ワークエンゲージメントの意味とは?高める方法や尺度・測定方法などを徹底解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「ワークエンゲージメントって何?」
「ワークエンゲージメントが低いと組織はどうなる?」
「ワークエンゲージメントを高める方法を知りたい…」
ワークエンゲージメントは、その組織のメンバーの仕事に対する心理状態を表す概念で、これが高いのか低いのかによって
- 生産性
- モチベーション
- 業績
- 顧客満足度
- イノベーション
- 成長率
- 離職率
- 採用
など、企業活動における様々な領域に影響を及ぼします。
2019年に厚生労働省が「労働経済白書」の中で、ワークエンゲージメントを高める重要性について指摘したことから、この概念が日本でも少しずつ普及をしてきました。
企業が最終的に繁栄・発展できるかは一人の優秀な経営者だけでなく、その企業を構成するメンバーが日々、どれだけエネルギッシュに、熱意を持って、目の前の仕事に没頭しているかで決まります。
今回は「ワークエンゲージメントとは?意味や高めるための取り組みや事例」について解説したいと思います。
この記事を読んでいただければ、ワークエンゲージメントに関する基礎的な知識だけでなく、ワークエンゲージメントを高めるための具体的な方法についてもわかるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
目次
1.ワークエンゲージメントとは
では、まずは「ワークエンゲージメントとは何か?」について詳しく解説をしていきます。
1-1.ワークエンゲージメントの意味
ワークエンゲージメントとは、2002年にオランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した、従業員の仕事に対するメンタル状態を表した概念です。
画像出典:https://workengagement.jp/
ワークエンゲージメントでは
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
の3点を重視しており、これらをいかに満たした上で、従業員が仕事をしているかを表す指標だと考えると間違いありません。
※参考: 厚生労働省:令和元年版労働経済白書 第2部第3章(PDF)
1-2.ワークエンゲージメントの類似用語と関連用語
また、ワークエンゲージメントと混同しやすい、類似用語があるので、その違いについても簡単に解説をします。
1-2-1.従業員エンゲージメント
まずは「従業員エンゲージメント」について。
「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」は似たような言葉ですが、これはそれぞれの意味は違います。
エンゲージメントは
- 結びつき
- 愛着度
などを表現する言葉ですが、それぞれの対象が違うという訳です。
ワークエンゲージメントは「仕事そのもの」に対するエンゲージメントを表し、従業員エンゲージメントは「組織そのもの」に対するエンゲージメントを表します。
なので、ワークエンゲージメントは従業員の仕事に対する熱意や取り組みを意味し、従業員エンゲージメントは組織に対する忠誠心や共感を意味すると理解しておくと良いでしょう。
1-2-2.従業員満足度
また「ワークエンゲージメント」と「従業員満足度」も違います。
ワークエンゲージメントは、仕事に対する熱意や取り組みを意味しますが、従業員満足度は
- 仕事内容
- 給与や待遇
- 人間関係
- キャリアアップの機会
など、様々な要素が絡み合った結果、
現在、自分が働いている会社に満足しているかどうか?
を表す指標になります。
なので、例えば、従業員満足度が高いだけであれば、
仕事内容は嫌いで、あまり熱意を持てないけれど、一緒に働く仲間との関係性が良くて、給与と待遇が良いから、この会社で働けることには満足している
という状態も考えられるということです。
この場合は、仕事に対する熱意はないので、ワークエンゲージメントは低く、会社の生産性や業績にはプラスの影響をもたらさないかもしれません。
なので、従業員満足度を改善するだけでは、離職率の低下にはつながるかもしれませんが、生産性や業績アップには繋がらない可能性があるということです。
1-2-3.職務満足感
また「ワークエンゲージメント」と「職務満足感」もそれぞれ意味が違います。
職務満足感とは
組織において自分自身が与えられている役割に対してどれだけ満足をしているか?
を表す指標のことです。
職場で与えられている自分の役割が
正しく評価されていて、適切である
と判断する場合、この職務満足感は高まりますが、だからと言って、必ずしもワークエンゲージメントが重視する
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
という3つの状態を満たしている訳ではないということは注意したいところです。
1-2-4.ワーカホリック
また「ワークエンゲージメント」と「ワーカホリック」もそれぞれ違います。
ワーカホリックとは、宗教心理学者のウェイン・オーツが提唱した概念で、
画像出典:https://note.com/
強い内発的動機から、絶え間なく働こうとする衝動を抑えられない
という状態の人を表します。
ワーカホリズムに陥ってる人は
- 仕事をしないと不安で仕方がない
- 常に仕事のことを考えてしまう
- 仕事をしてないことに罪悪感を覚える
と考えてしまい、常に仕事をし続けようとし、最終的には心身のバランスを崩してしまいます。
仕事に対してポジティブに熱中しているというよりも、強迫観念から仕事をしないと落ち着かない状態がワーカホリックです。
1-2-5.バーンアウト
そして、最後にバーンアウト(燃え尽き症候群)について。
バーンアウトとは、過剰な業務量をこなし続けるなどの要因によって、身体的・精神的疲労がピークに達した結果
- 仕事に集中できなくなる
- やる気がなくなる
- 朝起きれなくなる
- 食欲が低下する
- 出社したくなくなる
など、人としてのエネルギーが完全に燃え尽きてしまったようになる症状のことです。
ワークエンゲージメントとは対極の概念にあると言っても、良いでしょう。
1-3.ワークエンゲージメントが注目される2つの背景
では、次にワークエンゲージメントが注目されるようになった3つの理由について。
1-3-1.労働人口の減少と人材の流動化が加速しているから
ワークエンゲージメントが注目されるようになった理由の1つは
- 労働人口の減少
- 人材の流動化
が日本社会でも大きく進んでいるからです。
日本で労働人口の減少が進んでいるには、少子高齢化が加速度的に進んでいるからです。
これは内閣府の予測データですが、2060年には、日本の人口は8674万人にまで減少すると言われています。
画像出典:https://www8.cao.go.jp/
これは
毎年約100万人ずつ日本人が減少する
という計算で、2060年頃には、人口の50%以上が60歳を超えるようになります。
このような傾向が加速度的に進んでいるため、人材の採用においては、売り手が有利で、当然ですがその際に給与や福利厚生などの条件だけでなく、
- 仕事にやりがいを感じられるか?
- 従業員がイキイキと働いているのか?
- 仕事が楽しいか?
といったことも重視されるため、組織としてワークエンゲージメントを高めることが非常に重要になります。
また、日本では終身雇用制が崩壊し、新卒で入社した会社を勤め上げることはなくなり、転職が当たり前の世の中となりました。
ですが、人材の流出は
- 顧客の流出
- ノウハウの流出
- 教育コストの増加
- 新規人材の確保
などに繋がり、会社にとっては大きな損失となることもあります。
特に、他社でも大きく活躍できる可能性を秘めた、将来有望な若手や優秀なリーダーほど、ワークエンゲージメントには敏感なので、職場への定着率を高めるためにも、ワークエンゲージメントは高める必要があります。
1-3-2.生産性や業績の向上に繋がるから
また、先ほど解説したように、ワークエンゲージメントは
- 従業員満足度
- 従業員エンゲージメント
- 職務満足感
とは異なり、この指標を高めることによって、ダイレクトに生産性や業績アップに繋がるため、大きな注目を集めているという理由もあります。
上記の3つの指標は、これまで離職率の低下やメンタルヘルスの向上には繋がりますが、それによって生産性や業績アップに繋がるかは不明瞭なことがありました。
また今の時代は正解がない時代であり、
今通用していることが1年後には通用しなくなる
ことが頻繁に起きている変化が激しい時代でもあります。
そんな正解がない時代に最も必要なのは、同じことを淡々と繰り返すのではなく、目の前の課題と向き合い、様々な角度から様々な方法を検証し、新しい正解を導き出すという「熱意」です。
それはワークエンゲージメントで重視される
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
が満たされた状態で、従業員が仕事をしているかどうかが鍵になります。
2.ワークエンゲージメントが組織に与える効果
では、次に「ワークエンゲージメントが組織に与える効果」について解説をしていきます。
組織を構成する従業員が
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
という状態になると、一体、組織がどう変化するのか?
2-1.生産性・業績の向上
メンバーが、仕事に対して熱意を持って取り組めるようになると、日々の業務におけるパフォーマンスが高まり、一人一人の生産性が大きく上がり、業績向上に繋がります。
また、ワークエンゲージメントが高まると、メンバーが自発的に
どうすれば、もっとより良い仕事ができるか?
と自然と考えるようになるので、一人一人の成長が加速し、それがまた生産性や業績アップに繋がっていくという好循環を生み出すことができます。
2-2.顧客満足度の向上
ワークエンゲージメントが高まると、その仕事ができることに喜びと誇りを感じ、
どうすればよりお客様に喜んでいただけるか?
と自然と発想するようになるので、顧客満足度が自然と高まり、結果としてリピート率の向上や口コミの増加に繋がっていきます。
2-3.メンタルヘルスの改善と離職率の低下
近年、日本でも従業員のメンタルヘルス(精神的な健康状態)の定期的なチェックと対策についての重要性が指摘されるようになってきましたが、ワークエンゲージメントを高めることは、まさにこのメンタルヘルスの改善に繋がります。
想像すれば分かるのですが
- 仕事が楽しくて、熱中してしまう
- 仕事にやりがいと誇りを感じる
- 毎日イキイキと仕事ができる
というワークエンゲージメントが高い状態を作り出すことができれば、精神的に疲弊する従業員はいなくなります。
結果として、離職率の低下にも繋がっていきます。
2-4.リファラル採用数の増加
もし、従業員が
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
という状態で仕事をするようになると、採用や人材の定着にも困らなくなります。
まず、ワークエンゲージメントが高い会社は、従業員が
この会社で働けて本当に良かった!
と自然と思えるようになるので、インターネット上の会社の評判が高まり、人材が集まりやすくなりますし、従業員からの直接紹介による採用も増えていきます。
3.ワークエンゲージメントが高い企業と低い企業の特徴
では、ワークエンゲージメントが高い企業と低い企業は、それぞれどんな特徴を持っているのか?
3-1.権限委譲が進んでいる
まず、ワークエンゲージメントが高い企業は、例外なくメンバーへの権限委譲が進んでいます。
人は誰もが
- 他人から命令されること
- 他人から指示されること
- 他人から強制されること
- 他人から管理されること
に対して、モチベーションを高く維持することはできません。
これまで多くの企業が「組織マネジメント」と称して、「指示・管理」をベースに、トップダウン型で、他人をコントロールして、目標を達成しようとしますが、この試みは上手くいっていません。
実際に日本で働く社員エンゲージメントを計測した調査(米ギャラップ社)では
- 熱意ある社員:6%
- 熱意が低い社員:73%
- 熱意が全くない社員:21%
というような結果が出ています。
徹底的な「指示・管理」をベースとしたトップダウン型は、働く人の熱意を奪ってしまうのです。
実際に日本企業で、社長と同じくらいの熱量で仕事をしている人は「6%」しかいないのです。
一方で、人は自らが「やる」と決断したことを実行することに対してはモチベーションを高く維持することができます。
この性質を利用するのが「権限委譲」です。
権限委譲は
事前に合意した目標・目的を達成できるんだったら、その方法はメンバーに任せる
ということが基本になります。
権限委譲が進む企業では、リーダーは指示・管理に徹するのではなく、メンバーが適切な意思決定をし、目標達成をできるようにサポートするコーチのような役割に変わります。
メンバーは
- 今回の仕事でどんな目標を設定するのか?
- どんな期限を設定するのか?
- 目標を達成するためにどんな方法を選ぶのか?
- リーダーからどんなサポートを受けたいのか?
- よりお客様に喜んでもらうためにはどんな工夫をするか?
など、仕事において自らが決められる領域が増えるので、自然と仕事に対する意欲は高まっていきます。
3-2.情報の透明性が高い
また、情報の透明性が高いこともワークエンゲージメントが高い企業の特徴です。
多くの企業はピラミッド階層型の組織が多く、階層によって開示され、アクセスできる情報量に差があります。
当然、経営者や経営幹部陣は誰よりも多くの情報にアクセスできますが、一番下のメンバー層には
- 経営戦略
- 今後の方針
- 財務情報
- 顧客情報
などの情報が様々な理由で隠される傾向にあります。
ですが、ワークエンゲージメントが高い会社では、こういった情報は開示されることが多いです。
というのも
- 会社がどこに向かっているのか?
- 目標に対する今の現在地はどこか?
- 何のためにこの会社は存在しているのか?
- どれくらいの売上が上がっていて、課題は何か?
といった情報を知っているか知らないかでは、仕事に対する熱量が変わるからです。
こういった情報が分かるからこそ、日々の目の前の仕事に意味を実感できて、経営全体の視座から見ても、最適な仕事ができるようになるのです。
例えば、レンガを積み上げるという仕事でも
何のためにレンガを積み上げているのか分からない。とりあえずお金をもらえるから積み上げている
という人か
この街の人の命を守る病院を作るために、レンガを積み上げている
という人か、どちらが熱意が高く、クオリティの高い仕事ができるのかは言うまでもありません。
情報の開示が進むと、部署の垣根を超えた協力も進み、集団知の集積も進み、イノベーションも起こりやすくなります。
3-3.ビジョンに共感した人材の採用を行なっている
また、仕事に熱中するためには、そもそも
その仕事が好きかどうか?
という価値観の一致が必要です。
どれだけ権限委譲を進めても、必要な情報を透明にしても、本人が
この仕事が好きで、もっと上達したい
というような思いがなければ、その仕事に対して熱意を持たせることは難しいです。
熱意を持つことを他人に強制することはできません。
だから、重要になってくるのは、採用の段階で、自社の仕事に熱意が持てなさそうな人を入れないことです。
特に
- これまでの実績が凄いから
- 能力が高そうだから
といった理由で採用するのは辞めた方が良いです。
たとえ、これまでの実績があり、能力が高い優秀な人材であったとしても、その仕事に熱意を持てないのであれば、組織全体にとって大きなマイナスとなります。
その優秀な人材が「高い給与や待遇」を目当てに入社してきたのであれば、最低限の仕事だけをして、周りとも協力しないような振る舞いをするので、他のメンバーの熱意まで奪ってしまいます。
なので、採用の段階で
- やりたいこと
- できること
などをしっかりと把握して、それが会社が目指す方向性と一致しているのかを確認しなければなりません。
ワークエンゲージメントが高い企業は、面接を4〜5回繰り返すなどして、有能であるかどうかよりも、価値観やビジョンへの共感にズレがない採用を心がけています。
3-4.心理的安全性が高い
また、ワークエンゲージメントが高い企業は「心理的安全性」も高いです。
心理的安全性が高いとは、一言で言うなら
安心して、気兼ねなく、自分の意見を述べることができる
という環境のことです。
心理的安全性が高い職場では
- 誰からも意見や提案が活発に起こる
- 反対意見を歓迎される
- 誰に対しての違和感も伝えられる
- 挑戦することを賞賛される
- 感謝が飛び交っている
- 報連相が早い
- 気軽に上司に相談できる
- わからないことがあればすぐに質問できる
- 失敗しても叱責されず、どう挽回するかを建設的に考えてくれる
- ミーティングでは様々な角度から活発な議論が起こる
- 前例や実績がなくてもアイディアを試せる
というようなことが起こります。
どれだけその仕事内容が好きだとしても、職場の環境が
- 上司に自分の意見を率直に伝えることができない
- 反対意見を伝えることができない
- 空気を読み過ぎてしまう
- 改善案が思いついてもすぐに共有できない
- 違和感を指摘できない
- 問題が発覚したら隠蔽してしまう
- 報連相が遅い
- 前例や実績がないものは即座に否定される
- 新しいことに挑戦しようとすると多くの人から否定される
- わからないことがあっても気軽に質問できない
- 失敗した時に叱責される
- ミーティングで特定の人しか発言しない
- 周りの目が気になる
という状態では、仕事に熱中することは難しくなります。
なので、ワークエンゲージメントが高い企業は、心理的安全性を高める取り組みを数多く、実践しています。
3-5.仕事の成果と報酬が一致している
また、ワークエンゲージメントが高い企業は、仕事の成果と報酬が一致しています。
つまり、組織に所属するメンバーが
今の給与や待遇は、自分自身の仕事の成果に見合った公平なものだ
と実感できているということです。
どれだけその仕事が好きだとしても、仕事の成果が公平に評価される仕組みがなければ、熱意は下がります。
例えば、今年の営業成績が5億円の営業マンAと今年の営業成績が5000万円だった営業マンBがいるとします。
単純な数値だけを見ると、営業マンA(5億円)は、営業マンB(5000万円)の10倍は会社に貢献しているわけなので、より多くの給料や報奨金をもらうべきですが、
営業マンBは営業マンAより2つ年上である
という理由だけで、営業マンB(5000万円)の方が給与が高かったとします。
そうすると、どうなるでしょうか?
営業マンA(5億円)は
自分の仕事が正当に評価されていない
と感じ、どれだけ頑張っても評価されないのなら、仕事を適当にこなすようになるかもしれません。
なので、ワークエンゲージメントが高い会社では、
- どんな成果を上げれば評価されるのか?
- どんな成績なら昇進できるのか?
といった評価基準を明確にして、誰もがわかる形で情報を開示しています。
3-6.定期的なワークエンゲージメントの計測と改善
また、ワークエンゲージメントが高い会社では、定期的にワークエンゲージメントの計測を行っています。
仕事に対する熱意というのは、日々刻々と変わる状況の中で変化していきます。
一旦、従業員の仕事に対する熱意が高まったからといって、これから先もずっと高い状態のまま維持できる保証はありません。
なので、ワークエンゲージメントが高い会社では、多いところで3〜4ヶ月に1回、従業員のワークエンゲージメントを計測し、改善案をメンバーと話し合います。
ワークエンゲージメントが高い会社は「業績」や「生産性」といったものが、従業員一人一人の意欲によって作られていることを理解しています。
4.ワークエンゲージメントの尺度と測定方法
では、続いては「ワークエンゲージメントの尺度と測定方法」について解説をしていきたいと思います。
4-1.ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度(UWES)
ワークエンゲージメントを測定する最も代表的な方法が「UWES」という方法で
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
の要素を「3つの質問」or「9つの質問」or「17の質問」でアンケート調査を実施して、スコア化するというものです。
例えば、「UWES」の質問例は以下の通りです。
- 活力:仕事をしていると,活力がみなぎるように感じますか?
- 熱意:自分の仕事に,意義や価値を大いに感じますか?
- 没頭:仕事をしていると,時間がたつのが早く感じますか?
この質問に対して
- 全くない:0点
- ほとんど感じない(1年に数回以下):1点
- めったに感じない(1ヶ月に1回以下):2点
- 時々感じる(1ヶ月に数回):3点
- よく感じる(1週間に1回):4点
- とてもよく感じる(1週間に数回):5点
- いつも感じる(毎 日):6点
という回答でスコア化すると
自社は「熱意」「活力」「没頭」の中で、どのスコアが高いのか?
といったことも分かるようになります。
このUWESに関する、質問項目について詳しく知りたいという方は「慶應義塾大学 総合政策学部 島津明人研究室のページ」をご覧ください。
また、ワークエンゲージメントは「一人あたりの生産性」や「一人当たりの年間で生み出す付加価値総額」や「業績」と繋がってこそ意味があるものなので、UWESと併せて、そういった指標も定期的に計測していくのがおすすめです。
4-2.MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)
次に2つ目の測定方法が「MBI-GS」というワークエンゲージメントの反対の概念である「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を計測するという方法もあります。
「MBI-GS」では
- 情緒的消耗感:仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態
- 脱人格化:顧客に対する無情で、非人間的な対応
- 個人的達成感:職務に関わる有能感,や達成感
などの3種類のスコアを質問を通じて計測して、仕事に対する熱量を数値化していきます。
具体的な質問項目は以下の通りです。
- こんな仕事、 もうやめたいと思うことがある(情緒的消耗感)
- われを忘れるほど仕事に熱中することがある。(脱人格化)
- こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある。(個人的達成感)
- この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。(情緒的消耗感)
- 同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。(脱人格化)
- 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。(個人的達成感)
- 1日の仕事が終わると 「やっと終わった」 と感じることがある。(情緒的消耗感)
- 出勤前、 職場に出るのが嫌になって、 家にいたいと思うことがある。(脱人格化)
- 仕事を終えて、 今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。(個人的達成感)
- 同僚や患者と、 何も話したくなくなることがある。(情緒的消耗感)
- 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。(脱人格化)
- 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。(個人的達成感)
- 今の仕事に、 心から喜びを感じることがある。(情緒的消耗感)
- 今の仕事は、 私にとってあまり意味がないと思うことがある。(脱人格化)
- 仕事が楽しくて、 知らないうちに時間がすぎることがある。(個人的達成感)
- 体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある。(情緒的消耗感)
- 我ながら、 仕事をうまくやり終えたと思うことがある。(個人的達成感)
引用元:久保 真人「バーンアウト(燃え尽き症候群)ーヒューマンサービス職のストレス」
この質問に対して
- 全くない:0点
- ほとんど感じない(1年に数回以下):1点
- めったに感じない(1ヶ月に1回以下):2点
- 時々感じる(1ヶ月に数回):3点
- よく感じる(1週間に1回):4点
- とてもよく感じる(1週間に数回):5点
- いつも感じる(毎 日):6点
という回答でスコア化すると、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の状況が詳細にわかります。
この調査の場合、スコアが低くければ低いほど、ワークエンゲージメントが高いと言えます。
4-3.OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)
また、これも「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を計測する方法ですが、
- 疲労感
- 離脱
の観点からスコアを算出する「OLBI」という方法もあります。
OLBIにおける質問は以下の通りです。
- 仕事も前にすでに疲労感がある(疲労感)
- 長い休息が必要である(疲労感)
- 仕事を負担に思わない(疲労感)
- 精も根も尽き果てた(疲労感)
- 余暇を楽しむ余裕がある(疲労感)
- 仕事後、ぐったり疲れ果てている(疲労感)
- 仕事量はしっかりこなせる(疲労感)
- やる気にあふれている(疲労感)
- 新たな面白さの発見がある(離脱)
- 否定的な語りが多い(離脱)
- 機械的な仕事の仕方である(離脱)
- 仕事への思い入れ消失している(離脱)
- 仕事にうんざりしている(離脱)
- 他の職業は考えられない(離脱)
- 仕事にますます打ち込みたい(離脱)
- 自分にとって仕事は挑戦である(離脱)
引用:大阪市立大学看護学雑誌第17巻「the Oldenburg Burnout Inventory−German version邦訳の信頼性と妥当性の検討」2021.03
またこの質問に対しては
- 全くそうは思わない:1点
- ほとんどそう思わない:2点
- そう思う:3点
- とてもそう思う:4点
という回答で、数値化していくと「離脱」や「疲労感」の状態がわかるようになります。
この調査の場合も、スコアが低くければ低いほど、ワークエンゲージメントが高いと言えます。
5.ワークエンゲージメントを高めるには?
では、最後にワークエンゲージメントを高める具体的な方法について解説をしていきたいと思います。
5-1.仕事の資源と個人の資源について
このワークエンゲージメントを高める方法についてmほとんどのブログ記事では
仕事の資源と個人の資源を適切に調整して、仕事に対する熱量を高めましょう
というようなことがよく言われています。
簡単に言えば、仕事の資源とは「仕事量」であり、個人の資源とは「心理的なストレス」のことです。
確かに、仕事量が個人で担えるだけの限界値を超えていたり、職場での人間関係などで過度な心理的ストレスを抱えているようでは、仕事の熱量は下がっていくでしょう。
ですが、仕事量を調整したり、心理的なストレスを軽減するだけでは
会社で仕事をすることが楽しくて楽しくて仕方ない
というワークエンゲージメントが高い状態を作り出すことは不可能だということは誰もが理解できると思います。
仕事に対する負担やストレスを軽減することと
- 仕事から活力を得ていきいきとしている
- 仕事に誇りとやりがいを感じている
- 仕事に熱心に取り組んでいる
という状態を作り出すことは別物の作業だからです。
あくまでも仕事の負担やストレスの軽減というのはマイナスから0に戻す状態に過ぎません。
5-2.仕事への意欲が最大限に高まる組織運営の方法を採用する
では、一体どうすればいいのか?
一番、シンプルな解決方法は「メンバーの仕事への意欲が最大限に高まる組織運営の方法を採用する」というものです。
まず、日本企業の社員エンゲージメントは
- 熱意ある社員:6%
- 熱意が低い社員:73%
- 熱意が全くない社員:21%
という大前提をしっかりと認識しなくてはいけません。
一般的な企業では、社長と同じ熱量で仕事をしている人は6%しかいないのです。
なぜ、こうなってしまうのか?
これは日本企業全体が、従業員の意欲を自然と下げてしまう「トップダウン型組織」という組織運営の方法を採用しているからです。
トップダウン型組織はピラミッドの階層構造型の組織で
リーダーの意思決定にメンバーが従う
という絶対原則の元、集団としての方向性を揃え、同じ目的・ゴールを追いかける集団に変えていくという組織です。
このトップダウン型組織には
- 優秀な人材リーダーがになれば、短期間で大きな業績を上げることができる
- 指示・命令系統がシンプルで組織をコントロールしやすい
- 組織全体を一つの方向性に統制しやすい
などのメリットがあり、多くの企業に採用されてきました。
ですが、このトップダウン型組織の根底には「指示・管理」という思想が流れており
- 他人から命令されること
- 他人から指示されること
- 他人から強制されること
- 他人から管理されること
をベースに組織が運営されます。
当然ですが、人は誰しもが「他人から指示・命令・強制・管理されること」に対してモチベーションは高まらないので、組織を運営していくにつれて、メンバーの働く意欲というのは下がってくるのです。
言い換えるなら、「トップダウン型」という組織構造を取っている限り、「熱意ある社員は6%」という構造は変わらないということです。
だったら、どうすれば良いのか?
人の意欲が最大限に高まる時というのは、
自ら考え、自らが決断し、行動し、結果責任を引き受ける
という環境に身を置く時です。
この人間の性質を利用した組織マネジメントの方法があります。
それが「セルフマネジメント型」と呼ばれる組織運営の方法です。
セルフマネジメント型組織とは、一言で言うと
メンバーに任せても、最高の業績と働きがいが手に入る組織
のことです。
トップダウン型組織では、リーダーとメンバーの役割は
- リーダー:計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任
- メンバー:実行
というものでしたが、セルフマネジメント型組織では
- リーダー:メンバーの意思決定と目標達成のサポート
- メンバー:計画・意思決定・実行・行動管理・結果責任
というように役割が変わります。
つまり、メンバーは、リーダーのサポートを受けながら、従来リーダーが担ってきた「計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任」という役割を果たせるようになることを目指していくということです。
仕事の進め方に関しても、
この仕事を1週間以内に指定した方法でやっておいて
ではなく
- このプロジェクトの仕事の目標はどう設定しようか?
- その目標はどうやって達成しようか?
- リーダーから必要なサポートはある?
- どうやって仕事を進めたいか、働き方の希望はあるその目標はどうやって達成しようか?
- 仕事の質を高めるためのフィードバックはいつ設定しようか?
というようにリーダーがメンバーに質問をしながら、進めていくので、仕事が他人から強制されたものではなくなっていきます。
実際にトップダウン型組織からセルフマネジメント型組織へと移行した国内企業は
- 単月売上過去最高1300万円から2000万円にUPし、平均離職率30%を超える業界で離職率3%を実現(歯科医院)
- 売上昨年対比150%を達成し、採用コストが1500万円から400万円に(化粧品メーカー)
- 年間売上目標達成率が80%から150%に大幅アップし、営業の成約率が20%から40%へとアップ(動画制作)
- 従業員一人当たりの平均売上が過去最高になり、3年以内の新卒離職率が50%から3%にダウン(コンサルティング)
- 半年間で離職率が17%から0%へとダウンし、経営者の意思決定率を100%から60%に下げながら、1500万円の売上アップ(事業プロデュース)
といったように、業績だけでなく、働きがいも高いという結果も出しています。
離職率だけでなく、業績が上がっていることが分かりますが、これはメンバーを入れ替えた訳ではなく、セルフマネジメント型という組織構造に移行したことで、メンバーの意欲が最大限に高まり、一人当たりの生産性が大きく改善した影響です。
このセルフマネジメント型組織を作る方法は「セムコスタイル」というメソッドとして確立しており、日本を含む世界12カ国で普及し、従業員数10名以下から3000名を超えるような企業にまで導入されています。
この辺のことについて詳しく知りたいという方は「セムコスタイルとは何か?業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説」という記事も併せてご覧ください。
6.ワークエンゲージメントを高めたい全ての方へ
今回の記事では「ワークエンゲージメント」についての基礎知識や計測方法や高め方などを様々な角度でお伝えしました。
ぜひ、今回の記事を読んで、ワークエンゲージメントが高い組織を作るきっかけにしていただけると幸いです。
また、「ワークエンゲージメントが高まる組織の作り方」に関して、もっと深く学んで実践していきたいと思われた方は、私の公式LINEアカウントで配信されている無料の動画講座をまずはご覧ください。
この動画講座では、
- 平均成長率年間147%、離職率2%、就職人気企業ランキングNo.1を実現した!次世代型組織の作り方
- 単月売上過去最高!離職率3%を実現した歯科医院のコンサルティング事例解説
- 採用コストが1500万円から400万円に下がった化粧品メーカーのコンサルティング事例解説
- 年間の売上目標達成率80%から150%にまで大幅アップした動画制作企業のコンサルティング事例解説
などを解説しており、ワークエンゲージメントが高い組織作りのヒントを得ることができます。
受講は無料なので、ぜひ公式LINEアカウントに登録してみてください。
もし記事の内容が少しでも勉強になったという方がいれば、SNSなどでシェアしていただけると、とても励みになります。