-job.com/
このトランスフォームは
- 平均顧客単価が1万4000円(業界の約3倍)
- 平日も常に満員
- リピート率は90%超え
という非常にブランドロイヤルティが高い美容院です。
これはトランスフォームが、売上目標よりも
髪も頭皮も身体にも地球環境にも優しい、健康的な美をつくる
という思いを最優先しているからです。
トランスフォームはオーガニックにこだわり、シャンプーからカラーから全て、お客様の健康を害するような化学物質を使った液剤は一切使いません。
オーナーの酒巻さんは、母親が経営する利用店を継ぐことを全体に、23才で就職し、24才でスタイリストとしてデビューしましたが、25際の時に関節や心臓に針が刺さるような激しい痛みが出て、倒れるようになったり、お客様にパーマをしているときに激しく咳き込むようになりました。
これは酒巻さんだけではなく、その店の店長や新人スタッフも同じような症状に悩まされます。
そこで理美容の仕事に疑問を抱くようになり、
もし、お客様に使っているパーマ液やヘアカラー液が、有害だとしたら…
と罪悪感が湧くようになります。
そして、実家を継いで、自分の店を始めるときに
自然派、無化学の店をしたい
と思うようになり、お客様の健康的な美を作る自然派美容室を作ることになりました。。
トランスフォームには、スタッフが守らなければならない十カ条の中に
利益を追求して健康や安全を害するものを使用、お薦めしてはならない。
という項目があります。
これが、売上よりも優先する、ブランドのポリシーがあるという状態です
ここに存在するのは「顧客が幸せになるように」という想いです。
この利他的な想いとそれに見合う高品質なサービスに対して、新規顧客は共感し、ファンになります。
3.ブランドロイヤルティの測り方
では、続いては、ブランドロイヤルティの測り方について解説したいと思います。
ブランドロイヤルティを計測する指標としては
- NPS
- DWB
という2つの指標があるので、それぞれ解説していきたいと思います。
この2つの指標を使えば、ブランドロイヤルティを数値化でき、ある程度の計測はできると思います。
ただし、ブランドロイヤルティは目に見えない概念であり、一人一人によって感じ方も違うため、集団単位での完璧で、正確な計測というのはできないので、あくまでも参考程度に捉えておくと良いでしょう。
4-1.NPS
まず最初に「NPS」について。
NPSとは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略称のことです。
この指標は、元々アメリカのコンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー」のフレッド・ライクヘルドが『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』の中で提唱した概念です。
画像出典:https://www.dhbr.net/
NPSの具体的な計測方法は、既存顧客を対象に
あなたはこの商品・サービスをどの程度、友人や同僚に勧めますか?
という質問を0~10の11段階で評価してもらうというアンケート調査が一般的です。
例えば、既存顧客の100人にアンケートを取り、
- 20人:0~6点(批判者)
- 20人:7~8点(中立者)
- 60人:9~10点(推奨者)
というアンケート結果だったとします。
その場合のNPSは「60%(推奨者)−20%(批判者)」なので「+40%」となります。
NPSの平均値は業界によって異なり、具体的な業界の平均数値などは、NTTコムオンラインの「NPS業界別ランキング&アワード」などで紹介されています。
あくまでもこの調査で測れるのは、現時点でのブランドロイヤルティなので、定期的に計測を行なっていくことが大切になってきます。
4-2.DWB
次に「DWB」について。
DWBとは「Definitely Would Buy」の略称のことで、既存顧客の今後の購買意向を測る指標のことです。
DWBの具体的な計測方法は、既存顧客に自社の商品を
- 絶対に買いたい
- 買いたい
- どちらでもない
- あまり買いたくない
- 全く買いたくない
という5段階に分けた質問を行います。
この中で「絶対に買いたい」と答えた人が、ブランドにとってのロイヤルカスタマー(優良顧客)であり、この割合がブランドロイヤルティを測る一つの指標となります。
一般的に
売上の80%は、20%の既存顧客が支える
と言われているので、まずは「絶対に買いたい」と思う人が20%を超えることを目標値に定めるといいでしょう。
ただ、これも単純なアンケートなので、「絶対に買いたい」と答えていても、実際には購入してなかったり、「どちらでもない」と答えていても、継続的に買っていたりする場合もあるので、売上の計測とセットで、測っていくのが良いと思います。
3.ブランドロイヤルティの高め方
では、最後に、ブランドロイヤルティの高め方について解説していきたいと思います。
3-1.ブランドロイヤルティが高まる仕組み
ブランドロイヤルティは一体どのようにすれば高まるのか?
この答えを一言で言うと
ブランドプロミスを果たしていく
という一言につきます。
ブランドプロミスとは、ブランドが顧客に対して行う約束であり、これがあるからこそ、商品・サービスは売れていきます。
例えば、ラクサスというエルメスなどの高級ブランドバックをレンタルできる定額制のサービスがあります。
画像出典:https://renta-man.net/
このサービスのブランドプロミスは
月額6800円で、本物のブランドバックを返却期限なしで、自由にレンタル・交換ができる
というものです。
ラクサスは、継続率が95%で、9ヶ月以上継続利用している優良顧客は全体の98%もある非常にブランドロイヤルティが高いサービスな訳ですが、これもやはりブランドプロミスを守っているからです。
このサービスにおいて、ブランドロイヤルティを下げてしまう最も致命的な行為は、お客様に偽物のブランドバックをレンタルさせてしまうことです。
もし、
月額6800円で、本物の高級ブランドバックが借りられます
と謳っているのに、自宅に届いたカバンが偽物のカバンで、それに気づかず、出かけてしまって、友人などに指摘されたら、どうなるでしょうか?
当然ですが、クレームを言うでしょうし、2ヶ月目以降は絶対に継続して利用しようとは思わないわけです。
これがブランドプロミスを守らないということであり、こういう行為をしてしまったら、ブランドロイヤルティが下がるのは当たり前だということです。
ラクサスには、ブランド品を鑑定する専門の鑑定士が在籍しており、扱うカバンは、全て識者がチェックしているので、こういったことが起こらないように万全の体制を整えています。
また、万が一、そのチェックをすり抜けて、偽物のブランドバッグが紛れてしまって、それが発覚した場合は、これまで利用した料金を全額返金するという約束もしています。
ここまで徹底してやっているので、ユーザーは、一度サービスを利用したら、安心して継続するのです。
3-2.ブランドプロミスを設計する
なので、まずは、ブランドプロミスを設計していきましょう。
ブランドプロミスとは、分解すると
- どんな顧客に対して
- どうなってもらうことを約束するのか?
ということです。
前提として、ブランドプロミスは魅力的である必要があります。
というのも、人が商品・サービスを購入しようと思うのは、ブランドプロミスが魅力的だからです。
例えば、ラクサスであれば、
月額6800円で、エルメスなど60種類以上の憧れの本物のブランドのバッグが、期限なしで、レンタルし放題
というブランドプロミスを掲げているわけです。
中々、経済的に、ハイブランドのブランドのバッグを複数持てないという人にとって、この低価格で、本物のブランドバッグを身につけられるライフスタイルが手に入るのは、魅力的でしょう。
だからこそ、多くの人がラクサスを利用しようと思うわけです。
これが、
月額20万円で、少し偽物も混じっているかもしれませんが、たぶん、本物のブランドバックが月に1個だけ借りれます
というブランドプロミスであれば、誰も利用しようと思いません。
では、どのようにすれば、魅力的なブランドプロミスが作れるのか?
まず、重要になってくるのは、対象顧客の絞り込みです。
あなたの商品・サービスを購入する可能性がある見込み客には様々な層がいます。
例えば、ホームページ制作を販売しているのであれば、その最大母数は
- 起業準備中
- 個人事業主
- 経営者
ということになってくるわけですが、この中にも様々な層がいます。
例えば、
これから開業しようと思っているけど、HPに投資できる金額が少なくて、取り急ぎ案内用のページをすぐにでも作りたい
という層もいれば
ホームページが新規集客の要であるはずなのに、今のホームページの成約率が非常に悪いので、成果が出るホームページへとリニューアルしたい
という層もいれば
新規の集客数をアップさせるというよりも、事業継承に伴って、会社のブランドイメージを刷新したいので、ブランドコンセプトを再整理した上で、新たな方向性が伝わるようなホームページを作りたい
というような層もいます。
重要なのは、ターゲット層によって、魅力を感じるブランドプロミスは変わるということです。
HPに投資できる金額が少ない上に、HP経由の集客数アップは狙わないので、案内用のページを今すぐにでも作りたい
という人たちには
最短当日納品!初期費用0円・月額1000円からスマホ対応したプロ仕様のホームページを制作します
というブランドプロミスは響きますが、
売上アップに直結するホームページを制作します
というブランドプロミスは響きません。
だから、まずは、対象顧客を明確にするようにしましょう。
ターゲットを絞り込む際のポイントは「属性から絞り込むだけでなく、実在の人物に当てはまるのかを考える」ということです。
まずは
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 家族構成
- 仕事
- 年収
- 趣味
- 性格
- 価値観
- ライフスタイル
- 願望
- 不満
といった属性を書き出してみて、絞り込んでいきましょう。
そして、その上で、この書き出した属性の人物と自分自身が直接コミュニケーションをとったことがあるということが重要です。
というのも、属性だけで、ターゲット像を決めてしまうと、それはあくまでも空想上の人物となり、その人たちの心を捉えることはできないからです。
例えば、新しく女子高校生向けのアパレルブランドを立ち上げるとして、ターゲットを
- 東京に住む
- 女性
- 16歳
- 女子校に通う高校生
- 自分に合うファッションが分からないという悩みを抱えている
みたいな形で絞り込んだとします。
ですが、この企画の立案者が、東京に住んだこともない、40代の男性で、普段から女子校に通う16歳の子たちと何の接点も持ったことがないとします。
そうすると、属性を上手く絞り込めたとしても、結局、彼女たちの心がわからないので、魅力的に感じるブランドプロミスを考えることはできません。
なので、直接関わりを持ったことがない人たちをターゲットとして、絞り込む際には、その人たちの心が理解できるまで、直接コミュニケーションを取っていくことが、非常に重要になります。
そして、その上で、ブランドプロミスを作成し、最後に、対象顧客の目から見て、
思わず欲しいと思ってしまうか?
を問いかけるようにしましょう。
また、実際に対象顧客に完成したブランドプロミスを見てもらうのも良いですね。
3-3.ブランドポリシーを設計する
ブランドプロミスが設定できたら、続いては、ブランドポリシーを作成します。
ブランドポリシーとは、ブランドプロミスを実現していくための、現場で必ず守る具体的な行動指針のことです。
例えば、ラクサスは
月額6800円で、本物のブランドバックを返却期限なしで、自由にレンタル・交換ができる
というブランドプロミスを掲げている訳ですが、これを実現していくために
- 専門の鑑定士がチェックしたブランドバッグしか取り扱わない
- もし、偽物だと発覚した場合は、これまでの利用金額を全額返金する
というような具体的な行動指針が定められているからこそ、ブランドプロミスを順守することができています。
特に組織の場合は、様々な価値観・経験を持った人がより集まっているので、具体的な行動指針を明確にしなければ、ブランドとして行動が揃うことはありません。
なので、次に、この行動指針を箇条書きにしていきましょう。
3-4.ブランドプロミスを実現する商品設計
また、ブランドプロミスを明確に設定した際に、現在の商品・サービス内容では、そのブランドプロミスを実現できないことが出てくる場合があります。
その際は、提供している商品・サービスの内容自体を見直す必要があります。
例えば、これまで明確なブランドプロミスを設定せずに、クライアントから依頼されるまま、ホームページを制作していたウェブ制作会社があったとします。
この制作会社が新たにブランドプロミスを
お客様と二人三脚で、業績がアップするホームページを制作します
というものを設定した場合、
- 価格の安さと納期だけを重視した、案内用のホームページ
- ブランドイメージを高めるだけのホームページ
など、業績アップに寄与しないホームページを作ることはしない方が良いので、サービス内容自体を見直した方が良いです。
本当に業績アップに繋がるホームページを制作していくのであれば、納品後のマーケティングのサポートも必要になってくると思うので、そうしたサポートをサービスの中に組み込むなどの改善が必要となってきます。
ブランドプロミスは、商品・サービスの提供を通じてのみしか、果たすことができないので、設定したブランドプロミスと商品・サービス内容に乖離がある場合は、埋めるようにしましょう。
3-5.既存顧客コミュニティを作る
ブランドプロミスを作成し、これを必ず守り抜いていくことが、ブランドロイヤルティを高める基本原則です。
これに加えて、既存顧客と関係性を縮め、ブランドを共創する関係性になれると、ブランドロイヤルティはより高まります。
例えば、スノーピークがブランドロイヤルティが高いのは
作り手もユーザーも感動ができる商品しか世の中に出さない
という指針の元に、高品質なキャンプ用品を提供しているということに加えて、独自の既存顧客コミュニティがあることも非常に大きいと思います。
スノーピークでは、従業員と既存顧客が一緒にキャンプを楽しむ「スノーピークウェイ」というイベントを毎年6回開催しています。
画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/
スノーピークウェイは、1998年からスタートした取り組みで、年間の参加者は5000人ほど、ちょうどロイヤルカスタマーと同じくらいの人数です。
メインのイベントは、焚き火を囲んで行う「焚き火トーク」で、その場で、アウトドアの楽しみ方について話したり、製品について、ユーザーから様々なレビューをしてもらいます。
このイベントを通じて、既存顧客の意見がブランドにフィードバックされるという関係性が生まれ、商品を購入するだけの関係性から、ブランドを共に創り上げる仲間へと変わります。
また、既存顧客と社長やスタッフとの関係性も「製品は使っているが、全く見知らぬ他人」から「一緒にキャンプをする友人」「いつもキャンプ場で会う人」に変わります。
商品・サービスに満足し、かつ、これだけ関係性が近くなると、既存顧客はあえて
もっと他に良いキャンプ用品はないか?
という情報収集すらしなくなり
キャンプ用品といえば、スノーピーク
という思考回路となり、ずっと選び続けてくれるようになります。
商品・サービスの質だけで、ブランドロイヤルティを高め続けていくことは非常に難しくなっています。
というのも、商品・サービスの質は、後追いで、競合他社が模倣しようと思えば、模倣できるからです。
ですが、既存顧客との「関係性」までは、後追いで真似することはできません。
商品・サービス力が同じであれば、見込み客は関係性が近い方を選びます。
既存顧客のコミュニティは、直接交流することができれば理想ですが、今の時代は、インターネットが活用できるため、非常に作りやすくなっています。
4.ブランドロイヤルティを向上させたいと思っている全ての方へ
今回の記事では、ブランドロイヤルティの基礎知識や事例、ブランドロイヤルティを高める方法を様々な角度でお伝えしました。
ぜひ、今回の記事を読んで、ブランドロイヤルティの改善に取り組んでみてくださいね。
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このWEBセミナーでは、
- 高単価でも競合が増えても選ばれ続けるNo.1ブランドの作り方
- 広告に依存しない安定的な集客の仕組みの作り方
- 商品力は競合よりも高いはずなのに選ばれない理由
などを解説しています。
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