トップダウン・ボトムアップとは?最高の組織を作るためベストな意思決定方式とは何か?

                       

ブランドコンサルタント・中江 翔吾

「トップダウン型の組織とは?」
「ボトムアップ型の組織とは何が違うの?」
「自社にとって最適な組織運営の方法を知りたい」

組織全体として

どんな方法で意思決定を下し、目標達成を目指すのか?

ということは会社経営において最重要課題です。

世の中に組織マネジメントの方法はありとあらゆるものがありますが、その中で自社にとってどれだけ最適な方法を選ぶかで

  • 業績
  • 生産性
  • 離職率
  • モチベーション
  • 働きがい

などの結果が大きく変わります。

そして、組織マネジメントの方法として多くの組織で導入されているのが

  • トップダウン型
  • ボトムアップ型

と呼ばれるものです。

まずは、この2つの組織運営のフレームワークをしっかりと理解することで、自社にとって最適な組織運営の方法が見えてきます。

中江 翔吾
中江 翔吾
というわけで、こんにちは!ブランドコンサルタントの中江です。

今回は「トップダウン型とボトムアップ型の組織運営の特徴やメリット・デメリット」について解説したいと思います。

この記事を読んでいただければ、トップダウン型とボトムアップ型の組織運営に関する基礎的な知識だけでなく、トップダウン型とボトムアップ型の欠点を補う最先端の組織マネジメントの方法についてもかるようになっています。

ぜひ、最後までお読みください!

目次

1.トップダウン型とは

では、まずは「トップダウン型」について解説をしていきます。

1-1.トップダウン型とは何か?

「トップダウン型」と呼ばれる、組織マネジメントの手法は最もオーソドックスで、今最も普及が進んでいる組織運営の方法です。

トップダウンは「上意下達」という漢字で表現されるように、

トップの意思を実現していくこと

を最重要の価値観とした組織マネジメントの手法です。

トップダウン型組織

一般的なトップダウン型の会社組織では、経営者をトップに据え、その他は

  • リーダー層
  • メンバー層

という階層に分けて、トップの意思をスピーディーに効率的に実行していくことを目指していきます。

トップダウン型組織において、リーダーの役割は計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任を引き受けることで、メンバーの役割はリーダーの指示を忠実に実行することです。

1-2.トップダウン型のメリット

では次にトップダウン型のメリットについて解説をしていきます。

1-2-1.スピーディーにチームを形成できる

1つ目のメリット「スピーディーにチームを形成できる」について。

組織というのは、人がだた漫然と集まるだけでの集団では意味がありません。

組織は、大前提として、そこに所属する人たちが同じ目標や目的を共有し、そのゴールに向かって行動し、協力し合うことで、1人の力では達成できないようなことを達成できるチームになるからこそ意味があるのです。

そして

どのようにして、バラバラな個性や価値観を持つ人たちが同じゴールを共有し、行動し、協力し合うような関係を作っていくのか?

というのが組織マネジメントの根幹です。

この点で言うのであれば、トップダウン型には

リーダーの意思決定にメンバーが従う

というシンプルで絶対的な原則があるので、たとえバラバラの性格や価値観を持ったメンバーが集まったとしても、短期間で、同じ目標・目的を追いかけるチームに変えていくことができます。

1-2-2.トップの意思をスピーディーに形にできる

次に2つ目のメリット「トップの意思をスピーディーに形にできる」について。

トップダウンというのは冒頭にも述べたように

トップの意思を実現していくこと

を最重要の価値観とした組織マネジメントの手法です。

トップダウン型組織では

  • リーダー層:意思決定
  • メンバー層:実行

というように役割が明確に分かれているので、とにかくリーダーがやりたいことを形にするスピードが速いです。

トップダウン型

たとえ、実行するメンバー層がリーダー層に反対していたとしても、トップダウン型組織では

会長 > 社長 > 副社長 > 専務取締役 > 常務取締役 > 取締役 > 執行役員 > 本部長 > 部長 > 次長 > 課長 > 課長代理 > 係長 > 主任 >平社員

というように上下関係が明確で、基本的には上の立場の人間の意思が反映され、実行されるという構造になっているので、とにかく実行までのスピードが早いです。

なので、トップに優秀なリーダーが就任すれば、短期間で大きな業績を上げていくこともできます。

1-3.トップダウン型のデメリット

トップダウン型組織は、上記のようなメリットがあるので、ほとんどの企業で採用されていますが、デメリットもあります。

1-3-1.意欲や働きがいが低くなり、離職率が高まる

まず、1つ目が「意欲や働きがいが低くなり、離職率が高まる」というものです。

トップダウン型組織は、トップに優秀なリーダーが就任すれば、短期間で大きな業績を上げることもできますが、組織運営の思想の根幹が「指示・管理」となっているので、経営者以外のメンバーの働く意欲や働きがいが低くなる傾向にあります。

人は他人から

  • 強制されること
  • 命令されること
  • 指示されること

を実行することにはモチベーションは湧きません。

なので、トップダウン型組織が多くを占める日本で働く社員は

  • 熱意ある社員:6%
  • 熱意が低い社員:73%
  • 熱意が全くない社員:21%

というような調査結果(米ギャラップ社の調査)もあったりします。

そして、優秀な人材ほど、意欲や働きがいに敏感なので、

優秀な人材から会社を去っていき、全体としても離職率が高い

というような状況に陥るようになっていきます。

1-3-2.前例踏襲や効率化が進み、イノベーションが起きにくくなる

また、トップダウン型組織では

リーダーが言うことが絶対

となりがちなので

会社にとってプラスになるかどうか?

というよりも

リーダーが賛同するかどうか?

というような思考回路で仕事を進めるようになっていきます。

というのも、トップダウン型組織では、どれだけ創造性のある新しいアイディアを提案したとしても、リーダーがそれに賛同しなければ、実行に移されないからです。

これが極端に進んでしまうと、組織内では、リーダーの想定以上のアイディアは生まれなくなり、イノベーションが起きにくくなるということです。

リーダーが優秀で、激しい変化にも対応し続けることができれば良いですが、そうではなく、効率性や前例踏襲を考えて、これまで通りのやり方を続けることを優先するリーダーだと、

気づけば時代に取り残されてしまった

というような事態に陥る場合が多いです。

1-3-3.思考停止・指示待ちのメンバーが増え、人が育たない

また

リーダーが言うことが絶対

という傾向が強くなり過ぎてしまうと、メンバーは自分の頭で考えることをしなくなります。

というのも、自分の頭で考えて、行動しても、それが上司の考え方と違っていれば、修正を余儀なくされるからです。

だったら

仕事は上司の言うことだけを忠実に守ろう

という発想になり

指示はしっかり守るけど、自分の頭で考えることはできない

という思考停止の社員が増えていきます。

そして、離職率が高まってしまって、仕事ができる優秀なリーダーから会社を去ってしまうと、指示待ち・思考停止のメンバーばかりが組織内に溢れるようになってしまうので、

社長がいないと会社が回らない

というような状況に陥ることも非常に多いです。

1-3-5.優秀なリーダーへの依存が進み、安定した結果が残せなくなる

トップダウン型組織が上げる成果は良くも悪くもリーダー次第です。

リーダーが適切な計画・意思決定・指示・行動管理を行い、結果を出す責任を引き受けることができて初めて、大きな成果を上げることができます。

これは逆を言うと、そのリーダーがいなくなってしまえば、現場で大きな混乱が生まれてしまうという事です。

カリスマ経営者がトップに就任をし、大きな業績を上げている時はいいですが、そのトップが何らかの事情で変わったことで会社が大きく傾くことがあるのは、まさにトップダウン型組織だからです。

業績悪化

なので、カリスマ経営者が就任したトップダウン型の企業では、多くの場合、後継者問題に頭を悩まし続けています。

ですが、本当に、強固で盤石な組織というのは、誰がトップに就任しても、これまで通りの結果を出し続けることができる組織です。

トップダウン型というマネジメントでは、組織構造上、安定した結果を残し続けることは難しくなります。

1-4.トップダウン型が適している場合

では、この「トップダウン型」という組織マネジメントが適しているのはどのような場合なのか?

1-4-1.組織運営が期間限定で短期間の場合

トップダウン型組織は、トップに優秀なリーダーが就任すれば、目標・目的に最短距離で進めるため、短期間で大きな業績を上げていくことができるというのが最大のメリットです。

なので、創業期や赤字が続く倒産危機にある状況など、会社を短期間で急成長させる必要がある場合は、このトップダウン型という組織マネジメントが適していると言えるでしょう。

1-4-2.トップが優秀なリーダーの場合

また、適切な意思決定を下せるカリスマ性があるリーダーがトップであることも必須条件です。

リーダー

トップダウン型組織は良くも悪くも、そのリーダーの質で結果が決まってしまうので、このリーダーがどういう人物であるかも非常に問われます。

1-4-3.組織が小規模の場合

また、トップダウン型マネジメントが機能するためには「組織の規模が大き過ぎない」という条件も必要でしょう。

その組織が成功するかどうかは

適切な意思決定ができるかどうか

にかかっています。

そして、適切な意思決定をするためには、正確な状況把握が必要です。

ですが、組織に関わる人数が増えれば増えるほど、一人の人間が正確な状況を把握することは不可能になっていきます。

想像すれば分かりますが、5人の組織と500人の組織では、適切な意思決定をするために扱うべき情報量は100倍違ってきます。

なので、よく起こるのが、組織の規模が拡大すればするほど、優秀なはずのトップの意思決定が間違うということです。

カリスマ性のある経営者に依存しているトップダウン型組織ほど、規模が拡大するにつれて、この問題にぶつかります。

1-5.トップダウン型が適していない場合

では次に、トップダウン型が適していない場合について。

1-5-1.組織を長期運営する場合

トップダウン型組織は長期運営するにつれて、メンバーの意欲や働きがいが低くなり、離職率が高まり、生産性が低くなり、イノベーションも起きにくくなるということが起きてしまいます。

なので、短期間の期限付きで何かプロジェクトを実行する際などには向いていますが、会社などを長期的に運営していくとなれば、トップダウン型組織を続けていくことは非常に難しくなっていきます。

多くの企業はトップダウン型組織からスタートして、大きな業績を上げて、規模を拡大したはいいものの

  • 離職率
  • モチベーション
  • 働きがい
  • 生産性
  • 後継者育成

などの組織課題に悩まされ、緩やかに衰退していくというパターンが非常に多いです。

なので、トップダウン型組織を長期運営するには、上記のような組織課題に何かしらの手を打っていく必要に迫られていくということは覚えておいた方が良いでしょう。

1-5-2.変化が激しい時代

また、トップダウン型組織は

  • 正解がない
  • 変化が激しい
  • 価値観が多様化している

というような現代では向いていない場合が多いです。

確固たる正解があって

こうすれば上手くいく

という方程式が機能していれば、それに基づいてトップが号令をかければ、結果が出る場合にはトップダウン型のマネジメントは機能します。

ですが、現代のように

  • 1年前に通用していたものが通用しなくなる
  • Aという地域でヒットした商品がBではヒットしない

というように答えが変わり続ける時代においては、たとえどれだけ優秀なリーダーであっても、正解を出し続けることは不可能です。

トップダウン型の組織は、構造的にそのトップの想定以上の答えを出すことはできません。

優秀なリーダーが出した結論よりも、新入社員が出した結論の方が当たっている

ということも起きうる時代です。

答えが当たっている時はいいですが、外れた時は組織全体としての大きな損失になってしまうので、その点も注意が必要でしょう。

1-6.トップダウン型の企業事例

トップダウン型企業の事例は、ほとんどの日本企業がそうなので、イメージはできるかと思いますが、かつての「ジャパネットたかた」がそうですね。

ジャパネットたかたは、高田明さんというカリスマ経営者が一代で、1500億円企業にまで成長させました。

高田明
画像出典:https://toyokeizai.net/

高田明さんの時代は

  • その日の状況で何を売るのか
  • 何を仕入れるのがベストか

などを自分自身が直感で決めて、MCも全て一人でこなしていました。

高田明さんは通販という分野の見識、思わず買いたくなるようなトークスキルがあった優秀なリーダーだったので、一代で会社を大きくすることができました。

ですが、ジャパネットタカタは、その後、明さんが2015年に退任した後は、長男の高田旭人さんが引き継ぎ、組織のあり方を変革させていきます。

つまり、一人のカリスマによって成り立つ組織ではなく、権限委譲を進めて、多くの社員の個性を活かし、皆が活躍できるような組織へとマネジメントの方式を変更し、会社の業績は2400億円にまでさらに成長させていきました。

1-7.トップダウン型組織の運営を成功させるポイント

トップダウン型組織の運営を成功させるポイントは

  • 優秀なリーダーをトップに就任させること
  • 意欲や働きがいなどの組織課題と向き合うこと

がポイントになってくるでしょう。

トップダウン型組織は良くも悪くも、そのリーダーの質によって全ての結果が決まります。

なので、その分野において、適切な意思決定ができる優秀なリーダーを選ぶことがまず重要になります。

そして、その上で必ず発生してくる

  • 離職率の上昇
  • モチベーションの低下
  • 働きがいの低下
  • 生産性の低下
  • 後継者育成

といった組織課題を放置せずに、向き合うことが大事です。

どれだけ今の時点で業績が高くても、こういった組織課題の問題を放置していくと、少しずつ会社は衰退に向かっていきます。

長期的な繁栄を目指すのであれば

  • 業績
  • 働きがい

が両立する組織を作る必要があります。

そういう意味では、権限委譲を進め、トップの意思決定率を徐々に下げていき、多くの社員の個性が活かせるような組織を作っていく必要があるでしょう。

2.ボトムアップ型とは

では、次に「ボトムアップ型」について解説をしていきたいと思います。

2-1.ボトムアップ型とは何か?

ボトムアップ型は「下位上達」と表現されるように、リーダー層が一方的に意思決定をするのではなく、メンバー層の意見や提案も踏まえながら意思決定をしていくという組織マネジメントのモデルです。

ボトムアップ

組織構造はトップダウン型と同様にピラミッドの階層構造型が多く

  • リーダー層:意思決定・指示・管理
  • メンバー層:計画・提案・実行

という役割に分かれます。

2-2.ボトムアップ型のメリット

ボトムアップ型のメリットについて

2-2-1.メンバーの意欲や働きがいが高まる

トップダウン型とボトムアップ型の最大の違いは

メンバー層の意見や提案を踏まえた上で、リーダー層が意思決定をする

ということです。

トップダウン型では、通常、その現場に関わるすべてのメンバー層の意見や提案を聞き入れるという場合は少なく、リーダーからの一方的な指示が降りてくる場合がほとんどです。

ですが、ボトムアップ型では、メンバー層の意見や提案を踏まえた意思決定がなされることが多くなるので、メンバーの意欲や働きがいは高まる傾向にあります。

というのも、人の意欲の源泉は

私は状況を所有している。コントロールしている。変えることができる

と思えているオーナーシップにあるからです。

トップダウン型組織では

こんな風に変えた方がいいのにな

と現場のメンバーが思っていても、提案する機会がなかったり、リーダーが一方的に意思決定する場合が多いので、このオーナーシップは低くなる傾向にあります。

一方で、ボトムアップ型の組織は、計画や提案の機会が解放され

自分が効果的な提案をすれば、会社の状況を変えることができる

と思えるので、オーナーシップが高い状況を維持することができて、離職率も下がる場合が多いです。

2-2-2.現場の細かな状況を踏まえた適切な意思決定ができる

トップダウン型組織は、規模が大きくなればなるほど、

  • リーダー層:計画・意思決定
  • メンバー層:実行

の距離が離れてしまい、現場の状況を踏まえない意思決定がなされるようになっていきます。

例えば、2022年12月に業界で5本の指に入るほど有名で、上場もしているドラッグストアチェーンで

12月も暖房の使用を控えるように

という暖房禁止のお達しが全店舗に下りました。

ドラッグストア

元々、冷暖房の使用に厳しい会社で、通常は12月1日から使用が解禁されるそうですが、政府から節電要請があったとのことで、この方針を12月も継続したとのことでした。

ですが、凍えるような寒さが続く12月に、暖房が使用できない店舗からお客さんからのクレームが殺到して、暖房の使用を再開したということがありました。

これはまさに、典型的なトップダウン型の現場の状況を正確に踏まえない意思決定をしてしまった事例でしょう。

なぜ、このような意思決定が通ってしまったのかについての原因は様々ありますが、一つ大きいのは、この意思決定をしたリーダー層が12月の寒い店舗内の温度状況を把握していなかったことが挙げられるでしょう。

これも

  • リーダー層:計画・意思決定
  • メンバー層:実行

の距離があることで起きてしまった問題です。

組織の規模が拡大すればするほど、組織の上層部のリーダー層がすべての状況を把握し切ることは不可能です。

一番現場のことをわかっているのは、実行という役割を担っているメンバー層です。

なので、そのメンバー層の意見を踏まえた意思決定ができるのであれば、組織としての意思決定のレベルは格段に上がります。

2-2-3.イノベーションが起きやすくなる

また、ボトムアップ型は、メンバーの意見が積極的に提案されるので、リーダーが想定もしなかった効果的なアイディアが生まれる場合があり、組織全体としてイノベーションが起きやすくなります。

特に今の時代は

今の正解が1年後には通用しなくなる

と言われているほど変化の激しい時代です。

そんな時代には、リーダーが想定もしない角度で発想してくれるメンバーの存在が組織全体にとって非常にプラスになります。

2-3.ボトムアップ型のデメリット

では、次に、ボトムアップ型のデメリットについて。

2-3-1.意思決定に時間がかかる

ボトムアップ型はトップダウン型と比べた時に、意思決定をするまでに、現場のメンバーの意見の把握や調整という実施項目が増えます。

運営の仕方にもよりますが、トップダウン型と比べると、ミーティングの回数や時間が増えるかもしれません。

ミーティング

なので、ボトムアップ型とトップダウン型に比べると、意思決定のスピードが遅くなります。

2-3-2.リーダー層の仕事の負担は増える

また、リーダーは、現場のメンバーの意見の把握や調整という仕事が増えます。

そして、長年トップダウン型を続けていた組織がボトムアップ型を導入していくとなった場合には、まずはメンバーの

  • 意欲
  • 主体性

を回復させるという作業が必要です。

メンバーの意欲や主体性がない状態で、ボトムアップ型を導入しようとしても、積極的な意見の提案も出ないので、そういう意味でもリーダー層の仕事の負担が増えるため、導入する際にはリーダー層全体に覚悟が求められます。

2-4.ボトムアップ型が適している場合

ボトムアップ型は

  • メンバーの個性を活かす
  • 現場の変化に対応した柔軟な意思決定ができる
  • メンバーの意欲や働きがいが高まる

という組織マネジメントのモデルです。

なので

  • 一人のカリスマに依存しない組織を作りたい
  • メンバーの意欲や主体性を高め、離職率を下げたい
  • 組織全体としてイノベーションが起こるようにしたい
  • 組織規模が大きくなり、トップダウン型の意思決定に限界を感じている

と思ったタイミングで少しずつ導入を検討するのが良いでしょう。

ただ、トップダウン型組織からボトムアップ型組織への移行は、組織運営の方針が変わるということなので、ボトムアップ型への移行には、それなりの時間とエネルギーが必要です。

なので、そういった余裕があるタイミングであることも、切り替えの際に注視すべき項目です。

2-5.ボトムアップ型が適していない場合

ボトムアップ型が適していないのは、倒産危機などの組織の存続危機を抱えている時です。

もう数ヶ月で倒産するかもしれない

という差し迫った状況であるならば、会社の方向性やあり方自体を短期間で大きく変革させないといけないので、その場合はトップダウン型の組織マネジメントを取り入れるべきでしょう。

2-6.ボトムアップ型の企業事例

ボトムアップ型の企業事例として参考になるのがシステム開発会社「アクロクエスト」です。

この会社は社員数約80名の組織で

  • 働きがいのある会社ランキングで1位
  • 日本で一番大切にしたい会社大賞の審査員委員会特別賞

なども獲得しています。

アクロクエスト
画像出典:https://gooca.works/

このアクロクエストさんの組織運営の方法で参考になる箇所は様々あるのですが、ボトムアップ型のアプローチの代表例が月に1回実施される「全社員ミーティング」という取り組みです。

これは全社員が参加する最も重要なミーティングとして位置付けられ、議題は経営方針、会社の制度、レクリエーションの企画など何でもありで、すべて社員からの提案で決まります。

何か話し合いたい議題がある社員は、数日前までにミーティング運営者にメールで議題を送付して、話し合うべき課題だと判断された場合に、当日のアジェンダとして、事前に参加者に連絡されます。

提案に採用されないのは

  • わざわざ話し合うようなことではなく、すぐに実行すれば良いだけの提案
  • 全社員で話し合わなくても担当者間の協議で十分解決が図れる提案
  • 何かを実行する提案であるのに、議題提出者がその責任者になっていない提案
  • 提案したタイトルと本人が主張する結論や政策に論理性を欠いている提案

といったものだそうです(『会社を元気にする51の「仕組み」(新免 玲子)』より)。

そして、ミーティング当日は、全社員が会議室に集まり、議題について、職位・社歴に関係なく、自由に意見交換します。

また、ミーティングのルールとしては

  • 時間制限はなく、皆が納得するまで話し合う
  • 時間がないからと多数決を取ることはない

というものがあり、全員が納得した上で、次の具体的なアクションが決まっていきます。

これもメンバー層の意見を取り入れ、意思決定をしていくというボトムアップ型の取り組みの一つです。

2-7.ボトムアップ型組織の運営を成功させるポイント

では、次にボトムアップ型の組織運営を成功させるポイントについて。

2-7-1.提案や意思決定の基準を統一させる

まず、ボトムアップ型の組織マネジメントを機能させる際に重要になってくるのは

どんな意見が採用されやすいのか?

という方向性を事前にメンバーに提示しておくことです。

全員の意見や提案を聞くからといって、全員の意見が採用されるわけではありません。

組織にとって不利益をもたらすような不適切な意見を採用していると、組織は崩壊してしまうからです。

なので、採用の基準を示すことが重要です。

これをやらないと、

なぜ、私の意見は採用されないのか?

という不満を持つメンバーが現れます。

そして、組織における意思決定というのは、

  • この組織は何のために存在しているのか?
  • この組織はどんな未来に向かいたいのか?

というミッションやビジョンに基づいて実施されます。

例えば、オーダースーツ専門店を経営しているとして

このAという高級生地を使うべきかどうか?

という意思決定は、そのオーダースーツ専門店のミッションやビジョンで決まります。

オーダースーツ

例えば、そのオーダースーツ専門店が

どれだけ安く、オーダースーツを提供するのか?

に命を懸けているのであれば、価格が上がってしまうAという高級生地を採用することは不適切かもしれません。

なので、ボトムアップ型に移行するのであれば、このミッションやビジョンの全体共有というのが、必要になってきます。

これをやっておかないと、方向性がバラバラな意見や提案が集まるようになってしまいます。

2-7-2.意欲や自主性を回復させる

ボトムアップ型の組織はリーダーではなく

メンバーがどれだけ意欲高く、主体性を持って、会社に貢献しようとするのか?

という姿勢が非常に重要になってきます。

長らくトップダウン型組織を続けたことによってメンバーが

  • 意欲が低い
  • 指示待ち・思考停止
  • 主体性が低い

という状態が続いているのであれば、意思決定の方式をボトムアップ型に変えたところで、積極的な意見や提案は出ません。

これは『業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説』でも解説をしましたが、社員の意欲や主体性を回復させるには

  • 情報を透明にすること
  • 不必要な力の格差を縮小すること
  • 心理的安全性を高めること
  • 大人を大人として扱うこと

などがまず重要になってきます。

3.トップダウン型とボトムアップ型に続く次世代型組織運営のモデルとは?

これまで見てきたように、トップダウン型には

  • 同じ目標を追いかけるチームを迅速に形成できる
  • 意思決定から行動までのスピードが速い
  • リーダーが優秀であれば、短期的に大きな成果を上げることができる

というメリットがある反面

  • メンバーの意欲や働きがいが低くなり、離職率が高まる
  • 前例踏襲が進み、イノベーションが起きにくくなる
  • 指示待ち・思考停止の主体性のない社員が増える

というデメリットがあります。

一方で、ボトムアップ型は

  • メンバーの意欲や働きがいが高まりやすい
  • 主体性が高まり、イノベーションが起きやすくなる
  • 現場最適の柔軟な意思決定ができる

といったメリットがある反面

  • 意思決定のスピードが遅くなる
  • リーダー層の仕事の負担が増える
  • 機能するまでに時間がかかる

といったデメリットもあります。

どの組織マネジメントモデルが適しているかは

どんな組織を作りたいのか?

といった方向性や現状の課題によって変わってきますが、

  • 業績
  • 働きがい

が飛躍的に高まる組織を作っていきたいのであれば、最後に「セルフマネジメント型」という組織マネジメントのモデルを知っておくと良いでしょう。

セルフマネジメント型とは

リーダーに管理・指示されることなく、メンバーが自ら仕事の仕方を決め、仕事に関する意思決定を行い、最高の結果が手に入る

ことを目指す組織マネジメントのモデルです。

トップダウン型組織とセルフマネジメント型組織

業績と働きがいを飛躍的に高める組織を作るには

どれだけメンバーの意欲を高める組織を作ることができるか?

というポイントが非常に重要になってきます。

では、人の意欲の源泉とは何か?

それは

私は状況を所有している、コントロールしている、変えることができる

と思えているオーナーシップにあります。

メンバーの意欲や働きがいが低い会社に共通しているのは、このオーナーシップが低いことです。

給与のこと、社内制度のこと、働き方のことなど、

本当はこう変わったらいいな

と思っていても、口に出すことすらできない会社。

口に出したところで状況が変わらない会社こそがオーナーシップが低い組織です。

人は

こんな風に変わったらいいな

と思っていても、状況を変えることができないという状態に長期間置かれてしまうと、どんどん意欲を失っていきます。

特にトップダウン型組織では、階層によって与えられている「権限・情報・責任」が違うため、各階層によってオーナーシップに差が出てきます。

 

トップダウン型組織のオーナーシップ

トップダウン型組織で最大のオーナーシップを持っているのは、最大の権限・情報・責任を持っている社長です。

なので、社長は自分の興味・関心に従って、

  • 今年の売上目標は?
  • 給料はどうするか?
  • ビジョンをどう設定するか?
  • 誰をリーダーとして採用するか?
  • どのメンバーと一緒に働くか?
  • どんな社内ルールを設計するか?

などに関して、自由に意思決定をし、行動ができるので、非常に意欲が高い状態を保てます、

ですが、一般社員の方はどうでしょうか?

恐らく、トップダウン型のほとんどの組織で、こういったことに関わることができない場合がほとんどだと思います。

だから、トップダウン型では、メンバーのオーナーシップが構造的に低くなるので、メンバーの意欲や働きがいも低くなってしまうのです。

なので、セルフマネジメント型では

メンバーのオーナーシップを高めていくこと

を目指していきます。

オーナーシップを高めていくためには、メンバーの意思決定可能領域というものを広げていく必要があります。

もちろん、メンバーに意思決定を任せていくからといって、いきなりリーダーと同じ水準の意思決定をしていくことは難しいので、最初は

  •  組織全体に影響の少ない領域
  • リテラシーが必要ない領域

から意思決定を少しずつ任せていきます。

つまり、いきなり経営の全体戦略や給与の決め方などの領域から任せるのではなくて、日報の書き方や社内向けイベントなどの領域から任せていくということですね。

手を挙げる

また、セルフマネジメント型組織では、リーダーとメンバーの役割が変わります。

トップダウン型とボトムアップ型では

  • リーダー:計画・意思決定・指示・行動管理・結果責任
  • メンバー:実行(提案)

というような役割になっていました。

それがセルフマネジメント型では

  • リーダー:メンバーの意思決定と目標達成のサポート
  • メンバー:計画・意思決定・実行・行動管理・結果責任

という風に変わります。

つまり、リーダーはメンバーが適切な計画・意思決定をし、目標を達成するサポートをするコーチのような役割に変わるというわけです。

そうやってリーダーのサポートを受けながら、メンバーの意思決定可能領域を少しずつ広げていくと、メンバーの意欲や主体性が回復するだけでなく、飛躍的な成長を遂げるようになっていきます。

というのも、メンバーは従来のリーダーと同じように、

  • どんな目標を立てるか?
  • その目標をどうやって達成するか?
  • 課題にどう対処するのか?

など主体的に仕事に関わるようになることが求められるからです。

そして、メンバーが様々な失敗や成功を経験する過程で成長をしていくと

いちいちリーダーが指示・管理をしなくても、最高の結果が手に入る自走する組織

になっていきます。

結果として、リーダーの仕事の負担が大幅に減り、トップの意思決定率を大幅に下げることができます。

実際にセムコスタイルというメソッドを使って、トップダウン型組織からセルフマネジメント型組織へ移行した企業は

  • 単月売上過去最高1300万円から2000万円にUPし、平均離職率30%を超える業界で離職率3%を実現(歯科医院)
  • 売上昨年対比150%を達成し、採用コストが1500万円から400万円に(化粧品メーカー)
  • 年間売上目標達成率が80%から150%に大幅アップし、営業の成約率が20%から40%へとアップ(動画制作)
  • 従業員一人当たりの平均売上が過去最高になり、3年以内の新卒離職率が50%から3%にダウン(コンサルティング)
  • 半年間で離職率が17%から0%へとダウンし、経営者の意思決定率を100%から60%に下げながら、1500万円の売上アップ(事業プロデュース)

といったように業績と働きがいが飛躍的に高まり、トップの意思決定率も下げることに成功しています。

また、基本的に意思決定にはトップの承認がいらないのでスピードも迅速です。

しかも、トップダウンの意思決定ではなく、現場をよく知るメンバーの個性や才能を生かした意思決定となるので、創造的イノベーションも起きやすくなります。

日本ではまだこのセルフマネジメント型は一般的ではないですが、もう既に世界12カ国で普及し、実際に数百社で運用され、大きな成果を上げている組織マネジメントのモデルでもあります。

このセルフマネジメント型組織の作り方については「セムコスタイルとは何か?業績と働きがいが飛躍的に高まる組織の作り方を徹底解説」というブログ記事で解説しているので、ぜひ、ご覧ください。

4.トップダウン・ボトムアップのまとめ

今回の記事では「トップダウン型」と「ボトムアップ型」についての基礎知識について様々な角度でお伝えしました。

ぜひ、今回の記事を読んで、自社の組織運営を見直すきっかけにしていただけると幸いです。

またこの記事で紹介した「セルフマネジメント型の組織運営」に関して、もっと深く学んで実践していきたいと思われた方は、私の公式LINEアカウントで配信されている無料の動画講座をまずはご覧ください。

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中江翔吾
中江翔吾
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