ボトムアップとは?トップダウンとの違いや組織運営のポイントを成功事例から徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「ボトムアップ型の組織とは?」
「トップダウン型の組織とは何が違うの?」
「自社にとって最適な組織運営の方法を知りたい」
会社を経営していくにあたって
どんな組織マネジメントの方法を採用して、目標達成を目指すのか?
という観点は非常に重要です。
どんな組織運営の方法を採用するかが
- 業績
- 生産性
- 離職率
- モチベーション
- 働きがい
など様々な領域に大きな影響を与えていきます。
最も一般的に普及している「トップダウン型組織」については以前の記事で詳しく解説をしたので、今回はその対極となるボトムアップ型組織について詳しく取り上げていきたいと思います。
まずは、この2つの組織運営のフレームワークをしっかりと理解することで、自社にとって最適な組織運営の方法が見えてきます。
今回は「ボトムアップ型の組織運営の特徴やメリット・デメリット」について解説したいと思います。
この記事を読んでいただければ、ボトムアップ型の組織運営に関する基礎的な知識だけでなく、トップダウン型とボトムアップ型の欠点を補う最先端の組織マネジメントの方法についてもかるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
1.ボトムアップ型とは
では、まずは「ボトムアップ型とは何か?」ということについて解説をしていきます。
1-1.ボトムアップ型
ボトムアップ型について理解するためには、一般的に組織マネジメントの形として普及している「トップダウン型」について理解しておくことが大事です。
トップダウン型とは「上位下達」と表現され
リーダーの意思決定にメンバーが従う
という絶対原則の下に運営されるピラミッド階層構造型の組織で、所属メンバーを
- リーダー:計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任
- メンバー:実行
という役割に明確に分けて、同じ目標・目的を追いかける集団に変えていくという組織マネジメントの方法です。
恐らく世の中の組織は95%以上はこの形で運用がされているかと思います。
一方で、ボトムアップ型とは「下位上達」と表現され、リーダーが一方的に意思決定をするのではなく、メンバーの提案や意見を収集・集約し、それを踏まえながら意思決定をし、同じ目標・目的を追いかける集団に変えていくという組織マネジメントの方法です。
組織はピラミッド階層構造型ですが
- リーダー:意思決定・指示・行動管理・結果責任
- メンバー:計画・提案・実行
という役割に変化していくのも特徴です。
1-2.ボトムアップ型とトップダウン型との違い
ボトムアップ型の組織マネジメントとトップダウン型の組織マネジメントの違いは以下のようになります。
例えば、居酒屋を複数店舗経営していて、ある特定の店舗が売上が落ち込んでいたとします。
その際に、トップダウン型の組織マネジメントを採用しているのであれば、優秀なリーダーが陣頭指揮を取り、
この店舗だけ新規顧客のリピート率が低いから、メニューや接客フローをこのように改善しましょう
とメンバーに明確な指示を与えて、指示したことが着実に実行されるかをしっかりと行動管理をし、結果責任を引き受けていくという形で、売り上げの改善を目指していきます。
リーダーが指示を与えれば、メンバーはすぐにその方向性に動くので、そのリーダーの意思決定が効果的なものであればあるほど、短期間で結果が出るというのがトップダウン型の組織マネジメントの特徴です。
ですが、トップダウン型組織は「指示・管理」というものが組織運営の中心的な考え方になります。
人は誰もが
- 他人から命令されること
- 他人から指示されること
- 他人から強制されること
を実行することにモチベーションが湧かない性質を持っています。
なので、トップダウン型組織は短期間で業績を伸ばしやすいというメリットはあるのですが、長期間組織運営を続けていくと、メンバーの意欲や働きがいが低くなってしまい、離職率が高まってしまうなどの問題も発生しやすい組織構造でもあります。
実際に今の日本でも、トップダウン型の企業が多くを占めていますが、従業員の意欲や働きがいが低いことは様々な統計データや調査結果で明らかになっています。
例えば、日本の社員エンゲージメントを測った米ギャラップ社の調査によると、日本企業で働く社員の中で
- 熱意ある社員:6%
- 熱意が低い社員:21%
- 熱意が全くない社員:73%
といった調査結果も発表されたりしています。
では、これがボトムアップ型の組織マネジメントだと、どうなるのか?
まず、リーダーは売上改善のための施策について意思決定をする前に、現場のメンバーに
お客さんにもっとリピートしてもらうために、お店でどんなことができると思う?
というような質問を通じて、メンバーの意見をまずは収集していきます。
そして、そのメンバーから集まった意見や提案をベースに売上改善のための意思決定をしていくというのがボトムアップ型の基本的な組織マネジメントの方法になります。
1-3.ボトムアップ型のメリット
では、トップダウン型に比べて、ボトムアップ型にはどんなメリットがあるのか?
1-3-1.メンバーの意欲と主体性が高まりやすい
ボトムアップ型の一つ目のメリットは「メンバーの意欲と主体性が高まりやすい」というものです。
そもそも人の意欲の源泉は
私は状況を所有している。コントロールしている。変えることができる
と思えることができている「オーナーシップ」にあります。
トップダウン型では組織構造的に
リーダーが指示することだけを実行する
という働き方になりやすく
こんな風に変わったらいいな
と思っていても、口にすら出せない場合が多いですし、口に出して行動したところで、状況が変わらないという場合がほとんどです。
例えば、先ほどの居酒屋の例で言うと、リーダーが
接客フローをこう変えましょう
と指示を出したら、トップダウン型組織ではそれに従うしかありません。
ですが、これがボトムアップ型組織になると、
こんな風にすればいいのではないでしょうか?
と自分から組織に対して意見を発信できて、場合によっては状況を変えることができます。
これがオーナーシップがあると言う状況です。
ボトムアップ型の組織では、意見・提案の機会が解放され
自分が効果的な提案をすれば、会社の状況を変えることができる
と思えるので、オーナーシップが高まり、離職率も下がる場合が多いです。
1-3-2.メンバーの主体性が高まり、成長が加速する
また、メンバーが
自分が効果的な提案をすれば、会社の状況を変えることができる
と確信するにつれて
どうすればもっと自社に利益をもたらす効果的な提案ができるのだろう?
と自分の頭で考えるようになっていくので、自然と主体性が高まっていくというメリットもあります。
トップダウン型組織では
リーダーの指示を忠実に守ること
だけが求められる場合が多いので、基本的にメンバーは思考停止・指示待ちになっていきます。
というのも、自分の思考を挟んで、それがリーダーと違っていれば、有無を言わさず、修正を余儀なくされるからです。
自分の頭でより効率的な方法を考えて、怒られるんだったら考えないでおこう
となるのが普通です。
ですが、ボトムアップ型では、その自分の頭で考えて、意見や提案を積極的にする姿勢こそが賞賛されるので、自然とメンバーの主体性は回復して、成長が加速していくのです。
1-3-3.現場の状況を踏まえた適切な意思決定ができる
トップダウン型で組織が拡大していくにつれて発生する「大企業病」の一つに
現場で働くメンバーと管理職のリーダーとの距離が離れすぎて、適切な意思決定がなされない
という問題があります。
例えば、居酒屋の店舗数が拡大していくと、数十店舗を一人で統括するエリアマネージャーのような責任者のポジションが生まれたりします。
当然ですが、どれだけ優秀な人間であっても、一人で数十店舗の細やかな現場の状況を把握した上で意思決定をすることはできなくなるので、リーダーの意思決定の精度というのは下がる傾向にあります。
だから、現場の状況と乖離した、リーダー層からのトンチンカンな意思決定が下されるということもよく起きます。
例えば、数十店舗を統括するエリアマネージャーが、売上改善のために
利益率が高いから看板メニューはこれに変えて
と全店舗に指示を出したとします。
ですが、どんなメニューが人気なのかは地域差・店舗差があるため、実際にそれを変えることによって売上が大きく減少したという店舗も出てくるでしょう。
適切な意思決定をするために重要なのは、意思決定をする前の適切な情報の把握です。
組織が拡大すると、この情報把握を一部のリーダーが全て行うことが不可能になっていくので、大きく間違った意思決定というのが頻発していくのです。
一方で、ボトムアップ型組織では、意思決定の前に、現場のメンバーの意見を収集し、集約した上で、意思決定を行うので、そこまでズレた意思決定というのは起きないというメリットがあります。
1-3-4.イノベーションが起きやすくなる
また、ボトムアップ型組織では、イノベーションが起きやすくなるというメリットもあります。
というのも、メンバーから提案や意見を集めていくので、これまでリーダー層の個性や価値観では発想ができなかったアイディアや施策を実現していくことができます。
特に今の時代は
今の正解が一年後には通用しなくなる
と言われているほど、変化の激しい時代です。
そんな時代では、メンバーの個性や価値観が発揮できる組織の方が有効なイノベーションを数多く生み出していくことができます。
1-4.ボトムアップ型のデメリット
では、続いては、ボトムアップ型のデメリットについて。
1-4-1.意思決定までに時間がかかる場合が多い
ボトムアップ型はトップダウン型と比べて、意思決定をするまでにメンバーの意見の把握や調整といった実施項目が増えることになります。
具体的には、ミーティング回数や時間が増えるので、意思決定をするまでの時間はトップダウン型に比べてかかるというのが一つ目のデメリットです。
1-4-2.メンバーが納得する意思決定の基準を明確にする必要がある
また、ボトムアップ型組織でも、最終的な意思決定を下すのはリーダー層になりますが、メンバーの意見を収集したのであれば、メンバーができるだけ納得する意思決定をする必要があります。
メンバーの意見を収集したのにも関わらず、その意見を踏まえた意思決定がなされないのであれば
もう何かリーダー層に意見や提案を伝えたりするのは無駄だからやめておこう
という意識が働くようになってしまいます。
ですが、メンバーは全員が価値観が違うので、全ての人が納得するような意思決定をすることは原理的に不可能です。
なので、まず意見を収集する前に
どんな意見が採用されやすいのか?
という基準を明確にしておく必要があります。
そして、この採用基準というのは
- この組織はどんな未来を目指しているのか?
- この組織は何のために存在しているのか?
ということを言語化したビジョンとして明文化しておくことがおすすめです。
このビジョンを明確に作成し、それが意思決定の明確な基準であることを共有できれば、メンバーが納得する意思決定をしていくことは可能になるので、ぜひ「ビジョンとは?ミッション・バリューとの違いや効果的な作り方や事例を徹底解説」の記事も参考にお読みください。
1-4-3.リーダー層の負担が増える
また、ボトムアップ型組織に移行すると、特に最初はリーダー層の仕事の負担が増えます。
まず、これまでは自分でスムーズに意思決定をしていたところが、メンバーの意見の把握や調整が必要になります。
そして、ボトムアップ型組織を機能させるためには、メンバーの
- 意欲
- 主体性
を回復する必要があります。
特にトップダウン型組織を長く続けてきた場合は、メンバーの意欲や主体性が失われている場合が多いので、そこを改善しないと
意見や提案をしてくれていいよ
とメンバーに伝えても、何の意見も提案も上がってこないということが起きてしまいます。
なので、リーダー層は心理的安全性を高めたり、リーダーシップのあり方を変えることによって、失われたメンバーの
- 意欲
- 主体性
を回復させるという仕事も増えていきます。
1-5.ボトムアップ型が適している場合
では、続いてはボトムアップ型の組織マネジメントが適している場合について解説をしていきたいと思います。
そもそも、ボトムアップ型組織は、最終的には
- メンバーの意欲や働きがいが高まる
- 現場の状況に合わせた適切な意思決定ができる
- メンバーの個性や才能をより発揮できる
- 多様なイノベーションが起こる
ということに到達できる組織モデルです。
なので
- 一部の優秀なリーダーに依存しない組織を作りたい
- メンバーの意欲や主体性を高め、離職率を下げたい
- 組織全体としてイノベーションが起こるようにしたい
- 組織規模が大きくなり、トップダウン型の意思決定に限界を感じている
といったことを日々の組織運営の中で感じる場合に、移行を検討すると良いでしょう。
ただ、トップダウン型組織からボトムアップ型組織への移行を行うということは、組織運営の方針が変わるということなので、急激に全てを変えることはできません。
明日からボトムアップ型組織に移行するから
ということを宣言して、移行することは不可能なので、徐々に変えていけるところから変えていくことになります。
また、変革のプロセスを失敗すると、組織がより混乱することにも繋がりかねないので、多くの場合、組織開発コンサルタントなどの組織づくりの専門家のサポートも受けながら、1~2年かけて移行していくことが一般的なので、ある程度の資金的な余裕も必要になってきます。
1-6.ボトムアップ型が適していない場合
なので、そういう意味で言うと、ボトムアップ型が適していないのは、
- 数ヶ月後に倒産するかもしれない
- 創業期でまずは業績をしっかりと上げないといけない
という短期間で大きな業績を上げていく必要がある場合です。
この場合は、短期間で大きな成果を出さないといけないので、優秀なリーダーが陣頭指揮を取り、全ての意思決定に関与して結果を出すことを目指すトップダウン型が良いでしょう。
2.ボトムアップ型組織の事例
では、続いては、ボトムアップ型企業の事例について紹介をしていきます。
ボトムアップ型の組織マネジメントを導入している企業の多くは、組織全体を完全にボトムアップ型にしているというよりも、トップダウン型と混ぜながら部分的に導入している場合が多いので、その辺りも踏まえて事例を紹介します。
2-1.Amazon
まず、一つ目のボトムアップ型を部分的に取り入れている組織の事例が「Amazon」です。
Amazonは時価総額200兆円を超えたことがあり、GAFAの中で最も新規事業を成功させている超巨大企業です。
そんなAmazonではイノベーションのアイディアを一部の優秀な人材に考えさせて、実現させるというトップダウン型で起こすのではなく、広く全階層の従業員からアイディアを集めて、実施するかどうかを決めていくというボトムアップ型で進めています。
まず、イノベーションを起こすためのアイディアがある従業員は指定されたフォーマットで
- どのようなサービス・製品が市場導入されるのか?
- 使用する人にとってどんな利点があるのか?
- 実際使ってみた人のフィードバックはどうか?
といったことをまとめた企画書(PR/FAQ)を作成します。
そして、そのあとは
- 関係者で企画書についてのブラッシュアップ・ミーティング
- 「Amazonが取り組む価値がある」と判断されれば、ファイナンス部門が入ってビジネスプランを立てる
- ファイナンシャルチェックもクリアすると正式承認が降り、プロジェクトがスタートする
- 破壊的イノベーションや大きな投資が伴う案件はSクラスの経営陣に企画の可否を判断してもらう
といったプロセスを踏んで、従業員のアイディアが実現されていくという仕組みをとっています。
これはまさに、メンバーから意見や提案を集めて、実行の可否を最終的にはリーダー層が意思決定を行うという意味でボトムアップ型の仕組みです。
2-2.ブックオフ
さて、二つ目のボトムアップ型組織の成功事例が「ブックオフ」です。
ブックオフは1990年に神奈川県の相模原市で古本屋としてオープンし、創業10年で500店舗を超え、上場まで果たすという日本を代表する企業の一つです。
画像出典:https://www.neyagawa-np.jp/
そんなブックオフですが、実は2016年から2017年にかけて、古本だけでなく、総合リユース事業に乗り出しましたが、完全に他社に出遅れ、上場以来初めて10億円を超える赤字を出したということがありました。
その後、堀内康隆さんが社長に就任し、3年で大きく黒字化に成功しましたが、この時に組織マネジメントの方法がトップダウン型からボトムアップ型に移行したことが非常に功を奏したと思います。
画像出典:https://keieishaterrace.jp/
堀内さんが就任する前までのブックオフは、基本的にはトップダウン型で、
他の地域のこの店舗はこういうやり方で上手くいっているからこの方法を真似しなさい
という形で店舗運営の統制を図ってきました。
確かにこのやり方だと、店舗運営の品質を全国一律にできるので、効率性や安定性は生まれますが、店から個性や魅力がなくなってしまいます。
そこで、堀内さんは、
- どんな商品を中心に扱うのか?
- どんな方法で商品を販売していくのか?
- どんなレイアウトで商品を配置するのか?
といったことを店舗ごとに完全に任せていきました。
というのも、地域によって集まる客層や、ライバル店舗の品揃え、立地などの条件が変わる訳で、そのことを知り尽くしているのは店舗で働いているスタッフだからです。
なので、
地域のことを知り尽くしているスタッフにお店づくりを任せていく方が地域に合った魅力的な店を作ることができるのではないか
と思った訳ですね。
例えば、東京の青梅の店舗では、商品の取り扱いをおもちゃ中心に変えたところ、売上が倍増したり、サーフィンで有名な神奈川県の茅ヶ崎ではサーフボードを商品の中心に据えることで売上が大きく伸びたりということが起きたという訳です。
ブックオフでは、積極的に権限委譲を進めていて、アルバイトの高校生が特定の売り場のレイアウトを全て任されたりしています。
これもまさにボトムアップ型の一つの事例だと思います。
2-3.コンカー
そして、3つ目の事例は、クラウドによる出張・経費管理ソリューションを提供している株式会社コンカーです。
画像出典:https://www.concur.co.jp/
株式会社コンカーは、8年連続で出張・経費管理ソリューションで日本のトップシェアを獲得し、働きがいのある会社ランキングNo.1(従業員100〜999人)を6年連続受賞し続けているという業績だけではなく、働きがいも非常に高い会社です。
業績が高いだけでなく、働きがいも高い会社の多くはトップダウン型の組織マネジメントではなく、ボトムアップ型の組織マネジメントを多く採用しています。
例えば、コンカーの代表的な取り組みの一つに「オフサイトミーティング」というものがあります。
これは年に一度、朝から夕方まで実施する合宿で、この日は自分の職種や立場を一旦忘れ
- 会社の課題
- 深層原因や打ち手
- 施策の具体化
- 誰が担当するか(挙手制)
などについて、部署の垣根を超えて1グループ4〜5名を形成して、話し合ってもらいます。
『最高の働きがいの創り方』(三村真宗)によると、合宿のルールとしては
- 考えの異なる意見には否定ではなく、改善を
- 議論の時は積極的に発言する
- 聴く時は傾聴し、思考する
- 前向きに、建設的に
- PC、スマホによる内職は禁止
といったものがあり、積極的に議論に参加することが求められます。
そして、オフサイトミーティングが終われば、実行が決まった施策を担当が実施し、課題の解決状況を把握したり、打ち手の見直しなども行なっていきます。
また、オフサイトミーティングの前には、事前アンケートを従業員に取り
- 会社が抱える課題
- その課題を解決するアイディア
などを提案してもらっています。
一般的なトップダウン型組織ではこういったことは一部のリーダーだけで話し合われて問題解決が図られますが、そこに一般社員が参画できる余白を設けてるからこそ、働きがいの高さに繋がっています。
これもボトムアップ型の組織マネジメントの取り組みの事例です。
3.ボトムアップ型の組織マネジメントを成功させるポイント
では、続いてはボトムアップ型の組織マネジメントを成功させるポイントについて解説をします。
3-1.我流で進めるのではなく、組織づくりの専門家に相談する
トップダウン型組織の中に、ボトムアップ型のマネジメントを取り入れるということは、これまでの組織運営が変わることを意味し、所属するメンバーにも大きな影響を与えます。
その取り組みが成功すれば問題ないですが、失敗した時は、メンバーからの信用を失い
現場が混乱するだけだから、余計なことをせず、これまでの組織運営を続けてほしい
という意識を強く生み出すことになり、組織が変わるきっかけすら失われていく危険性もあります。
なので、組織改革を実行する時には、いきなり我流でやるのではなく、まずは、組織開発コンサルタントなどの組織づくりの専門家に相談してみましょう。
ボトムアップ型のアプローチを取り入れ始める前に、最低でも経営者や経営幹部などのリーダー層が
- どのようにメンバーに組織変革の必要性について伝えるのか?
- どのような手順を踏めば、スムーズにボトムアップ型のアプローチを取り入れられるのか?
- どのような領域からボトムアップ型のアプローチを取り入れるのか?
- メンバーの意欲や主体性をどう高めていくのか?
といったことを明確にわかっておく必要があります。
これは我流で進めると分かりませんが、専門家に事前に相談をしておくと、ある程度、明確になります。
私も組織づくりのサポートは行なっていて、トップダウン型からボトムアップ型のアプローチを取り入れるためのロードマップを作成することはできるので、もし興味がある方は、問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
3-2.リーダーからメンバーに率直な想いを伝える
そして、2つ目のポイントが「リーダーからメンバーに想いを伝える」ということです。
トップダウン型組織にボトムアップ型のアプローチを取り入れるときは、メンバーに理由も伝えず、いきなり
組織運営のやり方を今日から変えます
と伝えてしまうと、現場が混乱するのと同時に、組織に対する余計な不信感を生んでしまいます。
恐らく、この記事をご覧の方は、今のトップダウン型の組織運営に対して、何か違和感を感じていてるからこそ、トップダウン型以外の組織運営の方法に興味があるのだと思います。
そして、その違和感というのは単純に
もっと一人当たりの生産性を上げて、売上を伸ばしたい
という想い以上に
従業員にもっとイキイキと働いてもらいたい
従業員がもっと自分の才能や個性を発揮してもらえるような組織にしたい
「この会社で働けて本当に幸せ」と自然と思えるような組織にしたい
というような想いがあると思います。
そして、そう思うようになったきっかけとして
- 長年、会社を支え続けてくれた中核のメンバーが辞めてしまった
- 新卒の新入社員が3年以内でほぼ会社を去ってしまった
- 社内でサーベイを取った時に「この会社に家族を働かせたくない」という意見が集まった
などのエピソードがあったはずです。
そういった組織運営を根本的に見直すきっかけがあったことを率直に話をして、
もっとみんながイキイキと働けて、才能を発揮できて、会社に来ることが楽しみで楽しみで仕方がないような会社を作りたい
という想いを最初に伝えることができれば、メンバーの心が動き、これからの組織改革の取り組みに協力してくれるようになり、ボトムアップ型のアプローチをスムーズに取り入れられるようになります。
3-3.小さく部分的に実験する
また、ボトムアップ型のアプローチというのは、いきなり全ての領域で適用させようとしないことです。
特に長年、トップダウン型組織を続けてきた企業や組織規模が大きくなったしまった企業で、全ての運営をいきなりボトムアップ型アプローチに変えていくことは現実的ではありません。
最初は
- 組織全体に大きな影響を与えない
- 高度なリテラシーが必要ない
といった領域からボトムアップ型のアプローチを取り入れて、小さく実験していくことがおすすめです。
例えば、いきなり人事評価制度や給与の決定などの領域に取り入れるのではなく、社内イベントや日報の書き方などの領域から取り入れていくということです。
そして、一部署だけにボトムアップ型アプローチを少しずつ取り入れるという部分的な実験の仕方も良いと思います。
一部署で良い成功事例ができたら、他の部署に導入する際にも説得力が出るので、その後の施策もスムーズに進みやすいです。
なので、まずは経営者や経営幹部などのリーダー層と組織づくりの専門家とで話し合い
どこから、どんな領域からボトムアップ型のアプローチを取り入れるか?
といったことを話し合うのが良いと思います。
4.ボトムアップ型を超える次世代型組織とは?
では、最後に、ボトムアップ型を超える次世代型組織について。
「ボトムアップ型」という組織マネジメントの方法に興味を持たれているということは、業績だけでなく、働きがいを高めていくことが長期的な組織運営では重要だということに気づいたという方が多いかと思います。
実際にトップダウン型にボトムアップ型のアプローチを取り入れていけば
- メンバーの意欲や働きがいが高まる
- 主体性が高まり、イノベーションが起こる
- 意思決定の精度が高まる
といった変化が起きていきます。
ですが、ボトムアップ型の組織マネジメントは
- 意思決定のスピードが遅くなる
- リーダー層の仕事の負担が増える
といったデメリットが生じる可能性もあります。
実は、このボトムアップ型のデメリットを解消し、業績だけでなく、働きがいも高めてしまう第三の組織マネジメントのモデルがあります。
それが「セルフマネジメント型」と呼ばれる組織マネジメントのモデルです。
セルフマネジメント型とは
リーダーに管理・指示されることなく、メンバーが自ら仕事の仕方を決め、仕事に関する意思決定を行い、最高の結果が手に入る
ということを目指す組織マネジメントの方法です。
このセルフマネジメント型組織では、
- リーダー:メンバーの適切な意思決定と目標達成のサポート
- メンバー:計画・意思決定・行動管理・結果責任
という役割に分けて、組織が運営されていきます。
ボトムアップ型では、メンバーの意見は集約するものの、最終的に意思決定するのはリーダーでしたが、セルフマネジメント型では、その意思決定の権限と責任をメンバーに引き渡しても、最高の結果が手に入ることを目指していきます。
え、メンバーに意思決定の権限と責任を渡しても大丈夫なの?
と思われるかもしれませんが、いきなり全てを任せるというわけではありません。
最初は、ボトムアップ型と同様に
- 組織全体に大きな影響を与えない
- 高度なリテラシーが必要ない
といった領域から任せていき、リーダーのサポートを受けながら、意思決定の機会と責任を引き受けるという経験を積んでもらいます。
もちろん、任せていく過程で、メンバーは最初からリーダーと同質の意思決定や目標達成はできないところもあります。
ですが、日々、リーダーのサポートを受けながら、自分の頭で目標を考え、方法を考え、自らの行動を管理して、自らを律し、結果責任を引き受けるという習慣を持って、仕事に取り組んでいくので、メンバーは飛躍的に成長していくのです。
実際にこのセルフマネジメント型組織に移行してから、新卒の新入社員が生み出す付加価値総額が2倍になったということもありました。
メンバーが飛躍的に成長すると、リーダーがいちいち、意見を集約して、意思決定をしたり、計画を立てたり、メンバーの行動管理を厳格にしたり、結果責任を代わりに引き受けたりする必要がなくなるので、リーダーの仕事の負担が大幅に減るのです。
実際に、セルフマネジメント型組織に移行して、元々は社長の意思決定率が100%だった会社が、今では20%まで下がっても、過去最高業績を更新し続けているといったことが起きています。
メンバーに任せても、最高の業績と働きがいが手に入る
というのは組織マネジメントとして最終の理想系だと思います。
ボトムアップ型では、リーダーが管理・監督を続け、完全にメンバーに任せられる組織にはなりませんが、それを実現できるのがセルフマネジメント型組織です。
日本国内でも数十社がセルフマネジメント型組織に移行していて
- 単月売上過去最高1300万円から2000万円にUPし、平均離職率30%を超える業界で離職率3%を実現(歯科医院)
- 売上昨年対比150%を達成し、採用コストが1500万円から400万円に(化粧品メーカー)
- 年間売上目標達成率が80%から150%に大幅アップし、営業の成約率が20%から40%へとアップ(動画制作)
- 従業員一人当たりの平均売上が過去最高になり、3年以内の新卒離職率が50%から3%にダウン(コンサルティング)
- 半年間で離職率が17%から0%へとダウンし、経営者の意思決定率を100%から60%に下げながら、1500万円の売上アップ(事業プロデュース)
といったような結果も出しています。
このセルフマネジメント型組織の作り方については「セムコスタイルとは何か?業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説」というブログ記事で解説しているので、ぜひ、ご覧ください。
5.ボトムアップ型のまとめ
今回の記事では「ボトムアップ型」についての基礎知識について様々な角度でお伝えしました。
ぜひ、今回の記事を読んで、自社の組織運営を見直すきっかけにしていただけると幸いです。
またこの記事で紹介した「セルフマネジメント型の組織運営」に関して、もっと深く学んで実践していきたいと思われた方は、私の公式LINEアカウントで配信されている無料の動画講座をまずはご覧ください。
この動画講座では、
- 平均成長率年間147%、離職率2%、就職人気企業ランキングNo.1を実現した!次世代型組織の作り方
- 単月売上過去最高!離職率3%を実現した歯科医院のコンサルティング事例解説
- 採用コストが1500万円から400万円に下がった化粧品メーカーのコンサルティング事例解説
- 年間の売上目標達成率80%から150%にまで大幅アップした動画制作企業のコンサルティング事例解説
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