ブランディングデザインとは?事例やブランド構築にデザインが欠かせない理由について解説
ブランドコンサルタント・中江 翔吾
「ブランディングデザインって何?」
「ブランディングに効果的なデザインの事例が知りたい!」
「ブランディングに活かせるデザイン制作の進め方を知りたい!」
ブランディングデザインは
- Webサイト
- 写真
- パッケージ
- ロゴ
- バナー
- チラシ
- 店舗空間
など形は様々ですが、ただレイアウトが綺麗なデザインではなく
ブランドを構築する上で効果的なデザイン
のことです。
ブランディングを実施していく上で、デザインの力は無視することができません。
詳細については後述しますが、デザインの質が高ければ高いほど、そのブランドの価値は多くの見込み客に伝わり、商品・サービスの購入に繋がるからです。
私も普段、クライアントのブランディングを実施していく中で、ホームページのリニューアルなどを行いますが、商品・サービスの内容や価格を変えずに、ホームページのデザインを変えるだけで、新規集客数が2倍にアップしたり、売り上げが伸びたりすることはよくあります。
これは本来伝わるべきだった価値がデザインの力によって伝わるようになったことを意味します。
だから、ブランディングをこれから実施したいというのであれば、改めてデザインについて見直していく必要があります。
今回の記事を読み、ブランディングデザインについて理解し、デザインの力を活かせるようになれれば
- 高単価でも選ばれるようになる
- 競合と明確な差別化ができる
- 新規集客に困らなくなる
- 成約率がアップする
- 広告費を削減できる
など、様々なメリットを享受できます。
今回の記事では、そんなブランディングデザインについてお伝えしていきたいと思います。
この記事を読んでいただければ、ブランディングデザインに関する基礎的な知識や具体的な事例だけでなく、具体的にどうブランディングデザインの制作を進めていけばいいのかまでが分かるようになっています。
ぜひ、最後までお読みください!
1.ブランディングデザインとは
まずは「ブランディングデザインとは何か?」について解説していきたいと思います。
1-1.ブランディングとは何か?
「ブランディングデザインとは何か?」を理解するためには「ブランディングとは何か?」を正確に理解しておく必要があります。
ブランディングとは一言でいうと
- 認知度
- 知覚品質
- ブランドの連想
- ブランドロイヤルティ
- 独自技術やノウハウ
というブランド力を高めていく施策のことで、このブランド力が高まっていくと、新規集客や価格競争やリピート率といった経営課題を解消していくことができます。
具体的に一つ一つ解説をしていきます。
1-1-1.認知度について
まず、名前の認知について。
これはそのブランドの存在をどれだけ多くの人が知っているかの度合いのことです。
10人にしか知られていないブランドなのか、8000万人が知っているブランドなのか。
比較するまでもありませんが、ブランドとしてどちらが先行きが明るいのかというと、より多くの人に知られているブランドです。
ブランドの名前が知られているということは、それだけの人に商品・サービスを購入する際の選択肢の一つとして頭の中に入っているということだからです。
名前・存在すら知らないブランドというのはどれだけ商品力があったとしても、そもそも見込み客の購入の選択肢に入りません。
だからこそ、認知度というのは重要であり、ブランディングの施策を実行していく上でも高めていく項目になります。
1-1-2.知覚品質について
知覚品質というのは、商品・そのものの実体としての品質ではなく、見込み客が商品・サービスに対して抱くイメージとしての品質のことです。
まだ、そのブランドの商品・サービスを購入したことがない見込み客は、当然ですが、そのブランドの商品・サービスの価値を体感することはできません。
ですが
これは購入に値する
と思わせることができなければ、新規購入には至りません。
そこで重要になってくるのが
この商品・サービスは買っても良いな
と想像上で思わせることです。
知覚品質が高いとそう思わせることができます。
例えば、この楽農ファームたけしたのいちごは、1箱5000円以上と相場よりも遥かに高い価格ですが、毎月2000箱が完売しています
これもひとえに知覚品質が高く、
この苺は5000円以上の価値があるな
と多くの人が思っているからこそ購入されているのです。
この知覚品質の高さは
- Webサイト
- 写真
- パッケージ
- ロゴ
- バナー
- チラシ
といった宣伝広告やクリエイティブを通じて、形成されます。
商品力は高いはずなのに売れない…
というのはおそらくこの知覚品質が低いからです。
どれだけ一度食べれば、誰もが虜になるような美味しい料理をお店で提供できても、そもそも店のホームページに掲載されている料理の写真がピンボケで、不味そうだったら、誰も足を運ばないというわけです。
ブランディングではこの知覚品質を高めて、伝わっていない価値が伝わるようにしていきます。
1-1-3.ブランドの連想について
続いては「ブランドの連想」について。
これは見込み客に対して
○○はどんなブランドなのか?
というブランドの価値の方向性を明確に認識させるという項目です。
価格競争に巻き込まれていたり、新規集客に苦戦しているのは多くの場合、このブランドの連想の設計が上手くいっておらず
どこにでもあるありふれたブランドで希少価値はない
と思われているからです。
例えば、美容院であれば
プロの美容師が在籍し、確かなカット・カラー技術などを持っている
というのが一般的な美容院に対する印象です。
ですが、「プロの美容師が在籍し、確かなカット・カラー技術などを持っている」はどの美容院でも持っている当たり前の価値です。
だから、この価値の方向性では差別化はできないのです。
美容院で高単価でも安定的に集客できるようになろうと思えば、この「普通の美容院」というブランド連想から脱出する必要があります。
例えば、
- 1000円でカットだけを行い10分で全ての施術が終わる美容院
- メイドのコスプレをした女性スタッフが髪を切ってくれる美容院
- 髪や頭皮に有害な化学薬品を一切使わないオーガニックな美容院
- モデルや芸能人のカットを担当するカリスマ美容師しか在籍していない美容院
- 30代以上の男性をカッコいい紳士としてトータルプロデュースする美容院
というような方向性ですね。
こういうような価値の方向性を提示している美容院はまだまだ少なく、これを提示できるだけで
どこにでもあるありふれた美容院
という印象から脱却することができます。
この価値の方向性こそがブランドコンセプトです。
市場に求められていて、かつまだどこもやっていないような希少価値があるブランドコンセプトを提示することができれば、商品を変えなくとも選ばれるようになっていきます。
このブランドコンセプトもブランディングを通じて構築していきます。
ブランドコンセプトについては「価値が伝わる魅力的なブランドコンセプトとは?作り方と事例も徹底解説」の記事でも詳しく解説しています。
1-1-4.ブランドロイヤルティについて
ブランドロイヤルティとは既存顧客の忠誠度のことで、これが高ければ高いほど
- 口コミ
- リピート
に繋がりやすくなります。
結局、どれだけ新規顧客を獲得することに成功していても、一度商品・サービスを購入した既存顧客がリピートも口コミもしないとなってしまうと、常に新規顧客の獲得に膨大なコストかけ続けなくてはいけなくなります。
実際にマーケティングの世界では「1:5の法則」があり
新規顧客の獲得は既存顧客の5倍のコストがかかる
とも言われています。
ブランディングではこのブランドロイヤルティを高める施策も行なっていきます。
1-1-5.独自技術やノウハウ
そして、最後が独自技術やノウハウです。
これも当然ですが、自社だけしか所有していない独自技術やノウハウを持っていると、それだけで商品価値は高まり、市場で唯一無二のポジションを取ることができます。
例えば、これで業績を6倍に伸ばしたのが食品用冷凍装置を製造・販売する「テクニカン」です。
画像出典:https://www.technican.co.jp/
テクニカンは「液体凍結」という独自技術を用いた食品用冷凍装置の「凍眠」という商品を持っています。
これまで食品を冷凍する際に用いられたのは冷風を当てて凍らせるという「空気凍結」という技術でした。
ですが、この空気凍結は食品を凍らせるのに時間がかかるため、食品に含まれる水分が膨張し、凍ると細胞膜を突き破ってしまうため、解凍時に旨みや栄養素が漏れてしまって、
調理して、冷凍した食品は解凍して食べると味が落ちる
という問題がありました。
画像出典:https://www.technican.co.jp/
この「水分が膨張し、細胞膜を突き破る」という問題を解決したのが「液体凍結」という技術でした。
液体凍結というのは文字通り、液体で凍らせていく技術で、これを使えば水分が細胞膜の中で膨張する前に凍らせることができるので、細胞膜が破れて、旨みや栄養素が失われるという問題がほとんど起きないのです。
画像出典:https://www.technican.co.jp/
調理してすぐに食べる料理と一度冷凍して解凍して食べる料理の味の差がほとんどない
と一流の料理人が認めるほどすごい技術です。
テクニカンはこういった技術を特許で守り、市場では自社しか提供できない価値を提供できているからこそ、高単価でも選ばれるブランドとなっています。
ブランディングを実行する際には、この独自技術やノウハウを生み出せないかというところも掘り下げていきます。
1-2.ブランディングデザインとは何か
ブランディングは今紹介した
- 認知度
- 知覚品質
- ブランドの連想
- ブランドロイヤルティ
- 独自技術やノウハウ
というブランド力を高めていく施策のことです。
この5つが高まっていけば
- 高単価でも選ばれる
- 競合が増えても選ばれる
- 比較検討されずに選ばれる
- 集客に困らなくなる
- リピートし続けるファンが増える
ようになっていきます。
今回のメインテーマである「ブランディングデザイン」とは、ブランディングという施策を通じて用いられる「デザイン」のことです。
では、デザインは、このブランディングとどのような関わりがあるのか?
デザインはブランド力でいうところの
- 知覚品質
- ブランドの連想
という要素に深く関わっており
ブランドの価値を目に見える形で瞬時に伝える
という役割を持っています。
商品力は競合他社よりも高いはずなのに売れない
というような悩みを持つ企業は多い訳ですが、この原因の大半というのは「商品の本当の価値が伝わっていない」ことにあります。
その「商品の本当の価値を伝わっていない」という問題を解決するのに最適なのが「デザイン」なのです。
例えば、デザインがきっかけで圧倒的なブランドを築いたのが「今治タオル」です。
画像出典:https://imabari-towel.jp/
今治タオルは、愛媛県の今治市のタオルブランドです。
今治は、温暖な気候と豊かな水源に恵まれ、タオル作りに適した軟水があるため、この120年もの間に、繊維関連の工場が200もできて、国内屈指のタオルの名産地として知られる街です。
なので、タオルとしての商品力は高かったのですが、1990年以降に外国産の安いタオルが国内市場に出回ると共に衰退していきます。
というのも、安い外国産のタオルであっても「水分が拭き取れて、洗濯して、何度でも使える」というタオルとしての最低限の機能は備わっていたからです。
そこで外国産に比べると価格が高い国産のタオルは
外国産のタオルと何が違うのか?
というブランドコンセプトに関する問いを消費者から突きつけられ、それに明確に答えることができないほとんどのタオルブランドが衰退していったのです。
外国産のタオルと比べて国産のタオルにはさまざまな価値がありますが、今までは競争が激しくなく、ブランドコンセプトを提示しなくても売れていたため、即座にその価値を言語化し、表現することができなかったというわけです。
実際に今治のタオルは、1991年に約5万トンの生産量が、2001年には約2万トンにまで落ちました。
そんな右肩下がりで業績が悪化する中で、今治タオルが最後の望みとしてブランディングを託したのが、日本を代表するアートディレクターの佐藤可士和さんでした。
画像出典:https://www.sbbit.jp/
佐藤さんは、安価な外国産のタオルが市場に溢れている現状の中でブランドを構築するのは至難の技だと考え、最初は断ろうとしていました。
ですが、実際に今治タオルを使ってみて、その吸水性と使い心地の違いに驚いたそうです。
そして、この価値を世の中に届けるために
- ロゴ
- パッケージ
- ウェブサイト
- 動画
- 店舗空間
などのデザインを通じて、今治タオルの品質の高さを国内外に伝えていく様々な仕掛けをしていきます。
画像・動画出典:http://imabari-towel.jp/
結果として、今やバスタオルが100均で売られているこの時代に、今治タオルのバスタオルは1枚5400円以上の価格をつけても飛ぶように売れ、タオルを特別な贈り物として送るような文化も作り出すことに成功しました。
業績も右肩上がりに伸び続け、国内を代表するタオルブランドとなり、今治のタオルの生産量は50%増え、劇的な復活を遂げました。
今治タオルの価値の方向性を明確にし、それが伝わるようにデザインを整えていくだけで、ここまで大きく結果は変わるのです。
ブランドの価値は
- 視覚表現:デザイン
- 言語表現:コピーライティング
を通じて伝えることができます。
伝達スピードで言うと、視覚表現(デザイン)が先に伝わります。
例えば、料理の美味しさは、文章でも伝えることができますが、最初に印象に入ってくるのは
- 写真
- 動画
視覚的表現です。
どれだけ文章でうまくその料理の価値を表現できていても、料理の写真がピンボケしていて、美味しくなさそうであれば、誰もそのお店に足を運ぼうとは思いません。
まずは視覚的にその価値を瞬時に判断し、その後に、文章をじっくり読み、理性的に価値を理解するという構造になっています。
だからこそ、デザインというのは重要なのです。
ブランディングデザインとは、そういったブランドの価値を伝えるためのデザインの総称です。
具体的には
- Webサイト
- ロゴ
- チラシ
- パンフレット
- 名刺
- ポストカード
- パッケージ
- プロダクト
- 空間
- 映像
などがあります。
2.ブランディングデザインの事例
では、続いてはブランディングデザインの事例についてご紹介していきたいと思います。
2-1.SOUSOUのブランディングデザイン事例
まず、最初に紹介するブランディングデザインの事例が「SOUSOU」です。
SOUSOUは、アパレルブランドで、オリジナルテキスタイルを使用した、和服や地下足袋や小物や家具等を製作、販売しています。
画像出典:http://www.sousou.co.jp/
画像出典:https://shop-pro.jp/
画像出典:https://shop-pro.jp/
SOUSOUのブランドコンセプトは
新しい日本文化の創造
です。
明治維新以降、日本にはありとあらゆる西洋文化が入ってきました。
それによって、日本のライフスタイルは便利に、大きく変化しました。
ですが、そのライフスタイルの変化とともに、日本の伝統文化が失われていっています。
地下足袋は靴に取って代わられ、和服は洋服に取って代わられました。
なぜ、取って代わられたのかというと、その時代・ライフスタイルの変化とともに、和装文化が進化しなかったからです。
そして、その結果として、それに関わる日本の伝統的な産業も廃れていってしまいました。
SOUSOUを立ち上げた、若林剛之さんはこの和装文化の「空白の100年」を埋めるべく、日本の伝統的な和装文化を現代に合うような形で、復活させたいと本気で考えています。
画像出典:https://www.shakaika.jp/
だから、SOUSOUが目指すブランディングデザインは
日本の伝統の軸線上にあるモダンデザイン
です。
このテキスタイルデザインは、古くからの日本を感じさせてくれつつも、全くこれまでにない新しいデザインに仕上がっています。
店舗もウェブサイトも商品デザインもパッケージも全て、ブランドコンセプト「新しい日本文化の創造」に統一された、素晴らしいブランディングデザインです。
2-2.OKULABのブランディングデザイン事例
続いては、全国で「Baluko Laundry Place」というコインランドリーを146店舗を展開する株式会社OKULABについて。
日本では、高度経済成長以降、自宅用の洗濯機が普及するとともに、コインランドリーの文化は廃れていきました。
そんな市場の中で、OKULABはこれまでのコインランドリーとは全く異なるブランドコンセプトと店舗モデルを提示し、創業5年で21億円の売上を上げるなど、業績を右肩上がりで伸ばしています。
OKULABには
家で洗濯するのが当たり前という文化を変えたい
という思いがあります。
OKULABの創業者の永松 修平さんは、元々は国内初の噴流式の洗濯機を開発した三洋電機のエンジニアでした。
画像出典:https://ikeuchinahito.com/
三洋電機は高度経済成長の波に乗り、業務用洗濯機の国内トップシェアを獲得しましたが、2000年代から経営は悪化し、2011年にパナソニックに洗濯機部門は買収されました。
洗濯機部門の社員はリストラ対象となり、他社への移籍が決まりました。
業務用洗濯機の開発部門に在籍し、リーダーだった永松さんには
トップの地位に安住し、市場を拡大することを怠った
という強い後悔がありました。
そこで移籍した先の会社では、
なぜ、業務用の洗濯機は売れなくなってしまったのか?
という根本を見つめ直すために、全国のコインランドリーを見て回ります。
すると、コインランドリーのほとんどの店が、掃除も行き届いておらず、暗く、壊れた洗濯機も放置されていて、あまりにも使われていない現場を数多く目の当たりにします。
コインランドリーそのものの在り方を変えないと、お客さんは来ない
と確信した永松さんはOKULABを創業します。
OKULABが展開する「Baluko Laundry Place」は、これまでの寂れたコインランドリーとは全く違います。
それは店舗デザインにもよく現れています。
画像出典:https://baluko.jp/
コインランドリー内の洗濯機は全て特注品
- 洗剤や柔軟剤は自動投入なので持ち込み不要
- 石鹸洗剤とリンス剤を選べるように
- スマホで洗濯状況がわかる
- 最大16kgまで洗濯・乾燥ができる(自宅用の3倍)
など、独自にカスタマイズされています。
1週間分の洗濯を約1400円でできてしまうので、電気代の観点から見ても、自宅で洗濯するより「Baluko Laundry Place」で洗濯した方がお得だということもあって、多くのお客さんが利用しています。
また、コインランドリー内には
- カフェ
- クリーニング
なども併設されている店舗もあり、洗濯を待っている間におしゃれな空間の中で、コーヒーを楽しみながら待つことができたり、洗濯機では洗濯できない洗濯物をクリーニングに出すこともできます。
その他、
- 洗濯代行
- 集荷配送
のサービスなどもあります。
洗濯代行を利用すれば、店頭のスタッフが代わりに洗濯してくれ、畳んでくれますし、そもそも店舗に足を運ぶ時間すらないという方には集荷配送サービスもやっており、家にまで洗濯物を回収しに来てくれ、畳んだ状態で配送もしてくれます。
こういった機能的な利便性と、誰が見ても
これまでのコインランドリーとは違う
ということを認識させるおしゃれで居心地の良い空間デザインによってブランディングが成功しました。
2-3.平安伸銅工業のブランディングデザイン事例
続いては「平安伸銅工業」のブランディングデザイン事例について紹介していきたいと思います。
平安伸銅工業は「突っ張り棒」を発明した企業です。
画像出典:https://www.heianshindo.co.jp/
日本では1970年代以降、都市部の人口集中が始まり、手狭な住居空間をいかに快適なものにするのかが、家庭内の大きな関心ごとでした。
そんな時流の中で、平安伸銅工業は、ネジやクギを使わずに収納空間を増やすことができるというメリットを持つ「突っ張り棒」を開発したので、全国のホームセンターを中心に販売され、大ヒットしました。
ですが、「突っ張り棒は売れる」とわかると、他の企業もこの市場に参入し、「突っ張り棒」の類似商品が世の中に溢れるようになっていきます。
かつてはユニークであった
ネジやクギを使わずに収納空間を増やすことができる
という機能的価値はもはや当たり前のものとなり、平安伸銅工業の業績は最盛期の1/3まで減少しました。
その後、平安伸銅工業はリブランディングに成功し、売上を倍増させることになるわけですが、その際にもデザインが大きな役割を果たします。
平安伸銅工業を再興するきっかけとなったのは「DRAW A LINE」というこれまでの概念を覆すような突っ張り棒でした。
画像出典:https://www.heianshindo.co.jp/
平安伸銅工業はメインの商品・サービスは時代とともに移り変わりながらも、一貫してやってきたことは
アイデアと技術で暮らしを豊かにすること
です。
突っ張り棒を開発した当時と現代とでは大きく社会状況は変わっています。
日本国内においては、物質的な豊かさが普及していき、その結果として、各個人は精神的な豊かさを重視するようになりました。
では精神的な豊かさが求められる時代において、豊かな暮らしとは何か?
そう問いかけた時にたどり着いたのが
私らしい暮らし
という答えでした。
画一的な「便利さ」ではなく、一人一人の自分らしさが体現された住居空間になるような突っ張り棒を作りたい。
そんな思いのもとに生まれたのが「DRAW A LINE」です。
「DRAW A LINE」は、クリエイティブユニット「TENT」とのコラボレーションブランドです。
これまでは単なる収納便利グッズとして扱われがちだった突っ張り棒を
暮らしを豊かにする「一本の線」
として再定義し、そこからはじまる新しいライフスタイルを提案する商品に仕上げました。
この突っ張り棒は、見ていただければわかるのですが、従来の「収納便利グッズ」というイメージを大きく転換させ、どちらかというと
お洒落なインテリア
のような雰囲気があります。
もちろん、ただお洒落なだけではなく、突っ張り棒の機能を存分に搭載しています。
ベースアイテムに合わせるパーツは20種類あり、パーツを自由にカスタマイズして、デスクや照明、クロークなど自分らしい暮らしに寄り添うインテリアをつくることができます。
画像出典:https://www.dinos.co.jp/
壁に突っ張るだけでなく、床にも据え置きができ、立体的な空間収納も実現できます。
収納の仕方は、自分次第なので、まさに「私らしい暮らし」を実現できる、間違いなく、新たな突っ張り棒でしょう。
何よりもデザインがとても優れているので、一瞬でブランドイメージは刷新され、新たな突っ張り棒の価値を理解させることに成功し、平安伸銅工業は再興しました。
3.ブランディングデザインの制作の流れ
では、最後にブランディングデザインの制作の流れについて解説していきたいと思います。
3-1.ブランドコンセプトの作成
ブランディングデザインは
- 知覚品質
- ブランドイメージ
に非常に大きな影響を与え、この出来・不出来が、商品・サービスの「成約率」に直結します。
実際に、商品・サービスの中身を変えずに、ホームページをリニューアルするだけで、売上が劇的に変わることはよくあることです。
では、一体、どのようなブランディングデザインを目指すべきなのか?
最も重要なのは、ブランドコンセプトを体現したデザインを制作していくことです。
ブランドコンセプトとは、そのブランドの価値の方向性を言語化したものになります。
例えば、一口に「美容院」といっても
- 1000円でカットだけを行い10分で全ての施術が終わる美容院
- メイドのコスプレをした女性スタッフが髪を切ってくれる美容院
- 髪や頭皮に有害な化学薬品を一切使わないオーガニックな美容院
- モデルや芸能人のカットを担当するカリスマ美容師しか在籍していない美容院
- 30代以上の男性をカッコいい紳士としてトータルプロデュースする美容院
など様々な価値の方向性を提示することができます。
優れたブランディングデザインは、市場におけるブランドの価値の方向性を視覚的に表現し、瞬時に見込み客にその価値を理解させる役割を持っています。
先ほどブランディングデザインの事例として紹介した「Baluko Laundry Place」の店舗空間もそうです。
「Baluko Laundry Place」が目指すのは
毎日の洗濯が楽しくなる、居心地の良い空間
です。
「Baluko Laundry Place」が従来のコインラインドリーと違うのは言葉を尽くさなくても、見込み客がその店舗空間を認識するだけでその価値は伝わります。
画像出典:https://baluko.jp/
ブランディングデザインはただただ美しければ何でも良いという訳ではなくて、
どんなブランドなのか?
というブランドコンセプトが伝われなければ、ブランドの価値が伝わらないことになるので、それは避けなくてはなりません。
ブランディングデザインの形は
- Webサイト
- ロゴ
- チラシ
- パンフレット
- 名刺
- ポストカード
- パッケージ
- プロダクト
- 空間
- 映像
のようなものに落とし込まれるわけなので、こういったものを制作するデザイナーや制作業社にデザインの制作を依頼することになります。
その際にブランディングデザインの完成度を高めるためには、デザイナーや制作業社に、ブランドコンセプトを整理して、明確に伝える必要があります。
ブランドコンセプトの作成方法については「価値が伝わる魅力的なブランドコンセプトとは?作り方と事例も徹底解説」という記事で詳しく解説しているので、興味がある方は、こちらも併せてご覧ください。
3-2.タッチポイントの整理
ブランドコンセプトが完成したら次に、タッチポイントを整理していきます。
タッチポイントとは、見込み客とブランドの接点のことで、見込み客がブランドの価値を認識する場所を意味します。
具体的にどこがタッチポイントとなるのかはブランドによって変わりますが、
- Webサイト
- ロゴ
- チラシ
- パンフレット
- 名刺
- ポストカード
- パッケージ
- プロダクト
- 空間
- 映像
など様々なポイントを通じて、見込み客はブランドの価値を認識していきます。
このタッチポイントをブランドコンセプトに基づき、デザイン的に整えていくことで、ブランドの価値がより伝わりやすくなっていきます。
理想は全てのタッチポイントにおいて、ブランディングデザインを実施していくことですが、全てのデザイン制作を依頼するとなると、費用は莫大にかかります。
なので、予算が限られている場合は、
成約に直接的に結びつくか?
という観点から、タッチポイントの優先順位を整理して、優先順位の高いものからデザインを依頼していくという流れになります。
例えば、法人向けの商品・サービスとして持っていて、基本的にはホームページから問い合わせが入り、そこから契約が決まっていくという流れなのであれば、優先的に改善していくのは「ホームページ」になります。
他にも、飲食店で、ポータルサイトが集客において、中心的な役割を果たしているのであれば、まず変えていくべきなのは、ポータルサイトに掲載していく写真から整えた方が良い場合もあると思います。
これは業種業界、扱っている商品・サービスによって変わってくるので、まずはここを整理していきましょう。
3-3.ブランディングデザインの制作依頼
そして、最後にブランディングデザインはデザイナーや制作業社に依頼することになります。
その際の依頼先の選定方法のポイントですが、まずは過去の制作実績を必ずチェックして
- なぜ、こういう方向性のデザインをしたのか?
- このデザインに変えてからどういう変化があったのか?
といったことなどを直接聞くようにしましょう。
この問いかけに対して、相手が答えに詰まったりする場合や論理が破綻している場合は、ブランドコンセプトに基づいてデザインを作成していないと思われるので、そういった業者は避ける必要があります。
また、デザインを個人ではなく、企業に依頼する場合は
依頼する場合には、誰が担当してくれるのか?
も必ず確認するようにしましょう。
これはかなり良くあるパターンなのですが、話を直接聞いてみて、過去の制作実績も素晴らしかったので、依頼したけど、経験が浅いデザイナーが割り当てられてしまって、微妙なデザインしか上がってこないということです。
なので
大手企業で、実績もあるから全て任せて大丈夫
とは、あまり思わない方が良いでしょう。
大体、そういう企業は、予算を多くかけてくれる企業に対して、優先的に社内の凄腕デザイナーを担当させるようにしていることが多いです。
なので、依頼する前には
- どんなデザイナーを割り当てるのか?
- 最終的なデザインのクオリティが低ければどう対処してくれるのか?
なども併せて確認するようにしましょう。
4.ブランディングデザインを見直したいと思っている全ての方へ
今回の記事では、ブランディングデザインの基礎知識や事例、ブランドエクイティを高める方法を様々な角度でお伝えしました。
ぜひ、今回の記事を読んで、自社のデザインを見直すきっかけにしていただけると幸いです。
また、こういったブランディングに関して、もっと深く学んで実践していきたいと思われた方は、私の公式LINEアカウントで配信されている無料の動画講座をご覧ください。
この動画講座では、
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